柘植久慶作/旅順感想
- カテゴリ:小説/詩
- 2012/02/04 01:51:24
旅順攻略の話は勿論日露戦争についてのお話である。所詮乃木なんぞが一日限りで陥落させた日清戦争の旅順とは別の話である。
作者自身がグリーンベレーというアメリカ陸軍特殊部隊の士官であった事もあり、そんなにムキに海軍の事を話したがらないのは仕方の無い事かとも思うのだが、非常に読みやすい印象を受けた。
振り返って見たとき、日露戦争の旅順攻略戦に於いて、誰が名将だったのかを考えた時、乃木は真っ先に外されるだろう。日本側の一戸兵衛なども今一歩である。
勿論現場にいたロシア側の上司であるステッセルやフォーク・海軍のウィトゲフトも選外だ。ただ一人、帝政ロシア側に居た防衛総監・コンドラチェンコ少将のみが将に将たる器の人物であり、この作品もまたそのコンドラチェンコを主役に抜擢している事自体がこの作品の魅力であり、『時代小説』でもなく『伝奇小説』でもない。きちんとした「歴史小説」にした所以で有ったろう。
ところで作者柘植本人が体験した戦場はアメリカ軍において泥沼だった(ベトナム戦争)であったという。
そこで経験した陸の戦いの様子が生々しく表現されている。戦場の終盤において、腕を片方吊ったままの兵員に小銃を持たせて突撃部隊に加えた戦場の非情と悲哀・これから後詰めに向かう兵員の傍にさっき死んだばかりの遺体を早くどけろと怒るコンドラチェンコは、周囲に遺体しか無いことに気付いて口を噤むシーンは、経験者で無ければ語ることが出来ないシーンだったろう。まさに歴史は繰り返す。その翻弄に作者柘植さん自身が呑まれたというのが、作品としての感想である。
さて、本編の旅順攻略戦だがその唯一の名将・コンドラチェンコ自体が途中で日本が放った大砲の下にあっけない死に方をしてしまう。
それを待っていたかのように弾丸・兵員・食糧全てにおいて備蓄が日本のそれを上回っていたロシアが降伏してしまう。歴史にもしもは無い。有るのはただ茫漠たる事実のみである。だから彼が日本に居たらとか、最初からロシア側の親分だったらとかは考えずに置こう。そうした時私が思う事は日本のその時の為で無い。コンドラチェンコの為に言いたいのだ。
旅順というのは何万トンにも流したセメントの量でもなく、そのセメントの補強にシベリア鉄道のレールを使った事でも無い。彼自身が部下をそれでも督励し、愛し、称賛し。およそそれにも似つかわしくない残虐な突撃を指令し、必死になった彼自身なのだ。
その写真資料に何故かロシア語では無い。まぎれもなく日本語のきれいな文字で、コンドラチェンコの墓が建っているのがその証左だと思っている。
日本側にも敵の見事さを称賛する余力と名誉があった時代の物語でした。
この人は日本人です
しかし、グリンベレーで将校をしていたそうです
えっと…実はとあるサイトで投稿小説しています。かなり更新は呪いですが…いえ、鈍いです。
私は心理ホラーのようなものを趣味で書いています。
この作者は日系の方なんでしょうか?
ベトナム戦争を経験されているようなお話しだったので、興味深く読ませて頂きました。
ムリしちゃいけませんよ^^
実はこれ別サイトの僕の日記をひっぱたもので、夏休みの読書感想文丸写し企画のものです
この程度なら目立たず騒がれずにいけしゃあしゃあと提出できますから
今、巡回中なので、もう一度あとでゆっくり読みに来るね♪