モンスターハンター 騎士の証明~17
- カテゴリ:自作小説
- 2012/08/02 10:31:35
【公国の宰相とギルドの騎士】
ブルースが、“ユクモの守り手”グロムと邂逅した日から遡ること、およそ2日前。
ロジャーとボルトは、予定通りエルドラ公国の首都を訪れていた。
あまり国交がない小国のため、飛行船の発着場もない。やむなく2人は、首都近郊の広野に降りて、歩いて街へ入った。
滞在は1週間と決めている。乗って来た船は、同船していたギルドの操縦士によってロックラックへと引き返していった。
「なんか、陰気臭い街だなあ」
あまり活気のない街の様子を見て、ボルトは眉間にしわを寄せた。ロジャーも歩きながらうなずく。
「そうだね。旅人が多いのは、それなりに宿場として発展しているせいだけど、誰も長く滞在したがらないみたいだ」
「まあ、この景気じゃなあ」
ボルトは軽く肩をすくめた。ギルドナイトの正装で全身まとめているので、物珍しさからか、市民の目線が自分達に集中している。
ギルドナイトの存在自体が秘密のため、彼らの正体に気づく者はいないだろう。どこぞの騎士が、馬車も立てずに徒歩で歩いている。そんな好奇心だ。
大通りをまっすぐ歩いた先に、王城はあった。門番に、ギルドの書状を見せて王に謁見を願うと、あからさまに渋い顔をされた。
ちょっと待っていろと言い置かれて20分。ようやく、王への謁見がかなった。
「……いくら、この国にギルドの出張所がないからって、待たせ過ぎじゃないのか?」
「それだけ信用がないってことなんだろう。ギルドの名も知らない国もあるくらいだからね」
「……ふうん」
案内役の兵士に聞こえぬよう、ボルトが低い声でロジャーに話すと、平然とした顔つきで答えが返ってきた。ロジャーと違い、ボルトはあまり公式の場にて交渉の仕事をしたことがない。ここは場慣れしている彼に任せようと、ボルトは決めた。
やがて2人は、謁見の間に通された。お決まり通り、部屋の奥の壇上には玉座が敷かれ、痩せこけた老王と、その脇に宰相らしき初老の紳士が立っている。
中央に伸びる緋毛氈(ひもうせん)の上を、ロジャーとボルトは肩を並べて、堂々と歩いた。部屋の両壁際に立つ衛兵達の視線が全身に刺さったが、2人とも頬の筋肉一つ動かさなかった。このくらい、狩りのプレッシャーに比べたら、どうということもない。
「遠路はるばる、ようお越しくださった」
意外にも、老王は辞を低くして応じた。
「このような田舎国に、ギルドの騎士を迎える日がこようとは。我が国はそなた達を歓迎しよう」
「陛下にはご機嫌麗しく。この度の歓迎、恐悦至極に存じます」
そつなくロジャーは帽子を取って胸に当て、騎士風の礼をする。ボルトも倣って、同じ礼を返した。それで幾分、周囲に張りつめていた警戒の空気がゆるんだ。
絹の光沢を放つ華麗なギルドナイトの衣装は、国主と同等に渡りあうためである。しかし、衛兵が警戒していたのは、見知らぬ異邦人の謁見だけではなく、2人の背負う武器のせいでもあった。
ロジャーは、ギルドナイトの証である双剣『マスターセーバー』、ボルトはガンランス『ソルバイトバースト』を携えていた。
細身でありながら、冷たく研ぎ澄まされた刃を持つ双剣は、脇に控える兵士達の憧れと羨望を誘ったし、反対に、ボルトの背負うガンランスは、それ自体目にした者が少なく、あれは何だろうという畏怖を与えていた。
愛用している『古代式殲滅銃槍』は、人の身長を超えるほど長いため、市街や屋内での持ち歩きに不便なのと、任務の際の見た目も配慮して、今回持って来なかった。
しかし、最もスタンダードな意匠の物でさえ、これである。どうやらこの国は、本当にハンターの出入りが少ないらしい。
「それで、貴君らは何用で我が国に参られたのですかな?」
あからさまにとげとげしく尋ねたのは、王の脇に立つ宰相だった。性格の悪そうな細目で、鼻はとがり、いかにもな――、
(意地悪大臣だな)
ボルトは内心で、「けっ」と思った。
「わが国にはギルドの興味を引くものはないかと。見ての通り、周囲を砂漠とサバンナに囲まれ、表立った産業もありませんぞ」
「そのようですね」
ロジャーは表情を変えず、宰相を見た。否定もせず、お世辞も言わない率直な発言に、どこかぼんやりとしていた王や側近達が、驚いたように目を見張る。
「我々は貴国の産業に興味を引かれたのではありません。ある調査のため、その許可を求めに参りました」
「調査だと?」
口を開いたのは、王ではなく宰相の方だった。
「ギルドといえば、おぞましいモンスターを狩る組織ではないか。いったい何の調査だ? 答えようによっては、お前達は不敬罪にも問われるぞ」
「我々の調査は、貴国の名誉のためにも必要かと思われます」
ロジャーは相変わらず物怖じしない。
「ハンターズギルドは、どの国にも属さぬ国際機関です。よって、ギルドの長からの命令は、一国の元首の勅命にも等しい。それを撥ねることは、どういう意味かおわかりか」
「ふん、ギルドの長が何者だというのだ。出自の知れぬ竜人族が務めているというではないか。亜人種ごときにこき使われて、貴君らへ同情を禁じ得ないな」
本性出すの、早すぎだぜ。ボルトは、こみあげてきた怒りを深呼吸で散らした。
世界は広く、国同士の交流もほとんどない。商人のキャラバンなどが行き来するものの、今でも閉鎖的な地域は多い。中には、人種だけでなく、男女の格差も根強い所がある。エルドラ公国は、どうやら後者のようだった。
特に王族関係では、現在では人口が減少している竜人族への風当たりは未だに強い。
村などの集落では、知能が高く人格者が多いこの種族を、集団のリーダーとして敬っているが、血筋を重視する封建的な王家や貴族達は、彼らをうとましがる。理由は本人達もわかっているからだ。
好戦的で野蛮な人間族よりも、精神レベルが高い竜人族の方が、もっとも王にふさわしいことに。
つまりは、自分達の座を彼らに奪われたくないためである。
(とか言いながら、困った時だけ俺らを利用するのが王族連中だけどな)
ボルトは、なるべく感情を抑えつつ、宰相のまとうコートに目をやった。さっきから気になっていたが、国の主である王よりも、宰相の方が豪華な衣装をまとっている。
「その毛皮、ラ―ジャンのものですね」
ボルトと同じことを考えていたのか、ロジャーも宰相のコートをねめつけていた。
「見事な金色だ。ラ―ジャンの中でも、最も凶暴な一族の毛皮でしょう」
「何が言いたい」
宰相は、わが身を庇うかのようにコートを片手で押え、ロジャーを睨んだ。
「おぞましい、とご自分で仰っておきながら、良いご趣味だと思いまして」
ロジャーはにっこりとほほ笑んだ。容姿端麗な青年の微笑みは、まるで爽やかな風を呼び込んだようだった。周囲の者が思わず呆けたほどだ。
「そのコート1枚のために、どれほどのハンターが犠牲になったことでしょうね」
「な、なにをっ――」
たちまち宰相の陰険な顔に血が上る。ああ言っちゃったよと、ボルトは笑いをかみ殺すのに必死だった。ロジャーは、宰相の言った「おぞましい」ひと言を責めているのだ。
「き、貴様らだって、金さえ出せばどんな依頼でも受けるではないか!」
「それは心外ですが、否定もできません。我々の定義については、後ほどご講義いたしましょう」
と、ロジャーは食えない笑みを浮かべてみせた。
双聖剣ギルドナイトは、2Gをプレイして知ったものです。
3rdだとホーリーセーバーで止まるので、どうしてもこの名前を使いたくて、こちらを採用しました。
実際、2Gでも真っ先に作りましたw
音、かっこいいんですよね。抜けばシャリーン!と涼しげな音が鳴る。振ってるだけで楽しい剣です。
GRさんが笛を良く使うので、イカズチさんのイメージもごもっともですが、蒼雪のロジャーのイメージが双剣使いのためと、騎士の印象を強くしたかったので、こうなりました。
もちろん、女性読者に好かれるように作ったのです。男性も「ほほう」と思って頂けたら嬉しい。
トリプルクラウンってなんだっけと思って、再検索してしまいましたww
さすが、ガンス使いのイカズチさん、お詳しいですね。
いやいや、さすがにボルトといえどもですね、ゲリョスの武器は公の場にかついでは行かないかとww
ちゃんと着て行く服に合わせて行ったのです。
ソルバイトは、近衛隊~に比べると、塗装が剥げて地味なのですが、性能とフォルム重視で選びました。
青いラインが格好良かったのに、錆びた色になって寂しいですが、そこが渋さになってますね。大柄なボルトに合うんじゃないかと。
しかし、ソルバイトじゃなくて「ガンチャリオット」が良いかなあなどと、色々悩んでの結果です。
さすがにトリプルクラウンを選んだら、ロジャーに断固止められますけどね^^;
激昂という呼び名は通称のようなので、あえて匂わせる描写にしました。
あいつの訓練は苦労しましたが、クリアするにあたって猛特訓した結果、今ではそんなに怖くなくなりました。最初は怖くて、毎回手が震えたものです。
今でも油断なりませんが、G級ナルガクルガよりは楽かも。
早く次の狩りのシーンを書きたいのですが、あと2回前置きが必要で…もどかしくもあり、こちらも続きを書くのが楽しみです。ユッカも早く出したいなぁ。
まず、記事をお読み頂いてありがとうございました^^
自分の素直な感想ですので、賛同者のことは考えないで書いたもので…荒らしを避けるためにコメント封印しておりました^^;
こちらは小説作品への感想を頂いておりますので、ペルソナ4Gマリー関連の記事のコメント欄を解放させて頂きました。
よろしければ、そちらへ書きこみ頂けると嬉しいです。
お手数ですが、どうぞよろしくお願いいたします。
『双聖剣ギルドナイト』
細身の美しい刀身を持つ水属性の強力な双剣。
何よりの特徴は、抜刀すると刀身が青白く輝き、澄んだ金属音が響く事でしょう。
ロジャーの最も得意とする武器は狩猟笛だと思われますが(基本何でも使いですけどね)双剣のチョイスも趣味が良いですね~。
真紅のギルドバードの美青年が青白く輝く双剣を構える『絵』など、想像したら女性は堪らんでしょうなぁ。
私などは嫉妬に駆られて「何カッコ付けとんねん!」と後から石投げそうですが……。
『ソルバイトバースト』
見た目は地味ですが、ガンスガンスした格好のガンランスです。
機械部から突き出した銀色の銃身、先端のバヨネット、オーソドックスな形の盾、これぞ銃槍って感じ。
無属性ながら通常型の中では覇銃槍アペカムトルムに次ぐ攻撃力を持ち、スロットも2となかなかに使える性能です。
フルバーストを基本技にすれば、強力な相棒になってくれそうですね。
勿論、ギルドバードに合うのは言うまでも無く。
ボルトの選択とは思えませんね~。
きっと手近な『トリプルクラウン』辺りを引っ掴んで出ていく所を慌てたロジャーにでも止められたのかと。
最も凶暴な……と言うと『激昂』
ううむ、あ奴には借りが有って。
トラウマモンスターの一種です。
あんの金猿がぁ!
この国で何が起きているのか……。
先の展開が気になります。