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きのこ少年 (ウロコ)


目の覚めた少年はしばらくは、この現実を理解できなかった。
少年の体はキノコのウロコで包まれ、もう人間の姿をしていなかった。
「僕はどうなったの?」
少年は自分の体の変化に迷いを感じた。
体全体を覆うキノコのウロコは少年の肌を違う生物の皮膚に変えていた。
それは半漁人のような化け物のようにも見えた。
少年は自分が醜くい生物の肌になり、自分が醜い姿をした生物になってしまったと思うのだった。
「僕はどうなったの。これは夢だ」
今の少年に、この現実をすぐに受け入れる能力などあるはずがない。
少年はキノコのウロコを触りながら、その感覚を受け入れようとしなかったし、受け入れることができなかったのだ。
動物は身に危険が迫ったときは逃避する。
少年は頭のなかで必死にこの現実からの逃避を試みていた。
「これは夢だ。これは夢だ」
少年は何度も呪文を唱えるように、これは夢だと自分に言い聞かせていた。
「これは夢で、夢から醒めると元の体に戻ってる」
少年は目をつむりながらそう言葉を唱えて、目を開けそしてまた目をつむり、言葉を唱え続けて目を開けることを繰り返した。
目を開ける度に、これが現実であることを少年は分かり始めていた。
大きな悲しみが少年の心の底からこみ上げてくる。
その心からの込み上げは、悲しみだけでなかった。
これからどうなるか分からない不安と恐怖も含まれて、大きな悲壮感となって心の底から湧きあがってきた。
「いったい僕はどうなるんだ」
少年は両手で頭をかかえ、大きな声で叫んでいた。
目には自然と涙が浮かんでいた。

少年の興奮が最大になろうとしていた時、毛細血管に化けたキノコの菌糸がまた幻覚剤を少年の血液に流し始めた。
それは鎮静剤の役目もしていた。
少年の脳の興奮と感情の高まりが嘘のように鎮まっていった。
そして醜く思えた姿が、普通、いや誇らしく思えてきた。
少年はまた宇宙との一体感を感じ始めたのだ。
それを感じ取れる自分の肌を自分に受け入れ始めた。

#日記広場:自作小説

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2011/11/13 08:17
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