発送電分離は 万能解ではない
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- 2011/12/23 09:17:32
東西暴言同盟が成立したのか、東京都と大阪府は、来年度の東電・関電の株主総会で、発送電分離の実施を株主提案することを決めました。
ポピュリズムを権力の源泉というか、レゾンデートルとするお二人にとって、愚民受けする「よく分からないけど、悪者退治みたいでカッコイイ」アクションは不可欠です。
自信を持っていいますが、発送電分離って何なのか?分かってない人が7割、そのメリデメに至っては9割以上が分かってないでしょう。
電気は、「発電」所で生産されて、「送電」線で運ばれて、電圧を下げて(変電)してから、各戸に「配電」されます。
テレビや冷凍食品を生産したら後はトラックとかで運べばよいのと違って(冷凍倉庫での保存てなノウハウもあるけど)、商品流通に、送電線また配電網という特殊なノウハウや設備を要するのが、違いのポイントその1です。
次に、そもそも「発送電分離」とは、どういう発想なのかというと、アンバンドリングといって、独占的な公益事業をバリューチェーンで分割することで、効率性を高めるものの一バリエーションです。
日本では、なぜかwアンバンドリングは積極的に実現されてませんが、欧米では電車と線路の会社を分けたり、通信業界だと孫社長がこの実施を熱弁しています。
で、発送電分離ですが、欧米だけでなく途上国でも多く実現されています。このポイントは、途上国では地域分割と民営化、欧米では電力販売の自由化と広域融通(欧州だと他国からの電力輸入)が、抱き合わせとして実施されています。逆に言えば、発送電分離は、そうした政策実現の1パートだというんこと。
実は日本では、地域分割も民営化も広域融通も十分実現していて、電力販売の自由化も販売電力の70%では実現しています(私達一般家庭が電力会社を選べる「小売自由化」以外は実現されている。
じゃぁ、なんで今更「発送電分離」なんだ?というと、一つは「原発を減らして、自然エネルギー発電を増やす」ため(自然エネルギーを用いた事業者が、参入出来ないし、送電線の使用料が高くてビジネスに成らない現状との批判があります)、もう一つは「東電許せないお仕置きや」ってヤツ。石原・橋本の二人は、後者ですね。
東電にお仕置きしたいなら、既に実施方向となった実質国有化の中で、コストカットや経営方針変更をすればいいだけなんですよね。
自然エネルギー業者の参入なら、送電線の使用料を引き下げさせればいい。
何れも、政府が腹括って決断すれば、簡単に実現できる。
それなのに「発送電分離」を言い立てるのは、なんかインパクトのある言葉だからに過ぎません。
しかし、分離したって、送電・配電を既存電力10社の単位でバラすだけでは効果は少ないです。それに、地方電力では、分離しても競合者が現れずに、分離コストやサービスの低下だけの結果になるリスクもあります。
本州全ての送電・配電を担う統合会社を作ると、震災直後に話題となったヘルツ変換や長距離送電線が実現しやすくなりますが、それにはそもそも莫大なコストがかかります(送電線には土地買収が大量に必要)。結局それは皆さんの電気料金で回収することになります。
「発送電分離」のポイントは、通信でのソフトバンク、鉄道でのJR各社の切磋琢磨といった新規参入や競争が起きることですが、既に分割・民営を何十年も続けている電力業界に新規参入は起きるのか?仮にあったとして、安定供給という大命題を守れるのか(注:ソフトバンクの携帯が「通じづらい」という事実が、新規参入者の安かろう悪かろうビジネスの結果であることに注目)という問題もあります。
「何を実現して欲しいのか」「何は変えてはいけないのか」「その変化のもたらすメリット・デメリットは何か」
物事の改革を図るときには、冷静に考える必要があるでしょう。
耳触りのいい言葉に踊らされて、思考停止で「ハッソウブンリ」を連発するのは、オバカさんです。「ユーセーミンエー」「キセーカンワー」の大合唱が何を産んだのかを思い出すべきでしょうね。
むろん、そこまで冷静になって議論できたなら、新たな電力改革はアリだと思いますよ。
僕は持論があって、先ずは東京電力の福島1・2の廃炉と賠償だけの国営会社を設立・分離すること。次に、電力各社の原子力事業を、電力各社と政府の共同出資会社に移管すること。その上で、入札を経た地産地消型の自然エネルギーや、都市圏での新規参入者による大規模火力については、送電・配電設備を国家予算で建設して、それを電力会社が借り受ける。
これだけで、ハッソーブンリで得られる実質的効果の多くは実現されると思います。
孫社長については、人間として経営者としてカリスマ性や突破力のある人として、評価すべき点も多いのですが、出自に還元してはよくないなぁと思いつつも、日本的経営者の美徳は持ち合わせていない点、そして、本文でも書いたような阿漕な商法は、どうしても好きになれないです。
さて、橋本さんですが、怖いなぁと思うのは、主要メディアが口を揃えて賛美し始めた点。民意を大事にする新聞論説が、まがりなりにも選挙で大勝した彼を、「ヒトラーも選挙で選ばれた」的な批判も封印して、しまっている点。あと、来年ともいわれる総選挙を当て込んでの、政治家達の媚び方も異常に感じます。
上手いやり口だと思うのは、大阪都構想という「実現の困難なプラン」をその成果も明らかにせずに、それ自体を目的化する手法です。逆TPPとでも言いましょうか、それが実現すれば、何でも叶うとバカが勘違いする程度に曖昧なプランであることが先ずポイントその1。
次に、構想が実現できないのは、法改正が必要とか反対の人がいるとか、自分の反対勢力のせいにできること。小泉さんの自民党保守派に「反郵政」のレッテルを貼った手法と同じですね。これで、都構想が実現できないことで、逆に「戦う橋本」のブランドを永遠に保てるというのがポイントその2。
そして、ポイントその3は、僕が最も悪質と思う点ですが、曖昧なプランを掲げる中で、そんな付託はいくらバカな大阪市民でもしていないような、教育委員会のことなどの反動的政策を、数にモノを言わせて薦めている点。そんな暇があるなら、都構想について一心不乱に推し進めて欲しいものです。
まぁ、大阪府民と大阪市民が自ら選んだことですから、どうでもいいんだけど、石原と同盟結んだとなると厄介ですね。橋本支持を大阪内でやるのは勝手ですが、この評が石原⇒亀井⇒平沼と流れるのは、最悪でしょう。民主党自体があまりにアホなので話題になることが少ないですが、普天間問題や増税などで、与党の推進力を削ぎまくっているのは、国民新党でもありますから。
東京都の事情はわかりませんが。
橋下氏の場合、大切なのは「次の国政選挙までの間、いかに馬脚をあらわさないか」ということです。
「大阪都構想」を前面に押し出していますが、現実問題として行政の体制が変わったからといって大阪にある諸問題が解決するわけではない。
都構想と道州制には矛盾があるのに故意にか無視している。
なので、目玉施策でありながらこの問題ばかりに焦点が当たるのはデメリットも大きい。
ですから「公務員は悪者」という庶民感情に従って給与削減や民営化推進をとりあえず前面に出している。
府知事時代と基本的には同じですが、大阪市は直接行政である分事業団を抱えていますから当分それでごまかせそうです。
(例によって民営化のデメリットは語られていませんし。)
電力関係は孫社長の入れ知恵でしょう。
府知事時代に会見してかなり心酔していたようですから。
(無論、橋下氏の一連の動きはソフトバンクにとってもメリットがある。)
大阪にとって大きな爆弾は「新大阪府知事」かもしれません。
教育に行政が関与することについて文科省から指摘があったときの記者会見。
記者「具体的に行政がどのような教育目標を設定して関与していくべきかとお考えか」
知事「漢検とか英検とか・・・」
・・・
想定された質問なんだから、橋下氏も入れ知恵くらいしてあげればいいのに。