Nicotto Town


濃すぎる毒入り日記


それ気を付けようね

前回の「それウソですから」の続編になります。

3.11以前にも、心に引っかかることがあったのだけど、3.11を経て、結構見聞きしちゃう言葉に「ひ は また のぼる」ってのがあります。
「必ず、東北も元気になりますよ。ひ は また のぼるですからね、僕らも、東北の皆さんもがんばりましょうよ!」とか「円高デフレに電力料金と逆風ばかりの経済だけど、ひ は また のぼりますよ。日本は日の本の国ですから」なんて感じでしょうか。

そう、今回は「ひ は また のぼる」がテーマです。で、なんで、平仮名表記なんだ?と、実はここがポイントです。

正しく表記すると「日はまた昇る」です。で、これは、固有名詞でしょう。20世紀の米国また世界の文学を代表する作家の一人、アーネスト・ヘミングウェイが名を上げた長編小説」の(日本語の)題名ですから。
それがどうしたんだよ、そんくらい知ってるよという方が、おそらく、↑のように「誤用」しちゃう方なんだと思います。実は、この小説でいう「日はまた昇る」とは、↑のような前向きな意味ではなく、その正反対に近いモノがあるのです。

第一次世界大戦(1914~18年)を経て、実際に自身あるいは友人が戦争を経験し、あるいは命のやりとりをした当時の米国の若者は、すんごく醒めてしまったり、厭世的になったり、悩んじゃいました。こうした彼らを纏めた表現が「失われた世代」と訳されてたけど、近年「ロス・ジェネ」と言われるLost Generationの元祖です。
そして、そのロス・ジェネど真ん中のヘミングウェイなど、WWI後の20年代をパリでボンヤリと悩み過ごした米国人文学者などをまた「ロス・ジェネ」と言います。

で、そんな中で書かれた「日はまた昇る」でいう"The Sun Also Rises"の意味するところは、「けっ、また、明日の日が昇る。でも、オレの人生には何の変わり映えもねぇんだよ」って意味なわけです。
なんてことは、文庫の解説読んで初めて分かるくらいに、ボンヤリとしか同作を理解できなかった僕であり、「ロスジェネって、悩むってことだよなぁ」とか適当言ってました。

というわけで、「ひ は また のぼる」がヘミングウェイの引用なのに、その本の意味と正反対ということは分かっていたのです。で、その違和感がオイオイ!になったのは、今から10年前の「プロジェクトX」ブームの中でビデオ開発戦争をテーマにした映画が作られ、そのタイトルが「陽はまた昇る」だったのです。
オイオイ!というか、なるほど!ですね。「日」ではなく、「陽」なんだよと、あっちの固有名詞とは字が違うんで、意味も違って当然ですってことだなと。
実際、Rising Sunってのは、日本自体を意味する場合もあるわけで、そこには聖徳太子以来の「日出づるところの国」って気持ちがあるわけなんですよ。

ということで、同題名の別のテレビドラマの主題歌であり、そして、昨年の紅白でも震災被災者へのエール的に歌われたEXILEの「Rising Sun」でも「明けない夜はない」「決してあきらめないと誓う」といった歌詞だけど、「陽はまたのぼって」としちゃえば、OKという真ルールを日本全国に徹底させてました。

だから何なんだ?と問われると困るわけですが、言葉の誤用に殊更ウルサイ最近の日本ですが、この「ひ は また のぼる」の2つの用法については、wikiで本来の意味が日本では異なる意味で使われることへの言及がある以外には、ほとんどネットでも聞かれません。
何で何だといえば、「日はまた昇る」を読んで、その意味を分かっている人が少なく、かつ、その中で「陽はまた昇る」の存在に気付いて、その違いを考えるなんてヒマなことは、みんなしないよねということなのでしょう。

というか、「陽はまた昇る」と言っている人で、ヘミングウェイを意識している人がどれだけいるんだろう?というのも、はなはだ疑わしい。
というのが、松田優作をリアルタイムで知らず、その息子達を語る世代に自分が当たると昨日気付いた私の思いです。

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2012/03/18 19:09
>復興をふっきょうと読んでしまうアナウンサーとか。。。
>かなり残念な状況の昨今ではありますがね。

へぇ、そんなアナウンサーがいるのですか。

ただ、僕は単純な読み間違えとか、別にどうでもいいんですよ。
僕も、佐藤健が読めませんでしたしねw

マザーグースや聖書の話ってのも、ネット以前には、知っている人が知っていればよくて、知らないことは何も恥ずかしくなかった。なんで、宗教も文化も違う地球の裏の話を知る必要があるんだって話ですよw
逆に、だからこそ、分かりもしない宗教画で分かったようなウンチクも垂れなかった。

知識ってのは、育ちや教養に根ざしてこそ、生きるものですから。

ネットで拾った知識ってのは、根なし草(値なし草か)でしかなく、そこでもっともらしくマザーグースが引用されるより、自分が読み聞かされ育った昔話をキチンと語り継ぐことの方が尊ばれるようになって欲しいものですね。

そんなこと言うなら、こんなブログ書くなって話もあるかもしれませんがw
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2012/03/17 23:29
そうなんですね。単に言葉としての意味だけでなく、
何かの引用であるのかもしれない。ということですね。
それによって意味合いが違ってしまう事もあるのかもと。

外国の物語のなかに、マザーグースだの、聖書の引用やら比喩やらが見え隠れするものを読むとき、
キリスト教や色々な古典を学んでから読むほうが、深くまで理解できるのにな。と、
残念な想いになるのと根っこは似ているのかしらね。

復興をふっきょうと読んでしまうアナウンサーとか。。。
かなり残念な状況の昨今ではありますがね。



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