Nicotto Town


黒曜のアジト


樹ノ乙女~術士ノミタ夢Ⅱ

鬱蒼と茂る草を掻き分け、森をしばらく進むと同じ森でありながら木漏れ日が差し込む場所がある。
その真ん中で一番大きく枝を伸ばし、日の光を浴びて木の葉をきらきらと煌めかせている木――それが大地神の宿る千年樹です。
僕が千年樹の前に立ち、木の根を一蹴りする。
すると、ふわふわと方向の定まらない風が吹き、そこら中の木の葉を揺する。
「ん~?…なんだムクロクンかぁ…ふぁぁ~あせっかく一眠りしてたのに、君ってば乱暴だなぁ♪」
目の前の大木から、はっきりと人の声が聞こえる。辺りを探しても人は居ない。
そう。この木から、響き渡っている。
「お久しぶりです。ビャクラン。調子はどうですか?」
「やあ。君は元気そうだね。ボクは…そうだなぁ…昔はビャクラン派信者が沢山巡礼に来てくれたんだけど、最近はすくないの♪」
それを聞くと、僕はもう一度力一杯ビャクランの木の幹を蹴る。
「今日は老いぼれの愚痴を聞きに来たのではないのですよ。」
「やだなぁ♪君も相当な年のくせして、こうるさいジジィだなぁ♪」
「なんですか…もう一度言ってみなさい。」
「え…?聞こえなかった?ムクロクンも結構モウロクして……」



「…で…相談なのですが、またあの予知夢を見たのですよ。」
「へぇ…予知夢かぁ。…でどんな奴?」
「1つめは、ミルフィオーレに侵攻するボンゴレ。2つめは国民の暴動。3つめは断頭台に立つ王女。4つめは…滅びゆく…ボンゴレ。」
「で…紫の夢は?どれなの?」
「1つめのミルフィオーレに侵攻するボンゴレ。これを止められないと、4つ全てが現実になるでしょう。」
僕は時々夢を見る。
その夢は大概が現実となった。
その中でも紫色に染まった夢の内容を起こらないようにすると、不思議とその夢の内容は現実にならない。
経験上の事実である。
「う~ん…ムクロクンの夢を信じない訳じゃないけど、あんなに大きなボンゴレがすぐ滅びるとは思えないな♪…で、あとボクの眷属を弟子によこせって?」
「そうです。王女…彼女には明らかに悪魔が宿っている。」
悪魔とは、大罪の宝物に宿る悪魔。
僕は五百年ほど前、このビャクランに大罪の宝物ごと悪魔を回収して欲しいと頼まれた。
悪魔の宿となった人間は、これまで大きな事件を起こしてきた。なんとしてでもそれを食い止めなければ。
「それでクロックワークの秘術って?…でも悪魔はもう払ったんじゃないの?」
クロックワークの秘術は、悪魔祓いの儀式。これまでに何度も失敗してきた物だ。
今度こそ副作用なしに成功させるためにも、人手は必要だった。
「いいえ。彼女が幼い頃、確かに僕は彼女に宿った悪魔を祓いました。その副作用によって、彼女は幼少の記憶を失っているのですからそれは確かです。…しかしまた…。」
「へぇ…?そんなことってあるんだ…しらなかったよ♪…で一人弟子を…うーん…でもボクの眷属可愛い子ばっかだからなぁ…」
「つべこべ言ってないで眷属の一、二匹寄越しなさい。」
「ふぁあ~ムズカシイ話してたら眠くなっっちゃった♪おやすみ。」
そう言うと、木の洞から規則正しい寝息が聞こえた。
「はぁ!?起きてくださいビャクラン。何故そこまで他人事で居られるのですか。」
げしげしと続けざまに幹を蹴っていると、後頭部で「べちゃ」となにかがつぶれる音がする。

「ビャクランさんを…いじめちゃだめ…」
足下を見ると、小さなシマリスが両手に真っ赤に熟れたポムとうう果実を抱え、こちらへ投げつけてきた。
「…クロームですか。さっきのはビャクランも悪いと思うのですが。」
続けて、パサパサと小さな羽音をさせて、コマドリがこちらへ向かってくる。
「…あぁ…遅かったかな?」
そう漏らすと、コマドリはボクの肩にちょこんと留まった。
この二匹は、ビャクランに仕える精霊で眷属だ。
精霊は普段は目に見えないが、森の中なら自由に動物に姿を変えて行動できる。
「クロームちゃん!大丈夫だよ。いじめてるわけじゃないから…多分。でもムクロさんも…すぐ暴力を振るうのは…良くないことだよ?」
肩に乗ったコマドリが、仲裁をしてくれた。天真爛漫で明るい彼女は名をキョウコという。
そして、表情のないぼそぼそとした喋りをするシマリスがクロームという名前だ。

「…貴方達の主人は眠っているようですし、また日を改めて来ることにしましょう。」
「はい。それが良いと思いますよ。それにもうすぐ誰か来ますから。」

キョウコがそう言い終わった頃、ちょうど向こうから少女がやってきた。
黒髪を後ろで結っている彼女は、全身に痣やら傷やらが目立つ。
そして、通りすがりに発した言葉
――「生きていてごめんなさい。」
それを僕は聞こえないフリをした。
無かったことにした。
よく見ると顔に旧民族の刺青…
人種差別で暴行でもされたんじゃないかと、柄にもなく心配になってしまった。

「考えすぎ…ですよね…。」

そして森を後にした。

#日記広場:日記

アバター
2012/08/18 17:18
おぉそうなのか!

白蘭神様かぁ
アバター
2012/08/18 17:12
まあ…ハクらしくはないかな。
ビャクランは正確には木じゃなくて木に宿る神様。
この辺のキャストはちょっと…自分でもアレだわな。

ちなみにこの作品でのハルは
「もともと明るい性格がいじめによって歪んだ」
みたいなことになってるので。
アバター
2012/08/18 16:57
白蘭木っすか!?www
まぁ、いいけどねw
クローム~♪
ハルってハクに似ても似つかない気がする・・・性格が←




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