ガム男 2
- カテゴリ:自作小説
- 2009/06/05 02:58:21
五美斗(ゴミト)は地下鉄への階段を降りていた。
口ではガムがクチャクチャと音をたてていた。
階段を降りながら五美斗は振り向き人のいない事を確認するとガムをペッと吐き出した。
「これでまたガムを踏んで不幸になる奴がいる」
心の中でクスクス笑いながら新しいガムを口の中にほうり込んだ。
五美斗が階段の踊り場を過ぎ、降りる方向の違う次の階段を降りようとした時のことだった。
階段の上のほうで誰か男の声がした。
「誰やこんなところにガムをすてたのわ。皮靴の裏にくっついて取れへん」
「まあひどい。常識の無い人がいるわね」
男の声に続いて女の声もした。どうもアベックらしい。
五美斗は笑いがこみ上げてくるのを必死に我慢していた。
階段を降りきり改札への通路を歩く。
口では新しいガムが甘い味を満たしていた。
自動の切符販売機にコインを三枚続けて入れた五美斗は二駅向こうの料金のボタンを押した。
切符とおつりが同時に出できた。
おつりを先に取りそれを握り締めながら切符を親指と人指し指で挟みすばやく引き抜いた。
慣れたもんだ。五美斗の動きに無駄はなかった。
そして自動改札機に切符を入れた。
その瞬間「キンコン・キンコン」と改札機が音をたて黒いかんのん開きの小さなドアがすばやくバタンと閉まった。
「おかしいな」
と、つぶやくと五美斗は自動改札機から切符を引き抜きもう一度同じ動作を繰り返した。
今度は何も起こらなかった。
「なんだこの機械。壊れてるのとちゃうか」
五美斗はそう思いながら改札を抜けホームへ向かった。
これが不幸の始まりとは五美斗は思いもしなかった。
五美斗はホームで電車の来るのを待っていた。
口にはもう味がなくなったガムがあった。五美斗はそれをただ噛んでいた。
掃除のおばさんが五美斗の横をほうきとちり取りを持って通り過ぎた。
思わず五美斗はガムをペッと吐いた。
「にいさんなにするの。あかんなガムをそんなとこに捨てたら」
掃除のおばさんが振り向きながら言った。
「俺とちがうで」
五美斗は即座にそう答えた。
掃除のおばさんは五美斗の吐いたガムをテッシュで包み拾い下をむきながら
「あんた踏み切りでもガム捨てたやろ」
と、うらめしげにささやいた。
五美斗は『何でこのおばさんその事しっとるのか』と不思議に思いながら、心とはうらはらに
「知らんで」と、答えた。
「にいさん、うそはあかんで」
おばさんはそう小声で言い残すと柱の向こうにスーと消えた。
「おお気味の悪いおばんやな」
五美斗は背中に寒いものを感じながら心のなかでつぶやいた。
やがて電車がホームに入って来た。
五美斗は電車に乗りパチンコ屋へと向かった。

























ドキドキです^^