4月自作/ai「ちゃんちゃらai」 下
- カテゴリ:自作小説
- 2012/04/22 01:01:22
地すべりによって村を流れる川を堰き止めた土砂は谷を埋め、それによってダムのように川に泥水が溜まって、土砂と水の混じった濁流が山津波となって今にも村を襲いそうになっていました。
もしもこの大量の土石流が村を襲えば村は全滅してしまうかもしれません。
降りしきる豪雨に土砂ダムは今にも決壊するのか、小石がころころとひっきりなしにダムの斜面を転げ落ちていました。
一ヶ所で少しでも流れ出せばそこに溜まっていた泥水の流がそこに集中し、その濁流の通り道は徐所に大きくなって一気に全体の決壊へと繋がっていくのです。
これはどの社会でも起こる現象で、社会のひずみはまず弱いところに集中し、そこが壊れると一気にすべてが壊れていくのと同じでした。
「なんでこんなに雨が降り続くのかな?」
三代は村の危機も知らずに加代との時間を楽しんでいましたが、加代はその態度を徐々に変貌さしていきました。
「怒れ、もっと怒れ」
「雨が降り続くのは誰かの怒りなんだ」
加代の言葉に三代は軽い気持ちでそう答えてしまいました。
「あははは。バカ人間どもめ」
三代はここで加代の様子が変なことに初めて気がつきました。
「かよさんどうしたの?」
三代は心配になって加代にそう尋ねました。
「お前はまだ気がつかないのか?自分が何をしているのか」
三代は加代の言葉の意味をすぐに理解できませんでした。
「かよさん、何言って怒ってるの?」
「怒ってる。誰が怒ってるのだ。お前は自分の村が土石流に襲われて壊滅するのを知らないのか。私はそれを待ち望んでいたのだ。その夢が今叶おうとしてるのに、何故、怒らなければならない。私はバカな人間どもが滅びゆくのを祝っているのだ」
三代は加代のこの言葉に全身の血が引ける思いをしました。
「おらの村を土石流が襲うのか」
「そのとうりだ。お前が神岩を怒らせ村に祟りを導いたのだ。祟りじゃ、神岩さまのたたりじゃ」
三代は岩穴を飛び出すと川の見える所まで走って行きました。
降り頻る雨に視界は良くありませんが、尾根の下の谷に尾根の崩れた部分が茶色く抉れて見え、その下に倒れた木と岩と土砂が谷を流れる川を堰き止め、満杯の泥水がその谷を満たしているのが雨に霞んで見えました。
「あぁ、なんてことだ」
全身の力が抜けた三代はその場にへなへなと座り込み、額を雨で泥になった地面に擦り付けました。
再び顔を上げた三代の目に土砂崩れダムの中央から濁流が流れだしてるいる光景が入りました。
三代の顔に打ち付ける雨が額の泥を流しながら口に入りました。
目から涙が出ているのですが、降り頻る雨で分りません。
やがて中央の濁流は土砂崩れダムの崩壊と共に途轍もない量の土石流となって、下流の木々をなぎ倒しながら悪魔のような茶色の山津波となって谷を猛スピードで流れ下っていきました。
「おぉぉぉ」
三代は天に向って叫びましたが、落ちてくる雨に打ち消され、くちゃくちゃになった顔と開けた口は雨に打ち続けられました。
「あの女、殺してやる!」
雨の中、呆然と座っていた三代が急にそうわめきました。
そして立ち上がった三代は憎しみに満ちていました。
「お前を殺しておらも死ぬ」
岩穴に戻った三代が加代にそう言いました。
「私の役目はもう終わった。愛した男に殺されるのなら本望だ」
加代はそう答えました。
「愛した男?この化け物め。おらを愛していたというのか」
「そうだ。お前を愛しているからこそ、こうやって毎日会いに来て抱かれたのだ」
「よくもぬけぬけとそんなことを言えるな。おらの大事な物をお前は奪ってしまったのだぞ。お前の愛は大事な物を奪うことか。死ぬような苦しみを与えることなのか」
「そうだ。愛とは大事な物を奪い合い、その苦しみを分かち合うことなのだ。そしてその苦しみに耐えることができなくなったとき二人で死を選ぶのだ。二人で死を選ぶことができるのが最高の愛なのだ」
加代の言葉に三代は戸惑いを感じてしまいました。
『この女、おらに殺されることを望んでいる。今、女を殺せばまた女の思う壷になってしまう。おらと同じ苦しみをこの女に与えたい』
心の中で三代はそう考え直しました。
「おらはお前が死ぬほど憎い。おらと同じ苦しみをお前も味わえ」
「あはは。私には古里もない。愛する者もお前以外にいない。お前と同じ苦しみなど、もうどこにも無いのだ。早く殺さぬか」
「それなら、おらが死んでやる」
三代はそう言って岩穴を飛び出すと、尾根の崖から深い谷に飛び降りたのでした。

























悪女の深情けなんて、言いますが、この愛は受け止めるのが
重た過ぎる気がします。
反目の愛「ジュリエットタイプ」というところでしょうか
しかし愛は全体として穏やかな方向にむかうような気がします
「物語」としては癒し系になります
方向性が違うだけで、同じ感情なのかも……
最後まで謎のままなのでしょうか><
三代が谷に飛び降りてしまった後、加代はどうなったのか…
色々気になりますーーー
>「愛」の言葉が似合わない男——、岩守三代、、
三代は女の愛を拒むために死んだのか、死の選択で女の言う愛を分かち合ったのか、、
いずれにしても愛の言葉が似合わない三代にとっては、究極の決断でしたね。深い、、
でも、女の胎のなかにすでに四代が息づいてる感じがしました。
大事な物を奪い合い、失った苦しみを分かち合うなんて…
衝撃的な愛の形。
だけど、あると思います。