Nicotto Town


壊してしまいたくなるものよ


それでも、きっと。8 M.A


あなたがいるから

私は希望が持てるんだよ。

生きる理由なんて

それで十分。



翔side

何度確認しても
これは間違いなく爽ちゃんの検査結果で
そうわかってるのに
病室から聞こえる楽しそうな声に
足がすくむんだ

「俺はっ…医者じゃないか…!!」

自分に言い聞かせても
扉を開く手に力が入らない

「じゃあ、俺そろそろ帰るよ」
「うん」

雅紀が来るっ!!
別に悪いことしたわけでもないのに
身体が反射的にドアから離れる

「明日また来るから」
「待ってる。バイバイ」

ガララ...

「あっ櫻井先生、また来ます。」
「おぅ。気をつけて帰れよ」

気を引き締めて再びドアに手をかける

「櫻井先生」
「爽ちゃん、検査結果が出たよ」

なるべく普通に
それでも、察しのいい爽ちゃんのことだから
何か、感じとったように
一言‘そうですか‘と言っただけだった。

そのあと保護者さんが来て
別の部屋で爽ちゃんの病気について説明した

秋先さん(爽ちゃんのお母さん)は目に涙をためながら
話を聞いていた


「話、終わったんですか」

病室に戻ると、
爽ちゃんは視線を外に向けたまま話しかけてきた

「話してくださいよ、検査結果」
「…。爽ちゃんは膵臓(すいぞう)癌です。
しかし…」

爽ちゃんが膵臓癌にかかるのはこれで2度目だ。
でも、前と違うのは

「今回の癌はかなり進行していて、
もう、治療するのは難しい状態です。」

そう説明すると、
視線をこちらに向ける

「余命は、あとどのくらいですか?」
「長くて一年」
「そう。」

沈黙が続く
それを打ち破ったのは
秋先さんだった。

「じゃぁお母さんたち入院の手続きしてくるよ。
服はここに置いておくからね」
「うん、ありがとう」

ナースは親御さんと一緒にでて行ってしまって
今は、爽ちゃんと二人

「ねぇ、先生
本当のこと言ってよ」
「嘘はついてないよ」

うん、嘘はついていない。
奇跡が起きれば、もしかしたら…。

「だって、末期なんでしょ
精々もって半年、本当は一ヶ月もないんじゃない」
「そう…だけど。
やっぱり…爽ちゃん、気づいてたんじゃん
どうして早く言わなかったの?」
「…朝、起きたらね。
背中がものすごく痛くて起きられない日があったの。
それだけなら、まだ大丈夫なんだけど、
食欲はなくなってくし、体重は減ってくしで、
あぁ、再発したんだって。」
「…」
「入学式も近かったし、もう治らないんだったら、
ちょっとでも青春したいって思ったの」
「そっか…」
「…病気のこと、まーくんには言ってないよね?」
「うん」
「よかったぁ
まーくん心配症だから、困らせちゃダメだよね」
「っ…」

爽ちゃんは強い。
こんな時でも、泣かないで
心配するのは周りの人のこと。
本当は怖くてしょうがないのに

それに、元はと言えば…俺がっ!!

「先生…!?」
「ごめんっ…早く気づかなくて、
もっと、ちゃんと調べてればっ…もっと…」
「先生は悪くないですよ
もう10年以上も異常がなかったんです」
「でも…」
「それに、ここまでしゃべれるようになったのは
櫻井先生のおかげですよ」

そう言って彼女は笑う。
辛くても笑うんだ。

だから気づかないんだよね。

「爽ちゃん、泣いていいよ。
ショックだよね。」
「え?」
「怖いでしょ?
辛いでしょ?
だったら今日ぐらいはいいんじゃない?」
「さくっ…ら、い…せんせ…」
「ほら。」

今にも壊れそうな
震える体を
優しく抱きしめる。

「ほん、とぉ…は、怖い。
死ぬのが…っ…こわい、のっ
もう、明日は来ないのかな…って…
どうしてもねっ…考えちゃうのっ…」
「うん」
「おかし…よねっ
長くないって…
わかってるのに…覚悟は…っ…
できてるのに…」
「覚悟なんていらないよ
死ぬのが怖くない人なんていないよ。ね?」


爽ちゃんの本音は
かなり深刻で
小さな体じゃ押しつぶされちゃう。
だから今はなんでも言って。
俺にできることは
限られてるからさ。


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月曜日から3日間、修学旅行に行ってきます♫

なのでINはできませんが

帰ってきたらお返しするね!!

ここまで読んでくれてthank you!! ノシ

アバター
2012/05/27 18:32
泣ける!!!



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