ペルソナ4について語る4(終)
- カテゴリ:ゲーム
- 2012/04/26 15:06:14
ゲーム開始時に、いささか長い冒頭部に違和感を感じつつ、ふと「あ、これ良いかも」と感じた瞬間がある。
それは、主人公が下宿先の堂島家に着いた時だ。
昔ながらの2階建ての家屋で、片付いているがきれいとはいえず、父子家庭なので、やや薄暗い感じもする。
あてがわれた主人公の部屋も、どこか雑然とした家具の配置で、妙に生活感があふれている。
探せば、どこかに同じような家がありそうな。そんな雰囲気だ。
主人公が通う公立高校や、彼らが集まるショッピングモール(ジャスコがモデルらしい)など、地方に暮らす者なら誰もが見覚えのある風景が広がっている。
このゲームでは、そのショッピングモールは「ジュネス」というが、このジュネス進出によって地元の商店街がさびれていく様子など、人ごとではないリアリティも孕んでいる。
少し住宅街を離れれば、田んぼと山が広がる田舎の原風景。
初夏、耳をすませば遠くでカエルが合唱し、夏の暮れにはヒグラシが鳴き、秋はもちろん虫の声。
雨の日、トタン屋根をたたく雨粒の音とか、細かなところも凝っている。
どこかで見た風景、これから見るかもしれない田舎。ちゃんと計算して作ったそうで、だからこそ「俺らの街」と、数多くの地方住民が感じて、親しみを覚えたに違いない。
人間関係もはずせない。
今回も例にもれず、登場する女子キャラとは恋人関係になれるのだが、ハーレム願望もなく、友達はともかく、恋人は勘弁してほしい女子が多数だった。
味見していない料理を、おいしいから食べて、というのはどうかと思うんだ。
仕方なかったとはいえ、クマの洋服代を俺の相棒にツケで払わせるのもどうかと思う。
まあ、本人達は、後半自分のそういったずるさを認めているから、まだ許せるけどもさ。
昔の自分なら、そんなキャラはパーティに入れるのも嫌だったが、今は寛容さ菩薩級ぐらいには成長したので、彼女たちの欠点も、個性として認められるようになっている。
それに、きれいごとだけが人間じゃない。暗い部分、見たくない欠点は、誰にもある。
取りつくろうのではなく、むしろさらけることでお互いに甘え、それでも離れることなくつきあっていけるのは、本当の友情、仲間というものじゃないだろうか。
幸い、今回は無理して恋人にならなくても、友人関係でコミュ最高値にできるので、思う存分彼女たちの告白を無下にすることができた。
罪悪感があると言って、全員恋人にしないと気が済まない人も多いようだが、フることもまた快感である、とあえてここで言っておく。
それから、奈々子のこと。
主人公の叔父は忙しい刑事で、その妻は事故で他界している。家にいるのは、主人公の10歳離れた幼い従妹、奈々子しかいない。
この子はいつも、父親が不在がちで、母がいない寂しさを、じっと我慢の子で耐えている。「奈々子平気だよ」は、寂しい時の彼女の口癖だ。
彼女とは初面識なので、暮らし始めた当初は、お互いどこかぎこちない。
しかし、ゴールデンウィーク中に、主人公の仲間達と出会ったことがきっかけで、奈々子は主人公を「お兄ちゃん」と呼ぶようになる。
ここからが、主人公が暮らす家の居心地がよくなる瞬間だ。
前作の3では、学生寮が主人公の帰る場所だったが、今作は「我が家」なのである。
家に戻ると、「おかえり、お兄ちゃん」と、可愛い声で言ってくれる。これを聞くと、非常にほっとする。
日常の何気ないあいさつって、あたたかいんだなってはっとする。
意識する、しないにせよ、誰もが彼女の声に安心したはずだ。
奈々子の存在は非常に大きい。少なくとも自分にとっては、心のオアシスであった。
最後のボス戦で、ボスキャラが「世界を霧に飲みこむのは、多くの人間の願望を叶えるためだ」と言った時、「奈々子や堂島達はそんなこと望んでない」と仲間が言う。
街を混乱に陥れた主犯格が言う、「世の中クソだな」も至極もっともなのだが、この言葉を聞いた時、やっぱり守らなければと思うのだ。
自分のことではなく、誰かのために。
このことを本当に理解している人は、この世にどれだけいるだろう?
親のため、子のため、友のため…誰かのためと言いながら、実際は自分のことしか考えていないことってないだろうか。
自分はいつ死んでも良いという諦めはあるけれど、大切な人がそれを望んでいないなら、も少し頑張ってみるべきじゃないか。
主人公が最後の最後で、真のボスに負けそうになる。仲間が犠牲になって庇ってくれるが、それでも力尽きて倒れた時、絆を築いた人達が心に語りかけ、頑張れと励ましてくれる。
力をもらった彼がラスボスに向かって叫んだ言葉は、かつてイザナギ大神がイザナミ大神に言った――死に打ち勝ち、生きるという言だった。
その時、ふっと悟りに触れた気がする。
それが、大昔から世界にあった願いだということを。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm14171241