Nicotto Town


ま、お茶でもどうぞ


ペルソナ4について語る3

人は誰しも、多かれ少なかれ先入観と期待をこめて物事を見る。
そして、自分の持っていた期待と対象が食い違った時失望し、たとえばネットレビューなんかで散々叩き、同意見を得て溜飲を下げようとする。

けれど、ある程度冷静に、かつ多角的に対象を眺めた時、すんなり理解できてしまうことがある。

ペルソナ4は「日常」を楽しむゲームなのである。
RPGの華である戦闘は、二の次と言っても過言ではない。

プレイヤーの分身である少年を通して、我々は与えられた空間の中で、ほぼ思い通りに高校生活を満喫できる。
主人公は背が高くハンサムで眼鏡をかけると印象が変わり、都会育ちで、黙っていても女の子によくもてる。
スポーツ万能でテストはつねに首席、未経験なのにトランペットを吹きこなし、料理が上手で妹思いで友情に厚く、家族や仲間を大事にする。
時々はっちゃけた行動をしても許され、むしろ好かれたりする。
もちろん、選ばれし特別な存在なので、戦闘能力も仲間よりずば抜けている。

もう非の打ちどころがない。誰もが一度は夢見る、完璧で理想的な人間の姿だ。
なりたいと思ってもなれない、もう一人の自分がそこにいる。

ペルソナシリーズは、主人公が美少年と決まっているのだが(2罰だけは美女)、まったく無個性を貫き通したのは初代の主人公だけで、あとは大体がバックボーンを添えられていた。キャラの属性が固定化されていたのだ。

しかし4の主人公だけは、歴代と違って、「おおまかな背景は予想できるが、あとはプレイヤーの想像に任せる」作り方となっており、分身として、より感情移入しやすくなっている。
こんな完璧人間いねーよ、と思わせないのだ。
これこそ自分と感じられる。時々プレイヤーの意志に反して動いたりするけれど(例えば手品とか)、その意外性も「自分だ」と思わせ、ゲームの世界に溶け込める。

だから4は、こんなに広く受け入れられたんじゃないだろうか。
誰だって「こんな自分」になりたい、そんな夢をかなえてくれたのだから。

そして、「日常」を過ごす上でかかせないのが、コミュの存在だ。
キャラクターと語りあい、絆を深めて行く中で、相手の意外な一面を知ったりして、「こういう奴だったのか」と理解をする。これが面白い。
各キャラのストーリーが本編以上に秀逸で、何かと考えさせられたり、気づかせられるところも多かった。
(個人的に感銘したのは、塔と節制、魔術師、正義と法王)

主人公は、彼らに対してなんら大げさなアクションをすることはない。
普段自分達がするように、ただ話を聞いたり、食事につきあったりして過ごすだけが多い。
秀逸だと思ったのは、彼らが自分から大切な何かに気づいて、それぞれ人間的成長をしていくことだ。
誰かに言われて、その「命令」に従って自分を変えるのではなく、主人公との何気ないやり取りの中で、自分で気づいて、見つけた道に進んでいく。その姿が美しかった。
ここでは、お互いが助け、助けられるという明快な上下関係はない。
年齢性別問わずに彼らの関係は対等だった。だからストーリーがわかりやすく、共感できた。

事件の真犯人である彼の人気が高いのも、ユーザーの多くが彼と同じ気持ちを抱いているからだろう。
このゲームには、自分があり、みんながいる。もうひとつの日常がそこに存在している。

そして2周目、3周目とプレイしていくうちに、だんだんと自分なりの生活スタイルができてくる。
攻略情報に基づいて、その通りにスケジュールを組むのも良いが、「今日は部活」「今日は弁当作ろう」などと、自由に選べるのが良い。
そうやってのんびりコミュ全制覇を目指しながら遊んでいると、まあ全部じゃないけど、キャラ同士の長いフルボイスシーンも楽しいのだ。
(しかし長すぎてくどい件は、海外の同人マンガ動画にもあったが、ポップコーン推奨。間が持たないほど退屈)

展開に起伏が欠けると感じた全体の流れも、見方を変えれば「これでいいのだ」と思えてくる。
4では、前作のように、各キャラが重すぎる過去を持っていない。
だから、事件を起こすきっかけとなる彼らの闇の部分を見ても「たいしたことないじゃん」
と感じた人も少なからずいるであろう。

けれど考えてみてほしい。
他人から見てたいしたことがない悩みでも、本人にとっては死にたくなるほどつらい問題なんだってことを。

彼らが叫ぶのは、誰もが持つ普遍的な悩みだ。

環境になじめず、周囲とわかりあえないつらさ。
友達と自分を比較してコンプレックスに陥ること。
自分で行動せず、檻にこもって他人任せに救いを求めること。
他人と自分の違いに悩み、自分を型にはめて納得しようとすること。
ありのままの自分を見てもらえない苦悩。
自分の存在意義に疑問を感じること。
居場所が見つからず、利用されているだけかと疑心暗鬼になること。

これを些細と決めつけるのは、傲慢であろうよ。



つづく




月別アーカイブ

2023

2022

2021

2020

2019

2018

2017

2016

2015

2014

2013

2012

2011

2010


Copyright © 2025 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.