Nicotto Town



12月自作/「クリスマス『出会いは…』」

1986年12月24日、好天の午後。その日友人の健一と僕は、バイト先のケーキ屋の店頭でホールケーキを売っていた。
『男がケーキを売って客寄せになるか?』という問題は全くなかった。なぜなら、僕らはサンタクロースの格好をさせられていたからだ。
「あーっ、サンタさんだぁ!」と駆け寄る子供に、まずは170cmの僕が、「坊や(お嬢ちゃん)はケーキ好きかなぁ~?ホーッホホホーッ!」と声を掛けながらハート型の小さいスティックチョコを渡してケーキの前に立ち止まらせると、180cmの健一サンタがその親にケーキを勧めるという姑息な戦略でケーキを売っていった。
【 僕が子供だったらチョコだけもらって駆け去っただろうから… 】
同じ頃、隣りのリカーショップでも1本500円のシャンメリーを売っていた。
こちらはスカートを履いたかわいいサンタの格好をした女の子二人組で、一人は試飲用のカップを差し出し、一人がシャンメリーを売るというスタイルだった。
イヴの人ごみの中、この「見事なタイアップ戦略?」が好を奏してか、ケーキとシャンメリーはウソみたいな勢いで売れて行き、午後6時頃にはどちらもほとんど売り切れになった。

「すいませ~ん。また交換お願します!」
僕らが後片付けをしていると、女の子二人組が4本づつシャンメリーを抱えてやってきた。初めてバイトした僕らは知らなかったが、毎年こうしてケーキと飲み物を交換しているらしかった。
ところが、今年のケーキの売れ行きは順調すぎたらしく2000円のケーキは1個しか残っていなかった。
「どうしようか…」
とりあえず交換した1個を手にした女の子たちは、ちょっと困った様子でやりとりしていたが、家族に買って帰るという女の子が優先することになった。

「ありがとうございました…」
女の子たちがお礼を言って去りかけた時、それまで黙っていた健一がシャンメリーを抱えた子に声をかけた。
「ちょっと待ってて…」
小走りに店の中に入っていった健一が2000円のホールケーキを手にして戻ってくると、「これと交換しよう!」と女の子の前にケーキを差し出した。これは、健一が家族のために買っていたものだったが、もちろんそんなことは一言も言わず、健一は女の子にケーキを渡した。
「あ、ありがとうございます!」
女の子は深々と頭を下げると、嬉々とした顔でリカーショップの中へと消えていった。

「健一っちゃん、かっくいい~ねぇ」
僕の言葉に、健一はちょっと恥ずかしそうに『帰りにパフェおごれよ!』と言って後片付けに戻っていった。

……それから2年後。
健一のそばには、その時の女の子がウェディングドレスを着て座っていた。僕が友人代表としてこの話をした時、女の子の目には薄っすらと涙が光っていた。

☆☆ おしまい ☆☆

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2012/01/07 10:31
お。おおおおお!@@

1月期作品を読んで、BENク―さんをお魚関係者(?)かと思った私の目は節穴でしたね^^;
あちこちに散りばめられたユーモアの欠片にほんわかと笑顔にさせて貰いました^^

HAPPY END とってもいいです^^

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2011/12/30 07:47
すてきな出会いでしたね^^
しかもその話をずっと黙っていたところがにくいです。
お幸せに^0^
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2011/12/13 19:36
カウカウ王て言うサークルはいってくれませんかカウカウの服とかきてタウンでならんだりたてものにのぼったりしますスキーしたりするときもありますはいるだけはいってくれてもうれしいです
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2011/12/11 23:46
出会いと言うのはいつ、どこであるかわかりませんね(笑)
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2011/12/10 20:20
情けは人のためならず……

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2011/12/10 14:42
クリスマスって、何か不思議な雰囲気を感じます。
出会いがクリスマスという魔法というお話は
大好きです。

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2011/12/10 14:08
損して得とった?健一くん…
きっと、売ってる間からもう、彼女に恋してたんでしょうね(*^^*)
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2011/12/10 09:37
おぉ、実話のような小説ですね^^
「現実は小説より奇なり」と言いますが、
ノーフィクション小説はなんかワクワクしますね。
ケーキが完売して良かったと思いました。
売れ残ったら、価格が下がる。
それを狙ったヒトのケーキ争奪戦もおもしろいかも。
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2011/12/10 04:26
ふつうははっきり家族用に買ったというでしょうね
健一がいい人であるとも
下心があったともとれます
結婚したから、新婦の心眼にかない、
やはりいい人なのでしょうね



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