Nicotto Town



さあ、歴史を変えよう(読み切り)

「なあ、聞いてくれよ!!」
久しぶりに会った君が笑顔を向けながら走ってくる。
俺は彼女に笑顔を向けると返事をする。

「なーに?なんか嬉しいことでもあったの?」


「やっとタイムマシンを発明したんだ!!これで宇宙の始まりを見ることが出来るんだぞ!!」
と腰に手を当てて彼女は自慢げに胸を張った。

「ふーん、別に宇宙の始まりなんて見たって面白くないよ、なんで皆そんなに知りたがるのかなあ?」
困ったように笑う俺を彼女は不機嫌そうに見る。

「それはお前が神だからだろう。私達は人間だ。好奇心というものがあるのだ。」

そういうと彼女はこれを見てくれ、と言い俺に資料の束を手渡す。
そうやらタイムマシンの理論と設計図を見てもらいたいらしい。

「むー、あってるっちゃあってるけど、これじゃあ過去にしかいけないよ?」
俺は資料をパラパラとめくり資料に目を通す。

「わかってるさ。未来よりも私は過去に行きたいのだ。例え戻ってこれなくとも。」
彼女は少しさびしそうに笑った。
そう、過去にしかいけないということは、未来に戻れないということと同意義なのだ。

「まったく理解できないよ。せっかくの人生すべてを無駄にするつもり?」
まだ30代半ばであろう君にはたくさんの人生が残っているだろうに。




そうして彼女は怖気付いたたくさんの科学者達を後目に一人で過去へと飛び立っていった。
彼女は未来に戻る事は出来ない。
必然的に過去への渡航が成功したのか、失敗したのかは分からない。
だから彼女はなにか印を残すといった。
成功したら名古屋城の上に金メッキで塗装した魚をおいてくるのだと。
だから、見ていてくれと、歴史が変わる瞬間を神であるお前なら見れるだろうと。

現在、名古屋城には金のしゃちほこと呼ばれる魚のような物体が置いてある。
昔神話を研究していた彼女らしい、なかなかへんてこな姿だった。
龍ともつかず、魚ともつかない、不思議な姿だった。


今、道行く人間に、アレはなんだ。と聞くと、彼らは決まってこう答える。

「あれはしゃちほこだよ。ずっとずっと昔からあったんだ。」


彼女の存在を示す印はもうない。


_________
あとがき、
彼女はなにか印を残したんだけど、
その印は昔からあるものだと錯覚される。
歴史はたとえ変わっても、まるで変わっていないかのように平然とした顔で流れ続けるんだろうなって妄想。




Copyright © 2025 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.