ティータイム♪満月の夜
- カテゴリ:自作小説
- 2012/03/19 00:17:04
満月の夜は特別―――――
「水筒にお茶入れたでしょ、バスケットにお菓子とサンドウィッチも入れた!!それからそれから・・・・」
あっちこっちと、パタパタと忙しそうに動き回る翠を、瑞と賢が微笑ましそうに眺めている。
「一生懸命で可愛いですね。」
「まぁ、翠はいつも可愛いけどね~・・・クヒヒヒヒッ・・・」
「・・・・何故でしょう、アナタが言うと変態っぽく聞こえます。」
「え~・・・ヒドイな~・・・・」
しばらく、忙しそうにしていたが、準備が整ったのか、翠は満足そうに笑って頷くと、トテトテとある人物のもとへと近づき、その人の服を後ろから思いっきり引っ張った。
「うおっ!!」
熱心にアクセサリーを磨いていたその人は、突然の事に驚いて後ろを振り向く。
「へへ、ビックリした!?」
「お前な・・・・」
「ねぇねぇ、蒼、お月見行こうよ!!今日は満月だよ!!」
「お~、そっか。いいぜ!」
翠が声をかけたその人、もとい蒼は、磨いていたシルバーの指輪を薬指にはめると、翠の頭をクシャりと撫でる。
「やったぁ!!じゃぁ、行こう!!もう、お茶とお菓子は用意してあるんだよ!!」
「おっ、準備万端だな!と、いいたいとこだけど、下に引くシート忘れてるぞ。後、膝掛けな。」
「あ~、それは蒼が用意してくれると思って・・・」
「ウソつけ。」
クスリと笑い、翠の額をグリグリすると、2人分の膝掛けとシートを持って蒼は窓の方へ向う。その後を、水筒を肩にかけ、バスケットを持った翠が付いていく。
「じゃぁ、俺らちょっと行ってくるわ。」
「多分、1時間くらいで戻ると思うから。」
「留守番よろしくな。」
「いってきま~す!!」
賢と瑞にそう告げると、2人は颯爽と窓から出て行った。
「いってらっしゃい。気をつけるんですよ。」
「クヒヒッ・・・お土産よろしくね~」
そんな2人を、賢は優しく見送り、瑞は軽くムチャぶりをする。2人が出ていって静かになった室内に、窓から涼しげな風が吹いてくる。
「行ってしまいましたね。しかし、彼らは一体いつになったら扉の方から出入りするのでしょうか・・・・」
「クヒヒッ・・・多分一生無理なんじゃないかと我は思うね~・・・」
「そして、開けた窓は閉めて下さいと毎回言っているのに、どうしていつも開けっ放しで行くのでしょうか・・・・」
「もう、そのへんは諦めたほうがいいかもね~・・・クヒヒヒッ・・・」
開けっ放しの窓を閉めながら、困ったように呟く賢に楽しそうに瑞が応える。そんな瑞の方に向くと賢がふわりと微笑む。
「私たちもお月見しましょうか?」
「・・・・・へ?」
「そんなに驚かなくても・・・」
「や~・・・ちょっと予想外だったから~・・・」
「たまにはいいじゃないですか。2人でお月見。」
「いや、まぁ、悪くはないケドね~・・・」
積極的な賢の誘いに、瑞は少し戸惑ったように笑うと、長い指で、ポリポリと頬をかく。
「まぁ、お月見といっても、彼らのように出掛けはせず、ここで窓に映る月を見る程度ですが。」
「あぁ・・・なんだ、そういうことね~・・・」
「出掛けたかったですか?」
「ん~・・・・まぁ、それはそれで楽しそうだけどね~・・・どちらでもいいかな~・・・我としては。」
「何か、そう言われると寂しいですね・・・」
賢は、瑞の言葉に残念そうな表情をしながら、ポットに茶葉を入れる。そんな賢の様子に、フッと笑うと、瑞は賢の側に近寄り、耳元に唇を寄せるとそっと囁く。
「主の入れたお茶とお菓子が食せるならどこだっていいのさ。我はね。」
クヒヒヒッとお得意の笑い声を上げると、そっと賢から離れてもと座っていた椅子に腰掛ける。
「・・・・・バカですか///」
小声でそう呟くと、わずかに、頬を染め、紅茶を入れる手を早める。そんな賢の様子に満足気に微笑むと、瑞は窓に映る月に視線を送る。
「あぁ、本当に、綺麗な満月だね~・・・・」
今宵は満月。美しく輝く月の下、ロマンチックなお月見、しませんか?