モンスターハンター 騎士の証明~3
- カテゴリ:自作小説
- 2012/05/31 23:09:35
【ギルドナイト・3】
ギルドの調査の結果、標的のナルガクルガは、通常見られる個体よりもはるかに強力な『G級』と認定された。そして、これを討伐するハンターを募集した。
G級クラスのモンスターは、ハンターの生命の安全を考慮して、同じくG級のライセンスを持つハンターにしか狩猟を許されない。
しかし、Gの称号をつけられたモンスターの戦闘能力は、小国なら数日で壊滅できるほどの破壊力を持っている。
ゆえに、これに対抗できるハンターの数もそう多くはなく、また、いかにG級ハンターといえども、生きて帰れる保証はない。今回の依頼を引き受けたハンターも、共に戦ってくれる仲間を募っていたのだった。
『ゴリアテの風』は、そういった募集要項を目ざとく見つけ出し、人が集まらず困っているハンターに、仲間として近づいたのだ。
そして、狩猟直前、もしくは狩猟達成後に募集者を殺害し、本人のふりをして直接依頼主のもとへ赴き、依頼主が提示していた報酬よりも多く要求するのである。
もちろん、獲物はギルドの人間に渡る前に、仲間同士で密かに運んでしまう。運ばれた獲物は、裏ルートにより高額で取引される。
密猟の手口は数あれど、殺人まで犯す猟団は、早急に壊滅させる必要があった。
依頼主からの被害報告により、ロックラックのハンターギルドは、所属するギルドナイトである、ボルト達の派遣を決定した。
ギルドナイトは、ハンターズギルドを守り、各地のハンター達を統括する役目を担う、ギルド直属の組織である。
彼らは表向き、ギルドの顔として各国の要人と依頼などの交渉をするほか、緊急を要する強力なモンスターの討伐を行う。
そして裏の顔として、今回の密猟者逮捕のように、ハンターを狩るハンターとして赴くこともある。
G級ハンターのさらに上を行く実力と経験、実績と人格、そして特別の才能がなければ、ナイトにはなれない。ハンターの頂点に達する称号であるが、その厳しい条件ゆえに、世界でも数十人に満たない。
数が少ない上に表立って活躍せず、秘密裏に行動するため、存在すら噂とされている。
「本当なら、ナイトが動くこと自体が大ごとなんだ。その大ごとが、立て続けに起こっているということは、どこかで何かが……」
「……危ない火種が出かかってるってことか」
冷たい茶を注いだゴブレットを豪快にあおりながら、ボルトがつぶやいた。さすがに勤務中では、酒は飲めない。
「……よくないことが起こらなければいいが」
切れ長の目をわずかに伏せて、ブルースは嘆息した。ボルトが何か言おうと、ごついまびさしを動かした時、「やあ」と声がした。
「食事中かい?」
「おっ、ロジャー」
「先輩、お疲れ様です」
傍らに現れた深紅のナイト姿に、ボルトは気さくな笑みを浮かべ、ブルースは堅苦しく居住まいを正す。
「お前、同期なんだから、先輩呼ばわりはやめろよ」
「何を言う。ロジャーさんは、俺よりずっと実力が上で、それに入隊したときも俺より数日早かった。先輩は先輩だろう?」
「じゃあ、なんで俺のことは呼び捨てなのよ」
「ボルトはボルトだろ」
「はあ~? なんかそれって不公平なんじゃないか~? 俺、お前より年上なんですけどぉ」
「やかましい、ボルトのくせに」
「まあまあ」
睨みあう二人を両手のひらをかざしてなだめ、ロジャーはブルースの隣に座った。傍らのブルースが気を使って、立ち上がろうとする。
「何か、飲み物でも取ってきましょうか?」
「ああ、今はいいよ。それより仕事を頼みたいんだけど」
「はっ。また任務ですか?」
「いや、取り調べ」
表情を固くしかけたブルースに、ロジャーはやんわりと微笑んだ。
「この間の、ゴリアテの風の男。そいつが仲間の名前を白状してね。そのうちの二人が連行されたから、話を聞いてくれないか」
「ああ、深刻なギルドの人手不足」
ボルトが茶化して笑った。だね、とロジャーも笑ってみせる。
「最近僕たち、便利屋扱いっぽいね。それとも、うちだけなのかな。他の本部……ドンドルマなんかは、もっと組織立っているらしいけれど」
「では、さっそく取りかかりましょうか。調書は先輩に提出すれば良いですか?」
「ああ、頼むよ。ありがとう」
立ち上がった二人に、ロジャーは「そうだ」と、秀麗な顔を笑ませた。
「猫が二匹……いや、ウサギと猫かな? わりと手強そうだから、穏便にね」
またまたお読みいただいて、感謝感激うれしいかぎりです。ありがとうございます^^
ロジャーは私も自分で作っておきながら大好きなキャラでして、前回の「勇気の証明」の最終章で、イカズチさんがスペシャルなゲスト出演をしていただいたことがきっかけで、今回書こうと思い至りました。
もとのキャラがとても立っていたので、ボルト、ブルースともに生き生きとしています。
(もし未読であれば、ぜひ、イカズチさんの第六章「終焉を食らうもの」をお読みいただきたいです)
キャラが印象つよかったとのことで、こちらもほっとしました^^
世界観などの説明は、小鳥遊さんからいただいたコメントから反省して、もっと丁寧に書こうと思いました。
(第三章のユッカの物語で、アイルーという種族について十分な説明をしなかったため、アイルーの意味がわからなかった、というお言葉がありましたので^^;)
公式で発売されている小説を読みましても、ゲームをしている人を対象に書かれるはずが、知らない人も読んで楽しめるよう細かい説明があって、なるほどと心得ました次第です。
なので、書いているときは必ず「小鳥遊さんが読んだときにわかってくれるように書く」と意識して書いてるんですよ。大切なことを気づかせてくださって、ホントに感謝です^^
コメント欄の閲覧、もちろんOKです。個人あての返信ですが、私もよそ様のレスは読む方なので。面白いですしw
それに、こういう制作にかかわる作者のコメントを読むのも大好きなのです。苦労話であればあるほど良い。買った本は、あとがきから読むのもそのためですww
こちらのコメントで、同じ書き手さんが何かヒントなり同感なりもってくれたらうれしいな。
疎外感もなかったようで安心しました。まあ、確かにモデルとなった本人と関係者しかわからないような内輪ネタもセリフなどにあるのですが…キャラの個性として楽しんでもらえたらと意識していたので。
多くの作家さんもやってるのですが、実在の人がモデルだと書きやすいですね。
三銃士は良いたとえですw私もあの作品好きですよ~。
まだまだ長い作品になりそうで、年内に終わらないかもしれませんが、のんびりお付き合い頂ければ幸いです。よろしくお願いします^^
この作品は、ナイトにスポットを当てているんですね。それで『騎士の証明』なのかぁ^^
今回までに登場した三人。それぞれの特徴や個性は、ちゃんとインプットされました。
前作『勇気の証明』で登場していたロジャー(好きなキャラだったので読めて嬉しいですw)も、今作ではもっと内面を読むことが出来そうで楽しみです。
蒼雪さんらしい丁寧な描写があったので、物語の舞台がイメージしやすかったです。
それに、きちんと説明がされているおかげで、モンハンを知らない私にも世界観が伝わってきます。
私にとっては、モンハン小説というより一つのファンタジー小説という感じで読ませて頂いています。
下のコメントも、読ませて頂いてしまいました。その中で、蒼雪さんは
>でも、ここにあるコメントを読まれて、「仲間内だけで楽しむ作品なんだな」と思い、疎外感を感じる方もきっといるだろうと~~
と仰っていらっしゃいますが、私の場合は、何となく察するだけで分からない部分があるのは確かですが、『仲間内だけで楽しむ作品』だとは感じていません。
『仲間内で楽しめるちょっとした遊び心もある作品』といった感じの受け止め方ですから、ご心配なく^^
ロジャー、ブルース、ボルト。なんだか『三銃士』みたいだなぁ~なんて思いながら読ませて頂きましたが、今後の活躍が楽しみです。
今後、物語が展開するに従って、きっと掘り下げられていく部分もあるのだろうなぁ~と思うと本当に楽しみ^^
ただ、彼らが対峙しなければならないものは、闇も深くなかなかに手強そうですね……。
さりげなく張られた伏線、どのように回収されていくのかも楽しみにしています。
この密猟団の犯行は、自分でもむごいなと思います。
単純にモンスターを密猟して売りさばくだけじゃなくて、こういうあくどい犯罪もあるだろうと考えました。何しろ人間ですからね…。
今作を書くに当たって資料を読みましたが、現実で起きている密猟事件の、なんと酷いことか。
いつか撲滅を願うばかりです…。
モンハン小話で、「ギルドのキャリア組と結婚するの!」というのがありましたけど、エリートぞろいなんですよね。
ギルドの受付嬢もいわば東大出の才媛みたいなものですし、ハンター兼任の人もいるそうです。
実際どういう組織の形態なのかハッキリしていないので、今回こんな風になってしまいましたが、ナイトは刑事兼公安みたいなものかと解釈しております^^;
シリアスに染まりがちな蒼雪の作風ですが、今回はボルトのキャラに助けられています。
彼のおかげで、だいぶ読みやすい雰囲気になってるんじゃないかなあ。
前半のゴテリアの風についての説明見てもかなり大規模な組織ですよね
秘密裏に行われる単なる密猟ではなく、ギルドが扱っているクエストのモンスターを、ギルドに露見する前にハンター共々始末してかっさらい、さらには恐喝や詐欺行為を平行して進めてる訳ですし。
しっかし、改めてギルドナイトの条件って凄いなぁ、と
そんな彼らが犯罪者の取調べや書類仕事に借り出されるギルドって、深刻すぎる><
そんな中でもコメディタッチで描かれてる彼らの会話の雰囲気が好きです。いいトリオだぁ
そうですね、仰ることはつねに心がけています。
それによく読めばわかりますが、完全に本人の言動を再現しているわけでもないですから。
自分の中では、あくまでロジャーはロジャー達です。
ご本人の特徴をデフォルメはしていますが、本人そのものを書いているつもりはないですので、これらと関係のない方も読めるように気をつけてます。
でも、ここにあるコメントを読まれて、「仲間内だけで楽しむ作品なんだな」と思い、疎外感を感じる方もきっといるだろうと…。そこで立ち去る方も多いと思います。
ニコタで数ある小説作品の中から、この作品を見つける人も、はたしてどれだけいることか。
それでも、第三者の目は忘れずに書いてますよ^^
それに、実在の人物をモデルにキャラを作ることは、とてもキャラ作りの勉強になっています。
むしろ自分の考えだけで作ると、中二設定になりやすいです。自分の場合。
ちなみに、凄腕GRさんが腕を磨こうとしたきっかけは、GRさんの狩り友さんに、GRさんを超える凄腕がいたからだそうです。その人に追いつき、超えるために頑張ったのだとか。
GRさんより強い人…モンハンに傾ける情熱に、恐れ入りますね。
まぁ、商業目的のお話ではないので、そこは良いのかもしれませんが。
あまり思い入れが強いと『非人間的に強い』とか『全知全能の能力者』みたいなものになりかねません。
『モデルとなった皆さんの気分を害さない程度の弱点を持ち、能力に従った活躍をさせる』
を心がけるようにすればよろしいのではないかと。
まぁ、ロジャーの場合、モデルになった人が『アレ』ですからねぇ。
リアルで充分に『非人間的に強い』かもしれません。
文庫一冊分くらいのボリュームで書こうとしているんですが、あまり大事の内容にしちゃうと、今度は中二病設定になってしまうことに、今さら気づきました…。
それで、今慌てて構成を見直しているところです。そしたら、出るわ出るわ、矛盾点が…。
収集つかなくて、直すには時間がちょっとかかりそうです。
冒頭の説明は伏線なので、その内容が今後引っ張られていくことになります。
お褒めの言葉、光栄です。自分では、まだまだだなあ…と落ち込んでいたんですが^^;
ボルトは大変いじりやすいキャラで、良いムードメーカーになってくれています。
ブルースとのかけあいも自然に出てきて、書いていて楽しいキャラです。
それも、一番最初にイカズチさんが作中で描写した一文があってこそで、ほんとにキャラ作りうまいなあと(笑)
もちろん、ブルースはボルトが憎くて言ってるわけではない。
ケンカしてるようで仲が良いって奴ですね^^
冒頭の解説、なにやら大事件の予感が……。
このようにジワリと今後の展開を期待させる手法はさすがですねぇ。
西の空に嫌な黒雲が広がって行くような、そんな気分にさせられます。
今回はコメディー要素も入って読みごたえのある回ですね。
「やかましい、ボルトのくせに」
この台詞には笑った。
なおかつこの一言でボルトとの人間関係まで納得させてしまう、と。
お見事。
こう言うシーンを見ていると『ああ、キャラが生きてるなぁ』と感心させられます。
書式が気にならなかったようでよかった…と言うべきでしょうが、完全をもとめるなら、やはり見逃すのはよくないんです^^;
字数もそれで変わってくるので。一文字でも大切ですよね。今回みたいに、うまく区切れないこともあるし。
良く見ると、(前回の原稿はとくに)スペース2つも下がってる場所が何か所もあるんですよ。
だったら下げないで書けば良いんだろうけど、段落下げも文章の基本ですから、おろそかにはできないですよね。前は気にしてなかったんですがw
説明は、最低限が理想ですよね。そして、常に初見の読者を意識しないとならない。
シリーズを知らなくて、初めて読んだ人が話についていけるように…なんですが。
今のところそういう方もいらっしゃらないので、つい世界観の説明などがおろそかになりそうですが、そこは意識して書いていきたいです。
誰か読んでくれるかもしれないし(笑)
バランス良いですか?ありがとうございます^^
3人の力関係は、最初にイカズチさんが彼らを登場させた時に思いついたものです。
実際、狩りで大活躍のGRさんには頭が上がりませんけどw
次回はいよいよ、ウサギさんが登場します。気にいってくださると嬉しいです^^
ウサギが登場するのでしょうか、わくわく♫
書式、わたしは気になりませんでした。普通の一字下げにしか見えませんけれど、ちがうのかなぁ。
説明の配分は、むずかしいところですね!
できるだけおもしろくしたり、描写や会話の中で自然に説明するのもひとつのいい形かなと思っています。
わたしはそうしないと長くながーくなってしまってw
蒼雪さんはバランスよく書かれるのですごいと思います、ぱちぱち!
三人の意外な関係にもくすっとできました。
ブルースがロジャーに対してだけかしこまるところとかw さすが「G」urenn no 「R」oger さんです。
文字数一杯に書くと、区切りで後悔することに後から気づいた。
ワードで書くとその辺を失念する。
こうして見ると短い。説明しか書いていない。
いつも説明の行数に気を使う。長すぎてもだめ、短すぎてもよろしくない。
たまに、説明と描写の区別がつかなくなりかけ、俺はもうダメだと落ち込んでその日は寝る。
翌日見てみたら、やっぱりこれで良いのではないかと考え直し、そのままにする。
そうして蒼雪は自問自答を繰り返しながら、モンハンwikiを読みふけり、設定が間違っていないか調べ直すのであった。