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カエル村物語


 カエル村に一人の少女がいた。
父親ガエルが病弱だったために、幼い時から母親の手伝いをして家を助けてきた。
彼女の母親は池で蓮を栽培して、それを売って生計を立てていた。
彼女の名前はゲココ、一人っ子で姉妹はいない。
スタイルはあまり良くないが、可愛くて働き者のゲココは村でも人気のカエルだ。


 ゲココはその日の朝、いつものように蓮を栽培している村の入り口付近にある蓮池に向って歩いていた。
ゲココの家から蓮池まではそう遠くなく、歩いて10分程の距離だ。
この、日の出と共に始まるゲココの蓮栽培生活の一日は、変わることのない日々の繰り返しに思われた。

「地獄使者が来たぞ。地獄使者だぁ~」
ゲココの歩いてる村の入り口へと続く道の向こうから、ある村ガエルがそう叫びながらこちらに向かって駆けて来た。
地獄使者、それは村人にカエル召集令状を手渡す悪魔の伝達人だ。
カエル召集令状を受け取った村ガエルは、強制的にこの村を去らなければならない。
そしてそれは変わることのない日々の打ち切りを意味していた。
「早く家に帰れ。地獄使者が来るぞ」
村ガエルはゲココの前を走りながらそう告げ、村の他のカエル達にそれを知らせるために走り去って行った。
ゲココはこれまでに何度もこの道で地獄使者とすれ違っていたが、彼はゲココの前を気にも留めず通り過ぎて一度も目を合わしたこともなく、黒紙を渡されるなんて考えたこともなかった。
『今日は誰に黒紙を渡すのだろう。渡されたカエルは村から消え、帰らぬカエルになってしまう。なんてひどい話なんだろう』
村から連れ去られたカエル達の気持ちを思って、ゲココは心に痛いものを感じた。
ゲココが蓮池に着き池に降りようとしていると、村の入り口から全身緑の服を着て魔界郵便局の帽子を被り郵便配達のカバンを持った配達人がこちらに向かって歩いて来るのが小さく見えた。
「地獄使者のヒト、変わったのかな」
いつも来る配達人と一見して違いが分かったゲココがそう、呟いた。
いつもの配達人はもっと年のいった中年のやや太った配達人だ。
その痩せた配達人を見てすぐにゲココはその違いにすぐ気がついた。
配達人がこちらに近づくにつれ、配達人の顔まで見極めることができた。
「やっぱり変わった。若いかっこいい兄ちゃんなってる」
ゲココは配達人が地獄使者であることも忘れて、彼に見入ってしまっていた。
「こんちは。ここがカエル村でしょうか?」
ゲココの所まで来た地獄使者がそう、彼女に声を掛けた。
地獄使者に今まで声を掛けられたことのないゲココは慌てふためいた。
「あっ、はい。そうです」
ゲココが恥ずかしそうに少し顔を赤らめそう、返事した。
「そうですか。どうもありがとう」
「いえ、どういたしまして」
ゲココが下を向いてそう返事を返してる間に、地獄使者はもう彼女に背中を向けて村に向って歩いていた。
その後ろ姿をゲココは彼が見えなくなるまで見続けていた。


 一方、カエル村ではカエル達が戸締りをして家に閉じこもり、誰も居ない閑散とした村の光景がそこにあった。
地獄使者は黒紙に書かれた住所を読みながら、ある一件の家の前に行き立ち止まった。
「ゲコゲコさん、お宅の息子さんにカエル招集令状を持ってきました。お渡しするのでここを開けて下さい」
地獄使者は声をあげてそう叫んで入り口の戸を叩いたが、中からはなんの反応も返ってこない。
「中に居るの分かってますよ。時間の無駄です。早くここを開けて下さい」
地獄使者は戸を叩き続けた。

家の中では戸が叩かれる音に怯えながら布団に包まってるカエルの家族がいた。
「おとうさん、何とかしてください」
震えながら母ガエルが父ガエルに小声でそう、言った。
「なんとかしろってたって、どうにもならない。受け取りを拒否したカエルがどうなるか知ってるだろ。本人だけでなく、家族全員が連れて行かれるんだぞ」
「なんで家の可愛い息子に黒紙がくるの。他のカエルのところに来ればいいのに」
母ガエルは泣きながら二人の息子ガエルを抱きそう、言った。
「早く開けて下さい。受け取らないとこの家は滅びてしまいますよ。早く開けて下さい」
外では地獄使者が戸をだんだんと激しく叩き続けている。
「とうちゃん、しかたないよ。受け取ってきてよ」
息子ガエルが我慢できずにそう父親ガエルに訴えた。
「いいのか?もう二度とここに帰ってこられなくなるんだぞ」
父ガエルが息子ガエルに聞いた。
「わかってるよ。でも受け取っても受け取らなくても連れていかれるんだよ。もう諦めようよ」
息子ガエルの言葉に父親ガエルも無駄な抵抗だと気がついたのか、布団からでると玄関に向かった。
「とうちゃん、やめて!」
母親ガエルが止めようと叫ぶが、父ガエルはもう覚悟を決めたのか振り返らず玄関に向かい戸を開けてしまった。
「手間かけさないで下さいよ。息子さんにです。どちらの息子さんにか分りませんが、黒紙をお渡します。逃亡したりしたら、この家の全員をお連れすることになります。それに今までに逃げ切ったカエルは居ませんから、くれぐれもよろしく」
そう言って、地獄使者は父ガエルに黒紙を手渡した。

#日記広場:自作小説

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2012/05/19 14:08
えええええええええ・・・・・・・・・。
家族の中で一匹だけ? 。・゚・(´;д;`(´;д;`)´;д;`)・゚・。
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2012/05/19 12:40
ゲココ、自分の所に来るかもしれないって時に
「かっこいい兄ちゃん」なんて思ってる余裕ないだろうに^^;
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2012/05/19 09:12
カエルごととは知りながら、どうなるのか心配です。
学校の実験室で解剖されちゃうのかなぁ><
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2012/05/19 01:48
あぁ~どうなっていくのかな・・
こんな風習はどこかで断ち切らないといけないね



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