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「刀 『キッターマン』」


私の行く後、真っ二つの物あり。
切られし物より流れる液は、赤か黒か。
このキッターマンが教えてくれる。
知るがいい、おのれの血の色。
この青竜架空剣が明かしてくれるわ。


私は天涯孤独のキッターマン。
世を吹くか風に涙の叫びを感じ、この世より消えた弱き者の声を聞き、風の導くままに野を放浪する。
人を騙した腹黒人間の腹の色、我が技で明かすために、今日も風の吹くまま旅を続ける。

「おぉ、また風車が回った」
キッターマンが手に持った風車が静かに回り始めた。
風の呼ぶ方向を知るために、キッターマンは風車を左右に動かした。
「今日は東北東の方向から吹く風か」
キッターマンは風車を前にかざしながら、風の導く方向に歩んでいった。
やがて彼の行く前に林が現れ、大きな楠木が目に入った。
「風はどうもあの木から吹いて来るみたいだな」
キッターマンはそう小さく呟き、軽いため息をついた。
木に近づくにつれて、彼の片目が茶色から緑色に色を変え始めた。
キッターマンは不思議な力を持っていた。
それは、幼い時に河で遊んでいて溺れて死にそうになり、声を聞いたことが発端だった。
その声を聞いた後、彼は河の流れの変化で奇跡的に浅瀬に流れつき命を取り留めた。
そして彼の片目の色が変わる時、死者の叫びが聞こえるようになったのだ。

キッターマンの前の大きな楠木の枝には、縊死した男性がだらりとぶらさがっていた。
キッターマンは死者を抱きかかえると、首のロープを外し枯葉の上に死体を静かに寝かせ、そしてその横に座り風の音に耳を傾けた。
彼は風が死者の声に変わるのを待った。
やがて耳にあたり音を出していた風が、死者の言葉に変わった。
「私は女に騙され、貯金を巻き上げらたうえ借金までさせられてしまいました。毎日、金に追われた私には、もう死ぬしか道は残っていませんでした。必ず返すという彼女の言葉を信じた私がバカでした」
キッターマンには、死んだ男が借金の返済に毎日追われている姿が見えた。
そして、女の姿が浮かんできた。
女が言葉巧みに言葉と色気で男をまどわしてる姿だった。
「あなたが、好きなの。死ぬほど好き。必ず返すからお金をまた貸して。お願い。今夜はいっしょに楽しみましょうね」
「僕も君が好きだよ。だからできるだけのことはしてきた。でも、もう金がないいんだ」
「ちょと借りてくれればいいのよ。私が紹介してあげるから、あなたは名前を貸してくれればいいの。心配しなくていいのよ、もうすぐお金が入るから。そしたら今まで借りた分も返すから大丈夫よ。好きなんでしょ、私のこと」
「あぁ、好きだよ」
「じゃ、それぐらいのことはしてね」
「わかったよ。名前を貸せばいいんだろ」
「そう、ありがとう。大好き」
女がうれしそうに甘えた声でそう答えた。
男が女を本当に好きであることを証し立てるには、女に金を渡し続けるしかなかったのだ。
キッターマンは風車を頭の上に掲げた。
今度は風の吹いて行く方向に向かって歩いて、死んだ男を騙した女を見つけねばならない。
風は東から西よりの風に変わっていた。
キッターマンは西南に向って歩き始めた。
その方向には一つの村があった。
「男を騙した女は、その村に住んでいるな」
キッターマンはそう確信した。

村に入ると、すぐに一人の老婆に出合った。
息子が帰らないと息子のことを心配している老婆だった。
キッターマンにはその老婆が、首を吊って死んだ男の母親だとすぐに分かった。
「息子さんが好きだと言ってた女性を知りませんかね」
キッターマンが老婆に尋ねた。
「あぁ、コミさんだんね。コミさんならこの先の河の向こうの家にすんでるよ」
死んだ男の母親からは、捜す女の住んでいる家をすぐに聞き出すことができた。
この母親が息子の死を知ったらどんなに悲しむだろうと思って、死んだ男のことは話さず女の家へと向った。
「こんにちは」
キッターマンは捜す女の家を訪問していた。
「はぁ~い」
家の中から返事する女の声がした。
キッターマンの目の色が再び変わり、青竜架空剣の鞘を握る手に力がこもっていた。
女が戸を開け姿を現すと同時に、キッターマンが空いた手で刀の柄を握った。
「問答無用。腹の色、拝見さしていただきます」
キッターマンは片手で刀の柄を握ったままそう言うと、青竜架空剣を鞘から抜いて鞘を捨て、両手で柄を握り刀を中断に構えた。
女は突然の出来事を理解できずに、ただ立ち尽くしていた。
「はぁ・いぃ・けん」
キッターマンはそう気合を入れながら、女の腹の当たりを真横に切り抜いた。
女の胴体が腹で真っ二つに分かれた。

しかし、この刀は架空の剣だった。
女の本体には何の傷も負わさなかった。
切れたのは女の霊魂だった。
切れた女の霊魂の腹からは黒い液体がドバドバと流れ出した。
「お見せしました。あなたの腹の色」
キッターマンは女にそう言って刀の鞘を拾い、刀を鞘に納めてその場を立ち去った。

#日記広場:自作小説

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2011/12/31 12:23
BENクーさんどうもです

なんか作文仲間みたいなコメントをありがとうございます
見たことのあるマンガのイメージですね
最後には悪は滅びボロボロになって逃げ帰る

マンガの悪役女性のアバがセクシー
逃げ帰るときにポロンなんて期待してました
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2011/12/28 19:34
展開といい、内容といい、凄惨な話であるのに、何故かおどろおどろしさがあまり感じられない思いがしました。
きっと、淡々とした文調とキッターマンのキャラクターが何とも軽快にマッチして、コミカルさを受け取れるからだと思います。
いつのながら、視点の面白さに感心します!(^0^)
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2011/12/15 18:29
まゆさんどうも

はい、絵を入れるのおもしろいです
アバタに合わして、話を考えてるかもしれません
今度は竜が登場するかも

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2011/12/15 18:25
スイーツマンさんどうも

アドバイスありがとうございます
ちょとたいそうだったかも
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2011/12/14 20:14
霊魂の色を見るだけで立ち去るところが、あっさりしていて良い味をだしていると思いました。

暗い影を持つような設定なのに、なぜかとぼけた感じがするのは、ゴキブンさんの仮装のせいだけではないと思いました^^
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2011/12/14 19:06
文字通り、腹黒い、ということで

拝見して気付いたことは、
長編の場合、欠点が必ずいるものだけれども
掌編の場合は、ちょっとしたメッセージをつければ
オープニングのようなものだけで
じゅうぶんかもしれません
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2011/12/14 00:25
パールくんどうもです

きゃ、かっこいいなんて、うれしいです
霊魂の言葉しか浮かばなかったので使いました
影のほうがよかったかも
あまり深く考えてないので、輪廻は難しい言葉に思えます
パール爺さまに聞いて下さい
ああ、剣を振り回すことを、払う、と、爺さまはおしゃってましたか?
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2011/12/14 00:16
かいじんさんどうもです

いつもコメントありがとうございます
作文の練習なので、読んで下さるだけでうれしいです
文章を書くって、私にはまだまだ本当に時間が掛かります
かいじんさんのように、思ったことを早くすっと書けたらいいなと思います
気を使わずにこれからもコメントして下さい
またよろしくです

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2011/12/14 00:03
クトルさんどうも

剣について書いた参考文章いっぱいあって読みきれませんでした。
難しい言葉や専門用語も多いです。
クトルさんのコメント解説がとっても分かりやすくていいです。
アバター
2011/12/13 23:21
わぁ、かっこいい…冒頭の文、テンポよくって好きです~
霊魂を斬られたら、その人どうなっちゃうんだろうと気になるw
輪廻の輪から外れちゃうとしたら、死よりも厳しいですよねー
アバター
2011/12/13 23:20
キッターマンって言う文字を、サークルで見かけた時から期待に胸を躍らせて
来たので、冒頭の部分とアバターで思わず爆笑してしまいました。
申し訳ない。

読み進むと意外に(失礼)かなり良く出来た物語で、結構深い話でした。

個人的には、キッターマンの次の活躍を心待ちにしています(笑)
アバター
2011/12/13 23:10
かっこいい…。
剣は物を斬るためでなく、心を斬るものですね。



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