Nicotto Town ニコッとタウン

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ガム男 3

五美斗(ゴミト)が乗った車輌には誰もいなかった。
どこにでも座れる状態だっだ。五美斗はドアのすぐ横の座席に大きく足をなげだし頭が後ろにつくような姿勢で座った。
そして新しいガムを口に含んだ五美斗はクチュクチュと口を動かしながら自分の姿が映った誰もいない前の座席の上の窓をぼんやりと見ていた。
次の駅が近づいて来た。
地下鉄の電車は速度をゆっくりと落とし始めた。
その時、電車の中のあかりが切れかけの蛍光灯のようにパッパッと点いたり消えたりした。
そして一瞬全体が暗闇になった。
五美斗はギクッとした。
五美斗がぼんやり見ていた窓に掃除のおばちゃんの姿が暗闇のなかに写しだされていたからだ。
その顔は青白く無言の表情で五美斗を見ていた。
電車の中はすぐに明るくなった。
前の窓には自分の姿が映っていた。
五美斗のガムを噛む口は止まり半開きになっていた。

次の駅名を告げる車内アナウンスを聞いて五美斗はまたガムを噛み始めた。
電車が止まりドアが開いた。
誰も乗って来ない。
やがてドアが閉まるアナウンスと音楽が駅に響いた。
一番向こうのドアに人影が見えた。
人影はドアが閉まる寸前に乗り込むと五美斗から離れた座席に向かい合うように顔を伏せ静かに座った。
ドアが閉まり電車が動き始めた。
人影はよく見ると女で黒いスーツを着ている。
じっと下を見てうなだれている。
『葬式にでもいくのかいな』と五美斗は思った。
降りる駅が近づき五美斗は座席を立ちドアの近くへ行きガムを吐きだそうとした。
その時するどい視線でこちらをにらんでいる女の顔に気がついた。
その視線は五美斗を震いあがらせた。
冷たい視線だ。生きた人間の視線ではなく妖怪ににらまれているような死んだ冷酷な視線だった。
五美斗はドアが開くと逃げるように地下鉄を後にし地上にでた。
そこでガムをピュと吐き出すといつもの店にむかった。

パチンコ屋で五美斗は負けに負けた。
何かに呪われたかのように負けた。

「今日はついてない」
五美斗はそうつぶやくとバスに乗りアパートへ帰ることにした。

バスを降りた五美斗は踏み切りに向かって歩いていた。
踏み切りにさしかかるとまた電車の来ること知らせる遮断機の音がカンカンカンと鳴り始めた。
五美斗は走りぬけて踏み切りを渡りアパートに帰りついた。
アルバイトに行くまでにはまだ時間があった。
疲れた五美斗はいつのまにか寝むりについてしまっていた。

つづく



#日記広場:自作小説

アバター
2009/06/05 22:29
藍姫さんありがとう
ひめさんこわがりですね。
ひとりでトイレに行けないときはご連絡を
アバター
2009/06/05 22:11
徐々に何かが狂い始めたんですね。
無縁仏っぽい石、掃除のおばちゃん、黒いスーツの女性。
日常にもありそうなのモノばかりなのに、なぜか怖いです^^



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