ペルソナ4ゴールデンやってみた・8
- カテゴリ:ゲーム
- 2012/08/04 11:01:48
【堂島家の食卓】
ゲームの自由度という点では、明らかに難があると思われるペルソナ4。
しかし以前の記事でも触れたが、すべてを完璧にこなさず、自分のやりたいように日々を過ごすことも可能なのだ。
今回は、仲間コミュのみに熱を上げているとと見落としやすい、堂島家について書こうと思う。
今作ではうまい具合に奈々子の出番が増え、彼女との日常生活に関係するエピソードが盛り込まれていて、奈々子ファンとしても嬉しかった。
最初に目を見張ったのが、5月の母の日の話。
奈々子が、学校で折り紙の花を作ったのだが、お母さんは死んでいていない…どうしよう?という。
そんな彼女に、亡くなったお母さんの仏壇に供えるがよい、と主人公は言う。
奈々子も堂島も、そんな彼の思いやりに素直に喜ぶ。
よもや「お兄ちゃんにくれ」などとは言えないだろう。たまにこういう身勝手なセリフも用意されていて、プレイヤーの人間性が問われて面白い。
居候である主人公が、よその家庭の事情にそっと踏み込み、無理なく溶け込んでいくエピソードである。
メインストーリーが学園生活主体なので、どうしても影の存在になりがちな堂島家だが、こうして家庭の様子も描くことで、主人公(プレイヤー)にとって、どちらも比重が重い、大切な居場所となっている。
奈々子ファンとしては、より多く一緒に過ごしたいと思う要望を、彼女が出しゃばりすぎず叶えていたように思う。
普通、学校生活の友達関係に家族が絡んでくることなどないものだが、これはシナリオ的に計算されているものでもある。
終盤奈々子が奇禍に見舞われ、「何としても助けなければならない存在」としてプレイヤーに印象付けるためだ。
マリーの存在が宙に浮いて感じるのは、彼女との絡みがサブイベントであるコミュに限られていたからだ。
もしマリーが、もっと奈々子のようにストーリーに深く関わっていたら、これほどマリーに対して違和感は感じられなかったのではと思う。
キャラのセリフ誘導で、マリーはイザナミの名前を出し、主人公にとってかけがえのない存在として我々に強制してくる。
だが、奈々子に関しては、そういう押しつけがましさもないように感じられた。…と、これは完全に、ファンの欲目かもしれないが。
ともかく、奈々子ファンの念願を良く叶えてくれていたと思う。
さすがに海水浴へは一緒に行けなかったが、花火大会は見れたし、約束していた雪だるまも可愛いのが作れたし、スキー旅行は無理だったけど、その後の画像で雪遊びにスキー場へ再来していたし…などなど、「ああ一緒に過ごしたなあ」と、感動したものだ。
ところで、奈々子とお世話できる家庭菜園の固有セリフに注目している人はどのくらいいるだろう?
もちろん、奈々子ファンなら、毎日のように野菜を世話しているだろうけど。
蒼雪も、3周目にチェックしてみた。すると、予想以上に多く用意されていたので驚いた。
土いじりって楽しいな~という堂島遼太郎のセリフが、終盤、主人公への疑いを隠しきれずに複雑な思いをあらわにする変化が、見応えがあった。(事件に関与しているか暗に探る堂島へは、無論「たくあん食べました…」を選んだ)
菜園イベのオーラスとして、11月3日の親子と最後の畑の世話では、どうして家の空いた庭に菜園の道具があったかが明かされる。蒼雪はこれを、「お母さんの畑」と題している。
奈々子と堂島との絆が深まる、良い話だ。
この菜園で採れた野菜は、ダンジョン探索に使えるものだが、収穫量(入手できる数)が目に見えるより少ない。
おそらく採れた野菜の大半は、堂島家で主人公が調理しているのだろう。
彼が家庭料理を作っていることは、ゴールデンで明らかになった。
無印版では、奈々子や堂島が買って来たお惣菜ばかり食べていた印象がある。彼が作る弁当は学校の友達にしかあげてないのかと、冷たい奴だと蔑んでいたほどだ。
しかし今作では、足立のエピソードで主人公がシチューをふるまうシーンがあり、終盤クマが短期居候する場面でも、「センセイの料理は絶品クマ」と喜んでいるところから、「ああ作っているのだな」と、安心した。
いつ作っているのかは、我々の想像に任せられている。学校から帰ってすぐに玄関へ向かい、夜のバイトへ繰り出すように見えるけど、「実はその間」なんだろうな。
だから、彼が修学旅行から帰ってきたあと堂島家の食卓を見ると、麺づくりと焼きそばバゴ―ンが置いてあるので、思わず切ない笑いがこみあげた。彼が居ない間、親子はこれを食べて2日間生き延びていたのか、と。
(こんな細かい字が見えるほど、PSvitaは映りが良いってことだ)
このように、堂島家パートは心温まるしくみになっている。
両親と不仲というわけではないが、親が多忙なために内心寂しいものを抱えていた主人公にとって、初めて得た温かい場所というわけだ。
堂島も、コミュMaxになると主人公のためにコーヒーを淹れてくれたりする。今夜は奈々子とジュネスに行ける日かと思って話かけたら「コーヒーでも飲むか」と問われて、断り切れなかったプレイヤーも多いことだろう。それつまり蒼雪である。
この応答が返って来て、ああしまったキャンセルしようかと思ったが、堂島の笑顔にほだされて、ついコーヒーを受け取ってしまうのだった。
奈々子エピソードの極めつけは、2月のシメであるバレンタインイベントだろう。
蒼雪は初回プレイで直斗をのぞく6人の女性と恋人関係になった。(直斗は惜しくも時間切れで、恋人までなれなかった)
しかし朝に来たメールの誘いを全て断り、陽介イベントの後、不本意ながらマリーに強制的にキスされ、ふゆかいになりつつ念願の奈々子イベントを見たのである。
そこで奈々子から振舞われた不気味なスライムチョコには、一番笑わせていただいた。
確かCDドラマにバレンタインの話が出ていたと思うが(蒼雪は聴いてない)、それと関連しているのだろう。
思わず「あぶない!バレンタインデ―」という歌が脳裏に再生された。
奈々子の期待に応えるべく、捨て身で食べた主人公がおかしくもあり、切なくもあり…。
鋼のシスコン番長の名に恥じない戦いっぷりだった。
顔は半分吹っ飛ばなかったが、しかし、彼が卒倒して恐怖ステータスになったところを見て、やっぱり千枝や雪子とは恋人になりたくないな、と痛感したものである。
バレンタインで彼女達を断ると「私達つきあってるんだよね…?」と睨まれるので、その怨念が宿ったようにも思えるのが、なお可笑しい。
それでも男子含めて仲間全員に、ホワイトデーに手作りクッキーをあげる主人公の寛容さは、見習おうと思ったな。
真ENDでは、半年ぶりに成長した奈々子を見ることができる。
髪が伸びて、ちょっぴり大人っぽくなった彼女に、一抹の寂しさを覚えた。ああ、もうあの小さい奈々子はいないんだと思うと…。
「昔が良かった、なんて言いたくないだろ」とは陽介の弁だが、ずっと今のままでいてほしいという気持ちも、抗えないものである。
ま、でも、こういう細かいエピソードがあったから、P4Gは買って良かったとしみじみ思ったんだよね。
今回は、とりとめなく奈々子の話、でした。