モンスターハンター 勇気の証明~五章 27
- カテゴリ:自作小説
- 2011/10/28 13:01:27
【ナイトの仕事】
――無謀な作戦だったと思うかね?
人気(ひとけ)のないロックラック市街を歩きながら、ロジャーはギルド本部長のひょうひょうとした声を思い出していた。ナイトの制服でもあるギルドバードではなく、私服姿だ。
快活な印象をグロム達に与えていた彼だが、普段はおとなしい青年である。そう装っている。
峯山龍祭りの期間中は、同時期に通過する砂嵐の被害にも備えて、ギルドから住民全員に避難勧告がだされる。
戒厳令ほどの厳密さはないので、モンスターが接近するなどの緊急をのぞいては、避難は自由意志だ。
しかし砂嵐の被害は、誰もが避けたいものである。好き好んで砂まみれになり、飛んできた器物に当たりたくはないし、砂によって遮断された光のない世界は、味わったものが皆、口をそろえる恐怖である。
それでもこの不毛の地に住み続けるのは人間の性か――。
自主避難が済んで、今はシェルターのどこかで嵐が過ぎるのを待っているだろう住民たちを思い、ロジャーは覆面状に巻いていた布を口元からずらして、黄色い空を見上げた。
ジエン先発隊が、無事に撃退を果たして戻って来た時、街は大いにわいた。
その巨躯を得られないまでも、戦闘中にハンター達がジエンの身体から剥ぎ取って来た鱗や甲殻の数々は、街を潤すには事足りた。といっても、例年より数が少ないから、値は釣り上がるだろうが。
これで祭りは終わったかに見えたが、ギルドは引き続き警戒を呼び掛け、屋外での活動を自粛するよう要請した。
はぐれジエンがいないとも限らないし、今年は例年より風が強い。すでに、砂漠から大量の砂が風に乗って街に吹きこんでいる。毎日砂を掃き出すのに疲れた者達は、嵐が過ぎ去るまでだんまりを決め込んだようだ。長い休日としゃれこむ者もいる。
彼らには、五年前の恐怖が身に染みついている。
ロジャーにはそれがよくわかっていた。だからこそ、住民達は、商売ができなくても逆らわず、ギルドの意に従っているのだ。
モンスターと自然の脅威は、同意義である。戦う力のある者、無い者に関わらず、運命みたいに命をもぎ取って行く。
その運命に抗うことこそ、狩りの意味なのだろうと、ロジャーは思っている。
宿屋と酒場が集中する歓楽街を、ロジャーは歩いていた。砂のせいで空気全体が黄色っぽく、ゴーグルをしていないと目を開けていられない。
こんな中を歩く物好きはいないが、一軒だけ戸を開けている店があった。
ははあ、ここはと気づいたが、素知らぬふりをしてロジャーは店内を覗いた。ショートボブにバンギススタイルの美女が、せっせと箒で床の砂をかき集めている。
「ご精が出ますね」
「あらぁ、いらっしゃい。珍しいわねぇ、こんな時期に。簡単な食事なら出せるわよ、座って?」
店の女将――アリスは、そう言って人当たりのいい笑顔を向けた。ロジャーは愛想笑いをして、
「いえ、こちらこそ珍しいと思って覗かせてもらっただけです。お客さん、こないんじゃないですか? こう砂がひどいと」
うん、とアリスは無邪気に微笑んだ。
「でもぉ、ここに帰って来たい子もいるしねぇ。いつでも開けてないと寂しいじゃない」
「なるほど」
ロジャーはにっこり微笑んだ。凶暴竜の素材で作られたおぞましい剣、カラミティペインを猛然と振るって数々のクエストを制した女ハンター・アリスの名前は、ロックラックでは有名だ。調書の通りの女性――ロジャーにはそれで十分だった。
愛想良くいとまを告げ、ロジャーは再び、ある場所へ向かって歩き出した。
――たとえ無謀でも、やってもらわなきゃいけない時がある。ハンターとは、そのためにいるのではないかね。
無情にも思える言葉だったが、本部長の声には、確固とした使命感と苦渋がにじみ出ていた。
大丈夫、とロジャーは、胸の内でかの老人に語りかける。
皆、それをわかって狩りに挑んでいるのですから。
「――ようし!もういいぞ、船に戻れ!」
ジエンの背に陣取っていた教官が、尾びれ付近のひび割れを攻撃していたミーラルに手を振って合図する。
ジエンの巨体が縦に小刻みに振動し始めたのだ。これは、ジエンが敵から離れようとする前振りである。
教官に続いて、ミーラルがジエンの牙から船に移ったのを見届けてから、ランマルは舵を切って船体をやや離した。同時に、ゆっくりとジエンが砂へ身を沈めていく。去りざまの咆哮が長く尾を引いた。
「よし、奴の背びれは二か所とも破壊した。牙は一本残ってしまったが、相当ダメージを与えたようだし、次の攻撃で折れるだろう。まずまずだな」
「じゃあ、あと一息っすか?」
「いや、まだだ」
ほっとしかけたグロムに、教官が厳しい面持ちでかぶりを振る。
「ジエンはまだ攻撃をやめる気はない。じきに姿を現すだろう。そこで、――これだ!」
じゃじゃーん! と教官は口で言って、船首を指し示した。
でもこのほうが、ロジャーの服装がわかりやすくなったので、ご指摘してくださったトゥさんに感謝を申し上げます。ありがとうございました(^v^)
カフィーヤというのですか。バンダナって言葉が出なくて、うっかりスカーフって書いてしまいましたが、やっぱまずかったですよねえ^^;
ご指摘ありがとうございます!のちほど訂正いたしますね。
ところでカフィーヤって民族衣装なのですか?そっちも調べてみます。
砂漠の民族がすんでいる街ではなく、ラスベガスみたいに、ある目的のためにだけ作られた街のようなので、民族衣装的なものは考えてませんでした。動画をみても、そういう風土でもなさそうなので。
でも、ロックラック装備もあるので、ある程度はその土地独特の服装があります。ロジャーの服装もそういう感じなのかな、と。
服装もあれこれ考えるのも楽しいですね^^
残すところあと4回程度を考えております。ややモチベーションが下がってしまいましたが、今月中には終わりたいなと。楽しみにしてくださってて光栄です。最後までがんばります^^
ジエンって耐久力もかなりの脅威になりますよね。
制限時間=ロックラックの街を守るための時間と思っているんですけれど、それに加えて船も壊されないようにしないといけない。
はじめてジエンと戦ったとき、決戦ステージでは冷や汗をかきました。
「まだやるの、もう時間がないのにー!」と、必死であのふとーい腕にとりついていた記憶があります。
牙をねらいながらじりじりしていたユッカの気持ち、痛いほどよくわかるなぁ。
次回はいよいよあの装置を使うんですね!
アドホックで皆さんとご一緒したときのことを思い出します。やっぱり冷や汗ものでした、別の意味で。
苦手だっていっているのに担当させるんだもの。あはっww
でも、役割分担やイカヅチさんのいう「ドタバタ」があるからおもしろいんですよね♪
次回更新も楽しみにしています。
ところでロジャーがかぶるもの、帽子やフード、カフィーヤではまずいでしょうか。
スカーフは女性が身につけるイメージが強くて……一瞬、女装した彼を想像してしまいました。
ロジャーさん蒼雪さんごめんなさい!
アリスさん、怪我もなく帰ってきたようでよかった。さすがです。
そうですね、とにかく時間との戦いですから。
それと、船の耐久にも気を配らないとならないし。慣れてきても、ソロでは毎回緊張します。
バリスタや槍、銅鑼の押しつけ…ありますね~^^;
見せ場でもあるから、自分がやれるならやりたい気持ちもある半面、外したら責任重大ですしね。
あと、爆弾の起爆とかね。
あらかじめ、誰がどうする、と決めておけば問題ないんですが…。
気心知れた仲ならともかく、初対面だとそのあたりが難しいですね。
だからジエン狩りは嫌がられるんでしょうかね。貼ると去る、みたいな話を見かけたので。
ジェンを相手にした時は『一斬りでも多く』『一発でも多く』と必死になりますよね。
前回からのお話でヒシヒシと伝わってきます。
同時に『自分の役割を果たさねば』と言う使命感。
ユッカも牙を折ってホッとしたことでしょう。
余談ですが、ネット狩りをやると結構バリスタ拘束弾、激竜槍の押し付けになります。
知らない同士だと特に。
遠慮もあるし、外したらと思うと……。
バツが悪いもんなぁ。
あああ、はい、やっちゃいましたね、またww
即直します。いつもご指摘感謝です~^^;