Nicotto Town


ま、お茶でもどうぞ


モンスターハンター  騎士の証明~7

【新たな事実・2】

「――そうか!」
 はっとして、ブルースは自分の拳を手のひらで打った。
「密猟団、あるいはその類の組織と接触するために用意したのか。モグリのハンターが多い奴らだ、正しくカードを見分ける目を持つ奴は、まずいない。とりあえず目をしのげばいいからな」
「そういうことだね。彼女達が見せてくれた本当のカードは、本物だった」
「なるほど、それでか……。よかった、アンデルセンちゃん、悪者じゃなかったんだな」
 ほっとして、ボルトが息をついた。どうやら、あのアイルーにひと目ぼれしてしまったらしい。
「あ、でもよ。二人の装備は全部押収したはずだろ? どこに本物のカードを隠していたんだ……?」
 ボルトはひとりでつぶやき、天井を見上げた。ふいに、その強面がだらりと崩れる。
「ま、まさかインナーの間に……っ?」
「アーーーッ!!」
 突然発せられたギルドマスターの奇声に、ボルトのみならず、ブルース達もびくっとする。一瞬で場が白けた。
「それは、想像にお任せします」
 にっこり笑ってギルドマスターは言った。好々爺の表情からは、それ以上のことは伺い知れない。文字通り、ボルトは想像して「くぅ~!」と悶えた。相当見たかっただろう。
「……それでは、彼女達はギルドマスターには、本当のことを話したのですね」
 ブルースが問うと、ギルドマスターはヒゲを揺らしてうなずいた。
「君達はカードが偽造ってことに気づいていなかったようですしね。でも、それを責めるつもりはないですよ。実際、これは本当に良くできている。見破ることができたのは、長年竜人として生きたわたしの勘、というところですね」
「しかし、よくあいつらが正直に話したもんだな。正体が正式にばれなくても、釈放さえされれば良かったわけだろ? 実際、誤認逮捕されたのは誤算だったかもしれないけどさ」
「決めつけるのも早いだろう、ボルト。身分証明書だけで、本人のすべてがわかるわけじゃない」
「そりゃそうだけどよ……。お前は何でも疑り過ぎだ、ブルース。お前も見ただろ、あの二人、良い子そうだったぞ?」
「お前は美人と見ると、すぐそれだ……」
「どちらの言い分も正しいと思うよ。疑うのも、信じるのも大切だ。僕達のような仕事をしていると、特にね」
 二人の間に入って、ロジャーが言った。
「けれど書士隊の称号を持つ以上、なんらかの使命を持っているのは確かだ。もちろん、使命を帯びた者でも、道を踏み外すことはある。それを見極めるのも、僕達の仕事だ」
「……はい」
「――だな」
 二人が納得するのを見て、再びギルドマスターは言った。
「わたしは、あえて彼女達に深い事情を問いませんでした。しかし、二人が逃げ出したと公言したのは、彼女達も認めてのことではあります」
「どうしてだ? 隠密で行動したいなら、そんな噂は不利になるだけだろう?」
 ボルトが眉を寄せる。ロジャーが答えた。
「そろそろ結論を言おうか。つまり――ロックラックギルドから逃げ出すほどの技量を持ったハンターがこの世にいると、知ってもらう必要があるってことさ」
「誰に――、そうか、犯罪者か」
「そう」
 ブルースに目配せして、ロジャーは続ける。
「噂を聞きつけた奴らが、彼女達に接触しようとするだろうね。それほどの実力者なのだから」
 ロジャーは、棚から一枚の地図を持ってくると、ギルドマスターの傍らに広げた。迷うことなく、いくつもの赤と青のピンを地図上に刺していく。
「赤は、今まで僕らが逮捕してきた密猟事件。青は、よそから報告された密猟事件。どう? 何か気づかない?」
「どちらも多いですね……。ん? こうして見ると、ずいぶん集中していますね。この地域周辺に」
 注意深く見ていたブルースが、ピンが群れをなす中央付近に指をあてた。ロックラックから、遙か西方へ位置する地域だった。
「そういえば、今までの件で気になったんですが、密猟に成功した者は、全部生け捕りにしていましたね。今までは、半分解体された遺骸を発見することもありましたが」
「だなあ。密猟は今に始まったことじゃないが、場所が集中することはありえない。同じ場所で固まって狩っていたら、すぐに生息地のモンスターが枯渇する。ギルドにも見つかりやすいし、それに、この地域には獲物を横流しできるような市場はなかったはずだ」
 ブルースとボルトの指摘に、ロジャーは目を細めた。
「さすがだね。モンスターは死亡してから腐敗まで、ほとんど時間を取らない。骨から血液に至るまで、すべてが貴重な資源だから、密猟者はよほどのことがない限り、その場で解体して素材を持ち運ぶ。けれど、このピンが示す事件は、すべて捕獲して搬送されようとしていた。あるいは、された後だった」
「市場がない場所に、眠ったモンスターを運んでるってことか? そいつは……」
「――そう。それを調べるのが、新たな君達の任務です」
 ボルトの答えを待たずに、ギルドマスターが言った。

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2012/06/08 07:43
まぷこさん、コメント感謝です。

あっ、ほんとですね!間違ってました…!
ご指摘ありがとうございます。すぐに直します。

それと、ランファのオトモのミイの装備が「アカム」と書きましたが、これも都合が悪いので直します。
リアリティを考えるなら、アカムのような伝説級のモンスターと遭遇すること自体難しいと思うので。
アバター
2012/06/07 23:43
|「あ、でもよ。二人の装備は全部応酬したはずだろ? どこに本物のカードを隠していたんだ……?」

応酬 → 押収では……?
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2012/06/07 08:14
あ、でも、冷静に考えてみたら胸の間ってかなり…ですよね。
トゥさんご指摘の通り、インナーの中の方が現実的ですね。
大きいったってほどがあるし…。

この辺、こっそり直しておきます(^w^;)
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2012/06/06 22:55
イカズチさん、コメント感謝です。

そうですね。
調査研究が目的の書士隊ですが、自分の身や部隊を守るためにハンター兼任している人がいるようですね。
トゥルーとランファも、研究者でありながら、その腕前を買われて、ある調査をしている、という設定です。
なんの調査か、は、これから語られていきます。
おぞましくも不穏な気配、むむ、鋭い。たぶんそれは外れてません。
蒼雪特有の、救いようのない展開にならないよう祈っててください^^;

「胸の谷間」は、もっと露骨な表現をしようとしたけどやめましたww
実際にとりだす所を見たら、ボルトはたまらないですねww

ギルドマスターの奇声なんですが、トライをやったことがないので、どんな声かわかりません。
変な俳句を作るというし、この人…相当おかしなお爺さんですよね。
だけどキレ者ということにしています。そうでないと話が進まない。
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2012/06/06 22:47
トゥさん、コメント感謝です。

そこはおいおい語られていきます。でもお察しの通り、と申し上げておきましょう。さすがトゥさん^^
モンスターパークだったらちょっと楽しそうですがww
じわじわと怖い雰囲気が伝わっているようで、よかったです。狙い通り、あはは^^
怖い路線になったのは、モンハン辞典の「世界観」を読んでしまったからです。
「昔、昔…竜と人間が」のところですね。あの辺りがテーマのひとつというか。どうしても書きたくなりました。あまり怖くならないように気をつけます。

3rdのオープニング、自分も好きです。
最初、嵐の上空から始まるじゃないですか。あれはラスボスのアマツマガツチ視点なんですよね。
そこから、わーっと広がる、中国のような山の風景…肉を焼くサムライ、もろ好みでした。
村の様子は、「千と千尋の神隠し」みたいでしたね。どこかジブリ的な感じが良いです。

台車に縛ったモンスター搬送の様子は2Gでも出てきます。(密猟者も同じ手口でしょう)
アプトノスの荷車に大タル爆弾などの荷物を運んで狩りに出るハンターも映ってました。その後、彼が狩ったレイアが防具に加工されるわけです。
あれを見ると、思わずこう…拝みたくなりますね。お前の命は無駄にしない、と。
この倫理感も、今後作品に入れる予定です。

胸の谷間は、男のロマンと言う事で(笑)
あったほうがいいかなあ、と。何しろイカズチさん原案のトゥルーとランファが色っぽいから…ww
ということで、おゆるしください。


アバター
2012/06/05 23:15
本来は学術調査的な任務が主な書士隊も、今度ばかりは黙って居られない事態なのでしょうか。
だから手練れの二人を派遣した、と。
そんなにも大規模な密猟団が……。
そして捕獲をメインにする彼らの目的とは。
うう~む。
私はもっとおぞましい感じが伝わってきますよぉ。

しかし、胸の……谷間……むっ、むっ
「うぉぉぉっ! そうとわかってりゃ、徹底的に調べるんだったぜっ。みすみす……目の前に……ぐはぁっ!」
いかん、ボルトが乗り移った。
アバター
2012/06/05 22:19
そっか、なるほど!
潜入捜査的なものをしているのでしょうか。
それが書士隊の任務である理由、そして密猟者の目的。気になりますね。
わたしはモンスター・パークでも作るのかな、と思ったんですけれど、おそらくもっと不穏な意図があるはず。次回もたのしみに待っています♪

余談ですが、MHP3のOPがすごく好きなんです。
捕獲したモンスターの搬送方法もわかるし、村の情景も見ることができて。
密猟者たちもああやって運んだのかなぁ。

……胸の谷間……ランファとトゥルーは隠せるんですね。あは、すごいw
インナーの中のほうが現実味がありそうですけれど、今一つロマンに欠けるでしょうかw



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