泣くマネキン
- カテゴリ:自作小説
- 2009/05/28 13:31:55
田舎の村に駐在所があった。
田村巡査長35歳はこの駐在所に勤務して3年、事件らしい事件は何も起こらないこの村に少しいやけがさしていた。
ある日の午後いつものように村の巡回をしようと準備をしていたところに、とし婆さんが息をきらしながら駐在所に駆け込んできた。
「田村さん、向こうの田んぼのあぜ道に女性の死体がころがっとるで!」
「ええ、死体?」
「ああ、死体じゃ。それも真っ裸の女の死体じゃ」
こんな田舎の村に死体などあるわけがない。田村巡査はとし婆さんの見間違えだと思った。
「とし婆さん、大丈夫か? なんかの見間違えやろ」
「いいんや、あれは死体じゃ。確かに死体じゃ。まちがいない。死体じゃ」
とし婆さんがあまりにひつこく言うのでしかたなく確かめに行くことにした。
「とし婆さん、場所はどこや?」
「ほら、森じいさんの田んぼのあぜ道じゃ」
「森じいさんの田んぼやな」
「そう、森じいさんの田んぼじゃ」
田村巡査は場所を確認した後、とし婆さんを自転車の後ろにのせ現場に急いで向かった。こんな田舎で殺人事件。
田村巡査は自転車を必死でこぎながら頭に『出世』の文字が浮かんだ。
『この事件で手柄をたてれば村から町へ移動できるかもしれない』と胸のなかで思いながら自転車をこいだ。
「そうだ。府警に連絡しとかなければ」
と思い出したかのように独りごとを言うと、田村巡査は自転車を止め胸のポケットから携帯を取り出し二つ折を開いて府警のメモリーを押した。携帯を耳にあて携帯がつながるのを待ちながらとし婆さんに話かけた。
「とし婆さん、ちょと府警に連絡しとく・・・・・・ああ、こちら山村駐在所の田村巡査です。今日午後2時に山村にて死体が遺棄されているとの住民からの通報があり確認に向かっております。詳細について確認後連絡させていただきます。なお応援のほうよろしくお願いします。・・・・・・はい・・・・・・はい・・・・・・はいそうです。でわよろしく」
田村は府警の確認に応答し携帯を切り、ぱたんとたとんで胸のポケットにしまった。そして自転車をまた必死でこいだ。
「ハァハァハァ。とし婆さん森じいさんの田んぼに着いたで。死体はどこや?」
田村巡査は自転車を止めとし婆さんに息をきらしながら聞いた。
「あそこや。ほらあそこ」
とし婆さんの指差す方を田村巡査が見た。
アスファルトの道路が田んぼの横を通ってのびていた。片側は山の斜面で木が生えている。田んぼ側は舗装の端から草が少し生えた路肩があり、その先は田んぼえの斜面になって落ちていた。その斜面の終わりに小さな水路がありその横にあぜみちが一メートルぐらいの幅でついていた。
そのあぜみちに確かに人間のような物がころがっている。裸のようで肌色が全体をおおっていた。しかし人間にしては何か不自然だ。田村巡査の脳裏にいやな予感が浮かんだ。
「とし婆さん、あれ人間と違うのとちゃうか。とりあえずそばまで行こうか」
「そんなことは無い。確かに人間やった」
とし婆さんは怒って答えた。
田村巡査は確認のためそばまで行き自転車を道路わきに止めると後ろのとし婆さんが自転車から降りるのに手をかした。
「ここでまっててや。わし見てくるし」
そう言葉を残し田村巡査は田んぼへ降りていった。あぜみちに立った田村巡査は上のとし婆さんに
「やっぱりこれ人形やで。マネキンやな。誰がこんなとこに落としていったんや人騒がせなやつやな」
と大きな声で下を見ているとし婆さんに言った。
人形を抱えて斜面を登った田村巡査はとし婆さんにそれを見せながら
「ほら見てみ人形やろ」
と言った。
とし婆さんは人形をさわりながら顔をしかめ
「わしが見たのとちがう。わしが見たのは人間やった。もっと柔らかやった。これとは違う」
強情に意見を変えなかった。
「とりあえず落し物として駐在所まで持ってかえるわ。そうや府警にも電話せんと」
田村巡査は自転車の荷台に人形をくくりつけ駐在所に持ち帰った。
やがて日が沈み駐在所に夜がきた。
田村巡査は机に向かって今日の報告書を書いていた。
つづく

























事件じゃなくて御免。
なぎさおねえさん
いつもさ先よまれてる。
でも、とし婆さんは、人だったと言うし……。
続きが楽しみですw
テレビドラマを見てるような気がしたよ^^v