Nicotto Town



天国と地獄の沙汰は人次第?(読みきり小説)


気がついたら知らないところに立っていました。



まっさらで何もない砂漠のようなところでした。


なにやら遠くのほうに目を凝らすと物陰のようなものが見えましたからその物陰に近づいてみることしました。


もちろん私は馬鹿ではないので蜃気楼ではないかと疑ったりしましたが、蜃気楼が起こるような暑さではないのです。

そういえば砂漠のように草一本生えていない。
なのになぜ暑くないのだろうと素朴な疑問を抱えながら歩いてゆくと謎の物体の正体がだんだんと分かってきました。





その物体は足の長いテーブルとまたまた足の長いイスでした。
そしておまけのようにやせ細った人間がイスに胴体だけ縛られた状態で何人かテーブルに向かい合って座っておりました。

テーブルには見たこともないようなご馳走。見ただけでよだれがたれそうな代物です。
そしてこれまた見たことのないような長い箸。
食べることができないのではないかと思うような60cmはある箸でした。


イスに座っている人間はだらしなくよだれをたらしながら長い箸でご馳走を取ろうとしています。
もちろん箸ですからご馳走をつまみあげることはできるのですが、箸が長すぎて自分の口に運ぼうとしても自分の顔を通り過ぎるばかり。

分からない方はやって御覧なさい。
長い棒を二つもって口に食べ物を運ぶことがいかに難しいか。

まあ、その話は置いておいておきましょう。

ともかく目の前にあるご馳走は手を伸ばしただけでは取れないもので必ず箸を使わなければ取れないところにあるのです。

目の前にご馳走があるのに食べることができないとはなんとも悲しい。

そう私が可哀想に思っていると急に視界がぼやけてきました。
体から力が抜けて倒れそうになった瞬間、テーブルの下の看板が目に入りました。


             ここは地獄。次、天国。


気がつくと先ほどと同じようなところに今度は倒れていました。
ですが近くにあのテーブルはありません。

立ち上がると、また遠くのほうにまた同じようなテーブルが見えます。
さっきの看板は何だったのだろうと思考しながら、またあのテーブルの方へ向かいました。

だんだんテーブルに近づきますとなにやらさっきと雰囲気が違います。

テーブルからは笑い声と食器の触れ合うカチャカチャとした音。

なるほどここが天国かと、眺めてみますとテーブルやイスは変わらない。
座っている人も健康そうなことを除けば、胴体が縛られていますし、箸は相変わらず長い箸。

なんだ、これではさっきと同じ。
ではなぜここの人々はこんなにも幸福そうなのだ。

そう思い見ていると一人の人間は長い箸でひょい、と器用にご馳走をつまみ向かいの人の口に運んであげました。

すると向かいの人は礼をいいお返しとばかりにその人間の口に自分の箸でつまんだご馳走を食べさせてあげました。




なるほど、これならばみんな困らない。

先ほどのやせた人間は自分のことばかり考えるあまりこのようなことを思いつかなかったのだ。


そう感心しているとまた視界がぼやけて体から力が抜けていきます。
私はすぐさまテーブルの下を見ました。
そこには例の看板が、もちろん書かれた字は…。



             ここは天国、先ほど地獄。








あとがきーー

うん、これは昔祖母から聞いたものを小説風にしたものです。
いつもと同じ文体じゃつまらんだろうと思い替えてみました。





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