Nicotto Town


濃すぎる毒入り日記


アイヤー、アルヨ言葉4000年の歴史に吃驚アルね

白ガチャがチャイナグッズになったことで、ニコタ中に「アルヨ」言葉が溢れています。

以前から、軽く関心はあったのですよ。語尾に「アルヨ」とつけて中国人の日本語という意味を持たせちゃう手法。まぁ、全文をカタカナ横書きにすると欧米人、「~スムニダ」だと朝鮮人というのと同じなんだけど、「~アルヨ」から漂う軽い蔑視感が、「シナ」は全て「中国」に置き換えという厳しいルールの中で、なんで生き残っているのかとは思ってました。

「アルヨ」言葉といえば、ゼンジー北京師匠という説があって、師匠の衣装(チョコンとした帽子、如何にも中国!な服で、両手の袖をつなぐみたいな)は、アルヨ言葉と一心同体っぽいんだけど、あの格好は、清国の官僚で、由来は満州族じゃねぇーかってツッコミもあったんですが、なんか、アレが中国スタンダードなのは、清国が最後の中国の王朝つまり明治の人には清国=中国だからかぁとか思いつつ、筆を進めます。

ゼンジー北京説について、僕は強く否定します。それは、学術的に間違いであるとともに、石森章太郎先生の傑作「サイボーグ009」の006の方が、師匠より早くにアルヨ言葉を使っており、師匠ブレイクを待たずに、アルヨ言葉が広く定着していたことは明らかです。

ゼンジー師匠のブレイクが1970年代前半、009が初めて作品となったのが1960年代前半ということで、その時点でアルヨ言葉があったことから、どうも、大陸での戦争が関係することが伺えます。
そうなんです。満州国がアルヨ言葉の育ての親なんですね。
満洲国は、中国北部の複数の省を日本支配下に置くために、清朝の最後の皇帝を傀儡にしたものです。ここには、建前で「五族協和」というのがあって、満・漢・蒙・日・朝鮮という五民族がドンドン集まって来ました。でも、言葉が違うので、共通言語として「協和語」というのが便宜よく普及していきました。
これが「アルヨ言葉」的なナンチャッテ日本語でした。同時に、大陸に出兵した兵隊さんは、中国語が話せないので、これまたナンチャッテ中国語を使っていました。この二つのナンチャッテ語が戦中・戦後にグチャグチャと時間をかけて融合して生き残ったのが、ゼンジー師匠や009で使われた「アルヨ」言葉なのです。

「アイヤー、アナタそれ高いアルネ。タメタメ、ポコペン、安くのするアルね」なんてね

でも、更に疑問は残るのであって、「協和語」の下になった日本語は何なんだ?ってことです。
これを研究した先生がいて、「アルヨ」言葉というのも、その先生のナイス・ネーミングで、学術的にはピジン日本語というらしい。
ピジンっていうのは、外国語と現地語がチャンポンになって土着化した言葉のことで、有名なのはマレーシアやシンガポールのピジン・イングリッシュだったりします。
で、アルヨ言葉の起こりは、幕末に黒船来てから、多くの外国人貿易商が横浜や神戸に来たときに、当時の難しい日本語(~~でござるとか御座候とか)が話せないので、簡単日本語というのが自然発生して、それがアルヨ言葉として会話集等が出来て行ったそうなのです。
見逃されがちですが、その頃に、日本人との通訳やアシスタントとして英米人が連れて来たのが、上海や香港の清国人。彼らは、欧米人と分けられて暮らしたことで、中華街が生まれたのですが、このアルヨ言葉が、欧米人より圧倒的に多かった清国人に広く使われ、それを聞いた日本人が、「中国人の話す日本語」と逆輸入的に受容していった流れが、明治・大正にあったと思うのです。

もう一度、おさらいしましょう。
幕末~明治初期: 横浜や神戸等の居留地でのアルヨ言葉誕生(ピジン日本語)
明治(日清戦争以前): 居留地から中華街さらには普通に日本人と清国人が接触(アルヨ言葉の受容)
日清戦争~満州事変: 大陸に兵隊や仕事で渡る日本人の発生(アルヨ言葉の輸出)
満州事変~終戦: 協和語・兵隊シナ語の普及
昭和20・30年代: 協和語・兵隊シナ語がアングラ化しながら、日本人に定着(新アルヨ言葉の受容)
昭和40年代: 新アルヨ言葉がマンガ・テレビ等を通じて普及(ゼンジー北京、サイボーグ009など)
平成:中国人・日本人の相互交流機会が急増。アルヨ言葉が存在しない事実が広く知られる。同時に、アルヨ言葉の差別性が問われる。

しかしそれでも、アルヨ言葉はすっごく生き残っていることが、今回よく分かりました。
まぁ、中国でも欧米でも、いまでもサムライ・ゲイシャにデッパメガネの日本人がいっぱいいるのですから、アルヨ言葉なんてのもフツーにあっていいわけですが。

(注意)
ピジン日本語、協和語、それと、戦後のアルヨ言葉の3つの進化の過程は、資料・研究に乏しく、わからない点が多いです(wiki参照)。それを想像でつないだ仮説が、↑の年表です。オリジナリティはあるけど、正確さには欠ける代物ということで、流し読み下さい。

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2012/01/22 09:27
しょこん さん へ

>昔NHKのドラマに、小学校の日本語。。。国語教育に、山口県の方言を使ったのだとかというような
のがあったと思うのですが。

それは、故・井上ひさしさんの「國語元年」ですね。
この本もあって、僕の去年秋くらいのブログで、2回くらい日本語の成り立ちについて書いています。

藩でバラバラだった日本語(西郷さんと龍馬は地元言葉同士では通じないので、京言葉で会話していた!)では統一国家として不便極まりないので「標準語」を作ろうと、長州の言葉と江戸言葉を掛け合わせたのが、現在の日本語です。

しょこんさんの住んでいる北海道だと、元々の言語としてアイヌ語があるけれど、その後に、各地から移民が集まって北海道となっていく、その過程で、標準語と似ているようで違う北海道弁が生まれて行くのも面白いですね。
本来は、方言としてのインパクトはそんなにないのに、一定周期で北海道弁がネタになるのも不思議だ(ヤーレンソーラン北海道、大泉洋、中島みゆきとか)
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2012/01/22 09:18
LISAさんへ、

LISAさんの何気ないよ「アルヨ」をキッカケに、良い勉強が出来ました。
こちらこそ、ありがとうございます。
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2012/01/21 20:52
昔NHKのドラマに、小学校の日本語。。。国語教育に、山口県の方言を使ったのだとかというような
のがあったと思うのですが。

標準語とか方言とか訛りとかイントネーションとか。
普通の日本語?の中にも、色々な疑問が有りますよね~?

沖縄の言葉やアイヌ民族のコトバ。アイヌ語地名とか、言葉の変遷に興味は尽きませんが。。。
時間と根気が尽きました(-_-;)
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2012/01/21 20:43
全然意識しないで書いちゃってました(*´艸`)面白かったです!



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