モンスターハンター 勇気の証明~五章 32
- カテゴリ:自作小説
- 2011/10/30 23:08:28
【決着】
「ランマルはん、ウチらこのまま手ぇこまぬいててええんやろか?」
「ギルドの規則では、船員アイルーは狩りに手を出すべからず、と言われているけどニャ……」
訴えるように見つめるコハルに、ランマルは不敵に笑いかけた。
「そんなの、緊急事態には意味ないニャ。死んだら終わりだもんニャ」
「ランマルはん、それじゃあ……」
不安げだったコハルの両目に、みるみる喜びの光が宿る。ランマルは、勇ましく右手を振った。
「バリスタと大砲で援護だニャ! オトモの意地見せてやるんだニャー!」
「はいニャー! おらあああ、ナニワのド根性見せたるニャ~!」
普段は世話女房的なコハルは、主人思いと思われがちだが、実は勇敢な性格である。戦闘になると豹変し、勇猛果敢にブーメランと近接武器で責め立てるのだ。
「お前、そんな性格だったニャか……」
怒声をあげて大砲を撃ったコハルに、さしものランマルも目が点になった。
ジエンの歩みは止まることを知らず、徐々に船との距離を縮めていく。グロムは懸命に走ったが、敵の一歩はこちらの二十メートルだ。
「くそっ、間に合わね……!」
ついに、ジエンは左舷の正面に来た。笛の効果が切れて、同時に息が上がったグロムが、絶望的な声をあげる。
勝ち誇ったように、ジエンが腹を見せて大きくのけぞった。体重こそがジエンの武器だ。全身を、行く手を阻む船へゆだねようとした瞬間。
どおんという重い音がして、ジエンの顔に立て続けに爆煙を咲かせた。ニャーという雄叫びが聞こえ、グロムが目を輝かせる。
「コハルか!」
「くらえニャー!」
いつの間にかランマルがバリスタに座っていた。ばしゅっと空気が抜けるような音がしたかと思うと、長いワイヤーのついた銛(もり)が、ジエンの顎に突き刺さる。
続けざまにランマルが撃ったバリスタ拘束弾が次々とジエンの腹や肩に飛び、その歩みを止めた。ジエンは苦しげにもがくが、食いこんだ銛は、そうたやすくは外れない。
「今だニャー!」
ランマルが叫んだ。グロムはためらうことなく船首へ駆け上がる。そして、一挙動で床に転がっていたハンマーをつかむと、全身で振り下ろした。
「おおお!」
ガツン、とハンマーが鉄板を叩いた。足の下で蒸気機関が目を覚ます。と同時に、拘束を振り切ったジエンが割れんばかりの咆哮をあげる。
頭蓋も破壊しそうな音響の中で、カラカラと槍が伸びる音はひどくゆっくりと聞こえた。
だが、グロム達は確信した。
当たる。絶対に当たる――。
そして、その刹那。勢いよく飛び出した撃龍槍が、ジエンの腹部を深々と貫いたのである。
長い長い咆哮を聴いた気がして、ふとロジャーは面(おもて)を上げた。
ロックラックギルドの、本部長室。彼は本部長の脇に控えて、先ほど帰還した古龍観測隊から、グロム達を乗せた船がジエンに撃沈された報告を聞いていた。
静謐な面差しが刻んだ笑みに、若い観測員は虚を突かれて、書類を読み上げるのを中断した。不思議そうな表情をする青年に、ロジャーはやんわりと言った。
「その報告――遅すぎた、かもしれませんね」
「え……?」
わけがわからないでいる観測員を見て、微笑んだのはロジャーと本部長だけだった。
「――勝った! 勝った! 勝ったああああ!」
砂の上に往生する巨体を前に、グロム達は手を取りあい、飛び跳ねて勝利を喜んでいた。
「すごい、ほんとにやったんだね、わたし達……!」
感極まって涙ぐみ、ユッカが唇を震わせる。うん、と満面の笑みでミーラルがうなずいた。
「すごいよね、ほんとに、なんか夢を見てるみたい!」
迫り来るジエンに、グロム渾身の撃龍槍が勝利への決定的な一打となった。ランマルとコハルの援護射撃がジエンの最後の牙を折り、士気をあげたユッカ達が、前足の堅殻を打ち砕いた瞬間、かの巨獣は断末魔をあげたのである。人間側の怒濤の猛攻に、砂漠の主は、ついに敗北したのだ。
「おい、何をやっている貴様ら! 今のうちに、剥ぎ取れるだけ剥ぎ取っておけ! 正当な戦利品だ!」
長々と伸びたジエンの骸の傍で、教官がちゃっかりナイフを振るっている。グロム達は思わず吹き出していた。
「ちゃっかりしてら。けど、早くしないとギルドの連中が全部もってっちまうよな。俺達も行こうぜ!」
「うん!」
「やれやれ、休む暇もないんだから」
三人は教官のもとへ走り出した。ランマルとコハルも後を追う。どの足取りも疲れを忘れて軽やかだった。
一陣の風が吹き抜けて砂塵を払い、澄みきった青空が顔を覗かせる。
もうじき、砂嵐も去るだろう。
思ったセリフがあります。
「その報告――遅すぎた、かもしれませんね」
これ、ロジャーはどういう意味で言ったのかと…急に違和感が。
「早すぎた」のほうがいいのでは?
いや、誤報だったと言っているから、これでいいのか…。
勢いで書いていて、その最中はロジャーの考えもよくわかっていたんだけど、時間がたったらよくわからなくなってきました…。
とりあえず保留にしておいて、あとで良い文句が浮かんだら訂正しておきます。
うーむ…。
気がついた方がいらしたら、アドバイスお願いします^^;
キャラクター登場人数が多いと全員をやりくりするのが大変なので、気を遣います。
幸いうまいぐあいに動いてくれて助かりました。仲間はずれはさびしいですもんね^^
それと、長い戦闘シーンは区切れ、と、プロ作家さんもやっている手法を取り入れてみました。ロジャーは良い区切り役でしたw
ていうか、ロジャーが勝手に一人歩きしてしまいましたww
熱いバトルの合間に吹きぬける清涼な一陣の風…なんて良い役どころなんだ(笑)
勝った、狩っちまいやがった、この4人・・・
いやぁ、最後は熱い展開でした ゾクゾクきちゃいましたよ
本当にみんなで掴んだ勝利ですね まさかここでランマルたちもあんな活躍を・・・
誰一人、一匹欠けてもなかった勝利ですねぇ
そして、ロジャーさんがなんかメチャクチャ美味しいシーンを持っていった!?
さすがイケメンは違う・・・見事にカッコいいとこもって行った・・・惚れてまうやないか
「その報告――遅すぎた、かもしれませんね」
うわぁ、言ってみたいですねぇ そんなセリフ
村長クエのジエンだと、撃龍槍でシメ、はできますよね。
ギルドだと難しいです。タイミングによっては、決戦で2回槍を撃てる場合もありますが。
本文でも書きましたが、槍の後、グロム達がとどめをさしています^^;
ゲームに忠実に書きました。
ガンスでシメ、俺はまだやったことなくて。なかなかできないですよね~^^;
あんなに決まる技がある武器って、あとは太刀とスラアクくらいかな?
俺も竜撃砲が好きです。溜めているときが華ですねw
剥ぎ取りに走ったのは、教官が根っからのハンターだからですねw
ギルドから与えられる報酬(クリア後にもらえる素材)以外に、剥ぎ取りはハンター個人の特別報酬だと思っています。つまり、余分に取っていいボーナスみたいなものかと。
なので、教官は自分がもうかりたいために剥ぎ取りに走ったのです。ジエンの素材は高く売れますからw
だから「ちゃっかりしてる」んですよ^^
ちなみに、モンスター討伐後は、ギルドの人(アイルー含む)が、全部回収に来るらしいです。
ムービーだと、中型のモンスターは荷車に乗せて運ぶ姿があるんですが。これもあの後、ギルドに一度持って行かれるようですね。契約だから仕方ないんですが。
グロム達もようやく長い戦いが終わりました。ほんと、お疲れ様!ですね^^
戦いは、ここで終わりです。エピローグがあと2回、続きます。
もうしばらくお付き合いくださると幸いです^^
このように『大技』でフィニッシュを決めると、それだけでドラマが盛り上がりますね。
私もガンスの竜撃砲を決めて途端にクリア音楽がなると思わずこぶしを握り締めたりしますから。
砲撃は男の浪漫ですね。
ひとり冷静な教官がおもしろいです。らしいなぁ。
でもたしかに、急がないとまにあわないんですよね。ジエンは剥ぎ取り回数も多いからw
グロムたちに、おつかれさま!
ここで終わり?
もうちょっと、続く?