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6月自作/ トンネル「モグラ夫婦の悲劇 (1)」


 ある島に地底へと続くトンネルがあった。
そのトンネルは自然が造りだした洞窟に手を加えたもので、普通にはただの自然の洞窟にしか見えないが、洞窟のいたるところにカムフラージュされた装置がほどこされている意図的に造られたトンネルだった。
トンネルの先にはまだ人類に知られていない地底の国があり、そこには高度な知能を持った生物が独自の文明を築き地上との連絡通路にトンネルを使用していた。
地底に住む生物達は昔は地上の生物で、地上より地底に移り独自の進化を成し遂げていた。
その地底生物の中に地上では鳥類だったギジンチョがいた。
ギジンチョは地底国を守るたまめに地上でいう軍隊のような役目を行っていたが、なんの争いも無い地底国ではライフラインの管理維持の役目をもっぱら行っていた。
そのためにトンネルの保守管理も行っていたが、実際のトンネルの保守作業は同じ地底生物である地上ではモグラであったギジンモグがギジンチョの指示に従って行っていたのだ。 
トンネルは地上との連絡用通路だけでなく地上の新鮮な空気を地底国に送り悪くなった空気を排出する換気抗の役目もしていた。
保守点検にあたっているギジンモグは地上付近と地底国付近の二班に分かれて24時間体制で作業にあたっていた。
地上付近を担当するギジンモグの中に夫婦で働く者がいた。

「とうちゃん、そろそろ昼の休憩にしようか」
「そういえば腹減ったな。ここらで一休みするか」
「今日の弁当のオカズはとうちゃんの好きなミミズのフライだよ」
「お前の作る料理はいつも天下一品で、俺は幸せものだよ」
「とうちゃんの幸せが私の幸せ。二人はいつも幸せものだね」

夫婦はトンネルの保守点検の作業を中断して、二人仲良く昼休みに入ることにした。
妻は昼食用に作った弁当を鞄から取り出し弁当箱を包んでいる新聞紙をひらけ、それをテーブルクロスの変わりにして洞窟の平らな岩の上に簡単な食卓を用意した。

「かぁちゃん、うまそう!」
「たくさん食べて、とうちゃんがんばれ」
「いただきまぁ~す」

弁当箱はおかずばかりの入った大きな弁当箱一つと、ご飯ばかりの入った大きな弁当箱とそれより少し小さめの弁当箱の三つがひろげられていた。
夫はおかずの弁当箱から好物のミミズのフライを一本取り出すと、それを口に入れてむしゃむしゃとうまそうに頭から食べ始めた。
 

「このミミズ、ジューシーなミミズでなかなかおいしいよ」
「そう。そのミミズはミミズにしては贅沢なものを食べさせて大きくしたものだから、まるまると太って中身の濃い新鮮ミミズだよ。スーパーのミミズとは大違い」
「かぁちゃんが育てた養ミミズだね。うまいよ」
「いっぱいあるからたくさん食べてね。とうちゃん」
「あぁ、かぁちゃん、うまいよ、うまい」

夫とその妻は昼食を夢中で食べていた。
みるみる弁当の中身が少なくなっていく。
その時、トンネル管理センターからの緊急無線が夫の持っている無線機に入った。

「至急、至急、こちらセンター。ナウ。洞窟に地上の人間が数人、接近中の映像を監視カメラで確認。作業員はただちに作業を中止し所定の場所に移動し身を隠せ。ただちに実行せよ。以上」

「とうちゃん! 人間が洞窟にやってくるんだって。大変だわ。見つかったら地底国のことがわかってしまう。早く逃げて隠れなければ」
妻は慌てて弁当を片付け始めた。
「心配するな。隠れ場所はすぐそこにある。慌てて忘れ物をするな」
夫は弁当箱のミミズのフライの残りを全部手に持つと無線機でセンターに応答した。

「こちら作業第一班。了解です」
「こちらセンター。作業第一班。了解せしを了解。ただちに身を隠せ」
「了解です」

夫は忘れも物が無いか、辺りを注意深く探索して緊急時に用意されている隠れ場所に向った。
妻が夫の後を急ぎ足で追いかけてついて行く。

「ほんとうに、せっかくのお弁当がだいなしだわ。ねぇ、とうちゃん」
「あぁ、ほんとうだ。せっかくのおいしさも吹っ飛んでしまった。人間ども、何しにこの洞窟に来やがったのか。久ぶりだ」

二人はある岩の前に立ち、夫がリモコンのスイッチを岩に向け押した。
そうすると、岩がドアになっていて横に滑るように開き始めた。
岩ドアの中は三畳ばかりの部屋になっていて休憩できるようにソファが置いてあった。
夫婦は中に入ると岩ドアを閉めた。

「とうちゃん。愛してるよ」
「緊急事態に何を言い出すんだい。かぁちゃん」
「この部屋にも監視カメラがついていたっけ。とうちゃん?」
「いや。外にはついてるけど中には無いはずだ」

夫は部屋のモニターで外の様子をうかがうためにモニターのスイッチを入れた。
洞窟の監視カメラの映像全部が小さく分割され画面になって表示された。
夫はそのなかの入り口付近とすぐ外の映像を選び大きく表示させ、その映像を見ながら手に持っていたミミズのフライを食べ人間達の様子をうかがっていたが、妻の方はその横で目をつむりじっとしていて眠りにおちいっている様子だった。

#日記広場:自作小説

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2012/06/29 12:54
ストーリーの画期さの中で、弁当を広げる夫婦モグラのやりとりがとても愛らしく感じました。
続き、楽しみにしてます!(^0^)
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2012/06/29 01:50
某ハンバーガーの噂・・・
実際には食用ミミズは加工にコストがかかり
かなり高価らしいです。
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2012/06/27 19:32
せっかくの新鮮なミミズをフライにしてしまうなんてもったいない。
生で食べればいいのに……w
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2012/06/26 18:45
もしかして庭の穴ぽこを潰すと、地底への空気の換気ができなくなってしまうのでしょうか。
ごめんなさい~><
もうモグ穴ぽこを潰さないように気を付けます><
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2012/06/26 16:49
.やあさまに同じく。
ミミズが印象に残りすぎて…。
某ハンバーガー思い出しちゃった。
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2012/06/26 09:36
ミミズのフライを、とてもリアルに想像してしまいました^^;;

衣をしっかりつけて揚げなくちゃ、なんだか油が周囲にはねそう・・・^^;;;

(どきどき)



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