Nicotto Town


ヒロックのニコタ生活


バイクのリアシートの彼女の心音

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バイクのリアシートの彼女の心音 

「ねぇー!、聞こえるーー!!」

彼女は、バイクの後ろから、必要以上に大きな声で、話しかけた。

「聞こえないーーー!!!」

僕は、もっと、大きな声で、答えた。

「聞こえてるんでしょう。」 

彼女は、ヘルメットで、軽く、後ろから、頭突きした。


彼女は、会社の、一年先輩の同僚。だけど、中途入社の僕の方が、2つ年上だけど。

彼女に転勤の辞令が出て、移動の前日、バイクで、飛行場近くの、

ホテルまで送ってほしいって、彼女から、頼まれたわけで・・・・・・。


いつも、二人乗りするときは、僕の背中と彼女の胸の間にバックを入れて

密着しないようにしてるのに、今日は、なぜか、二人の間にバックがなくて

彼女がしゃべるたび、背中を通して、彼女の声が胸で響いているのが、

不思議な感じがした。


「ねぇ~。背中に文字を書くから、当ててみて~」と、彼女。

いつも、よくある、小学生レベルの、お遊びだ。

僕は、適当に「檸檬」とか「憂鬱」とか、わざとふざけて、難しい漢字を言ってみたりした。

「ねぇ~。当てる気ないでしょう?」彼女は「バカ」と、僕の背中に書いた。

「ねぇ~。今、何て、書いた~?」と、彼女。

「りこう」と、僕。

彼女は、バカ、バカ、バカと背中に書きなぐった。

本当、小学生レベル。


正直、言って、僕は彼女が、少し疎ましかった。

一年、先輩だからって、仕事上、口うるさく、僕になんやかんやと、難癖をつけてきた。

年下の癖に。生意気なんだよ。いつも、ぼくは、心の中で、つぶやいた。

僕が、寝坊して、一時間、遅刻した時なんか、だまって、席につこうとすると

「ちょっと、○○くん、遅刻したら、まずは、みんなに、謝らないと!」って、大きな、声で・・・。

今、遅刻してスミマセンでした。って言おうとしてたのに。

だいたい、君付けで、僕を呼ぶのは、やめてくれって、あれほど、言ってるのに。


バイクと、僕と、彼女は、まるで、一体化したひとつのマシーンとなって、

車体を、右へ大きく、傾け、右へ大きくカーブを曲がった。風が、心地よかった。


「ねぇ~、あたし、好きな人いるんだ。当ててみて~」と、また、彼女から、

いつもの、お遊びのお誘い。

僕は、木村たくやとか、ミスチルの桜井とか、思い続く限りの芸能人の名前を言った。

「あのさぁ~。あたしさぁ~。もう、三十路だよ。いくらなんでも、

ちゃんと、好きな人くらいいるよ。」

「じゃ~~、ヒント出すね。」  「・・・・・・。会社の人・・・・。」と、

彼女は、ちょっと、躊躇して、言った。

僕は、片っ端から、名前を挙げていった。

彼女は、そのつど、あの人、いい人だけどね~とか、あのひと、奥さんいるよとか、

タイプじゃないとか、将来、絶対、禿げるとか、いちいち、注釈をつけて、解説した。

僕は、「もう、いないよ。もう、降参。」と言ったとたん、あることに、気が付いた。

僕の名前が出てないことに。僕は動揺して、口をつぐんでしまった。

「あの・・・・。」僕は、そのあとが、続けられなくなった。

声が少し、引きつっていたかもしれない。

僕の、心の動揺を、察知したかのように、彼女も、黙りこくったままだった。

周りの、街並みの音までがまったく消えて、無音になってしまい、

僕と彼女の、心臓の音だけが、ドクッ、ドクッと聞こえてきた。

やがて、僕の心臓の音と、彼女の心臓の音が、共鳴を起こし、

同時に、鼓動を打ち始めた。

彼女は、僕と彼女の心臓同士を、もっと、近づけるかのように、

僕の腰に回してる両腕に力をこめた。


やがて、ホテルに着くと、彼女は、バイクから降りて、ちょっと、よろけて、

「おっと」とか言いながら、少し笑った。

「向こうで、落ち着いたら、手紙書くね。」「じゃ~~ね。」と言って、

腰の辺りで、小さく手を振って、ホテルの方に、歩いていった。

僕は彼女を、見つめた。僕は、黙っていた。彼女はまだ、気づいていない。

彼女は、ホテルの入り口で、僕の方を見て、また、小さく、手を振り続けて、

僕を見つめている。

僕も見つめている。

僕たちの間を、何人もの、通行人が、通り過ぎて行った。

僕たちとは、まったく、無関係な人たち・・・・・。

彼女は、まだ、気づいてない。無邪気に、手を振っている。

ヘルメットをかぶったままでいることに。

しかも、フルフェイス。


数日が、経って、会社宛に彼女から、手紙が届いた。

なんとか、仕事にも慣れ、元気でやってる、云々ということだった。

僕宛に、手紙を書くってことじゃ、なかった。

それから、もっと、驚いたことに、近々、結婚することも、書いてあった。

将来、禿げる人と・・・・・・・・・。

好きな人も、僕じゃなかった。

僕は、自嘲気味に、少し、笑った。

                         おわり

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2014/03/06 17:29
はじめまして タウンでお見かけしてやってまいりました。
最初ブログの方へ飛んでみて“水面の煌き”読ませていただいて衝撃を受けました。
小説だったー!!
ニコタで小説読めるなんて嬉しいです。
この“バイクの~”もドキドキしながら読ませていただきました。最後そうきたかーと叫んでしまいました。
彼女ヘルメット持ったままでその後どうしたんでしょう?返すに返せなかったのかも?
思い出として手元に残しておくのもアリかなと思いました。

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2012/04/04 22:55
kannoさん こんばんは

ちょっと、甘酸っぱい恋愛未満の青春物語です。
同僚であり、友達であり、異性でもある関係は、
お互い、好感を抱いていたとしても、
それは、男女間の愛と、どう違うのか、
本人同士も、迷いながら、勘違いしながら、
どうしていいのか、わからなくなっていたのです。

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2012/04/04 22:22
久々にちょっとドキドキする甘くてせつないお話^^
こういうのも好きですね!^^
リアルにそうそうなんて相槌打ったのは私だけ?
僕にとってハッピーエンドじゃなかったけれど、ちょっともしかしてってカンジがすごくいい☆
ありがとう^^
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2012/04/04 21:54
ひろりんさん こんばんは

天然キャラのかわいらしい「彼女」を書いてみました。
自作の作品ですが、どうやって考えたかは秘密です。
そうですね。昭和の時代でした。
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2012/04/04 21:34
これ、どうやって考えたのですか???
ヒロックさんが考えたのですか?
すごいオチだけど…。
なんか、昭和のドラマな感じがいい感じですね…(^_^;)
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2012/04/03 23:38
まくらさん こんばんは

少し解説すると、彼女は、同僚の将来禿げる男性からプロポーズを受けていたのです。
でも、僕とは、大勢の中で、うまく話せても、二人きりになるとぎこちなく、
男女の関係にならないことも、わかっていました。
後ろから、強く抱きしめたとき、心の中で、さようならを言ったのでした。
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2012/04/03 23:32
茉莉華ちゃん こんばんは

このお話の中で、少しでもハッピーなところがあるとすれば、
彼女が、後ろから、僕を、強く、無言で抱きしめた数十分だけかもしれません。
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2012/04/03 21:59
そういうオチですか~。
お話の中とはいえ、世の中は厳しいですね(><)
ジョージアのCMであるように、私が単純なだけかもしれませんが

そして、吉野千本桜が絶景Σ(・。・)
レベルが高くて話とつながりがあるのかどうか私にはわかりません(><)
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2012/04/03 17:06
こういう落ちかwww
よかった(*⌒∇⌒*)テヘ♪
ハッピーエンドだw
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2012/04/02 21:17
吉野山なんですが、山に見えるでしょうか。

あさみさんの、予想は、ハッピーエンドでしたか?
だとしたら、少し残念な結果に感じましたね。
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2012/04/01 21:38
これだけ 集められたら すごいです。

話の結末は、 私の予想と 違っていました。
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2012/04/01 08:12
わすれねさん おはよう

昨日は、春の嵐でした。
でも、桜の開花宣言がありました。
週末には、埼玉でも満開になるそうです。

桜テーブルもっともっと集めて
画面を桜で埋め尽くしたかったのですが
これだけしか、集められなくて、ちょっとがっかりです。
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2012/03/31 23:17
うっわー、一体何本植えたんですか〜!wwwwwwww>モモゾーさん

てか、桜テーブルもそんなに釣れちゃって羨ましすぎる(;_;)
私なんて、期間中毎日頑張ってもやっと3つだけだったのに(>_<)
神様はえこひいきだ〜!



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