意地汚いねずみと悪賢い猫とお人よしの犬のお話


むかし、むかし、そのまた、むかし、まだ、人間が、この世に、いなかった頃の、お話です。

あるところに、ねずみと、ネコと、犬が、ひとつの家で仲良く、暮らしていました。

毎日、毎日、３匹は、お互い、助け合いながら、楽しく、共同生活をしていました。


ある年のことですが、秋になると、大寒波が押し寄せて、あっと言う間に、

冬になってしまいました。

外は、雪が降り積もり、川も湖も凍ってしまいました

いつまで待っても、春はやってきそうもありません。

一番の問題は、蓄えていた、食糧が少なくなってきたことです。


あんなに、仲の良かった３匹ですが、食べ物のことで、

よく喧嘩をするようになってしまいました。

ある日のことです。大切に、保管していた食料が、盗み食いされてました。

意地汚いねずみが、夜中に、こっそり、食べていたのです。

これを知ったネコは、怒って、ねずみを追い掛け回しました。

怖くなったねずみは、天井裏に逃げ込み、隠れてしました。


悪賢いネコは、食料を、独り占めするために、人のよい犬に、

外に行って、薪を、取ってくるように頼みました。

人のよい犬は、騙されてるのも気づかずに、ドアを開け、

凍てついた外に、出て行きました。

人のよい犬が、外に出たとたん、悪賢いネコは、ドアを閉めて、

内側から、鍵をかけてしまいました。

やっと騙されたと気づいた犬は、悪賢いネコに向かって、怒って、

窓の外から、吠え掛かりました。

悪賢いネコは、犬の声がまるで聞こえていないかのように、

しらんぷりして、ニヤッと笑いました。

そして、暖炉の前で、大きなあくびをして、まるくなって、寝てしまいました。


このとき以来、意地汚いねずみは、天井裏に隠れて、

夜中に、こっそり、食べ物を、盗み食いする暮らしになりました。

一方、悪賢いネコは、暖かい家の中で、他人の声は、聞こえないそぶりで、

寝たふりをしています。

でも、たまに、盗み食いした、意地汚いねずみを見つけると、

今でも怒っていて、追い掛け回します。

悪賢いネコに、まんまと騙された人のよい犬は、

いまでも、雪の原っぱを元気に飛び回っています。

でも、自分を騙したネコが大嫌いで、ネコに出くわすと、

文句を言うため、大声で吠え掛かるのです。



ねずみが天井裏に住んでいるのも、ねこが暖かい部屋で寝てばかりいるのも、

犬が、寒くても元気に外で、走り回っているのも、そして、ネコがねずみを追いかけ、

犬がネコに吠え掛かるのも、こんな出来事が大昔の過去にあったからです。


むかしむかしの、ねずみとネコと犬のお話でした。


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おしまい