樹ノ乙女~術士ノミタ夢~Ⅳ
- カテゴリ:自作小説
- 2012/08/24 17:20:23
side_Kyoko
目を覚ますと、ボクは不格好なかごの中に入れられていた。
かごの隙間から外をうかがうと、四方を煉瓦造りの壁に囲まれている。
人の住み処かな――?そう推測した。
正直言ってボクが入れられているこのかごはかなり隙間が大きく、頑張れば抜け出せるかもしれない。
力を振り絞って羽を動かすと、何かが絡まりついてきて動きが取れなくなった。
ふと自分の羽をみてみると、白い細長い布のようなものが絡まっている。
しばらくじたばたしていると、部屋の奥の方から人影が現れた。
ストロベリーブロンドの髪の毛を長く伸ばした女性だった。
「あら…大変なことになっているわね。いま直してあげる。」
じたばたするボクの様子を見て苦笑いをうかべると、慣れた手つきで布を外し始めた。
「怪我をしていたから、応急処置にと思ってあの子もやっていたのだろうけど、不器用なのかしらね。」
そう言い終わる頃には、白い布はきっちりとまき直されていた。そっか…これは血を止めておくための布なんだね。そういえばさっきまで痛んでいた羽が少しマシになったきがする。
ボクは目の前の女性にありがとうと告げた。…きっとチュンチュンとしか聞こえていないんだろうけど。
すると、目の前の女性は柔らかな微笑みをうかべた。
「ただいま…」
それからしばらくした頃、木のドアが開き、一人の女の子が入ってきた。
黒い瞳に黒い髪、そして目を引くのは星と花を筆で描いたような刺青。
ミルフィオーレの民はほとんどが逆三角を連ねたような痣を生まれつき持っているらしいけど、この子は違う。正直あまり見たことのない容姿だった。
その女の子はうつむき加減で、表情は曇っていた。
「お帰りなさい…ハル。コマドリさんは大丈夫そうよ。」
「はひ!本当ですか!?」
そのことを聞いた女の子――ハルちゃんは、少し表情が明るくなったように感じた。
「そうだ…ご飯…こういうの食べるかしら?」
そういってストロベリーブロンドの女性が、小箱から取り出したのは、活きの良い芋虫の数々だった。
…たしかに…普通のコマドリだったらこういうのはご馳走かもしれない。
でも…ボクは仮にも精霊であって…こういうのはちょっと…
「あら…食べないわね…」
彼女が首を傾げると、横からハルちゃんが手を差し出してきた。
ハルちゃんの手には、トラウベンの実がいくつも乗っている
「こんなのはどうでしょうか。ねえ小鳥さん。形が悪くて商品にはならないそうなんです。」
瑠璃色のトラウベンを口にすると、さわやかな甘味…。
こんなに美味しいのにもったいないなぁ…
ボクのかごは窓際に置かれることになった。
その窓から見る景色は森の中とはかなり違ってとても面白い。
広大なトラウベン畑や、小麦畑…人間はほとんど思うままに作物を増やしていた。
それは、ビャクランさんの様な神様のお仕事「創造」にかなり近い物だと思う。
そういえばビャクランさんが言っていた
「もはやこの国の中心はボクじゃなく人間なのかもしれないね」とはこういう事なんだろうか?
ボクを助けてくれた少女は、毎日くらい顔をして畑に出かけていく。
そして村の人たちと一緒に農作業をしているのだけど、明らかに彼女だけ作業の進みが悪い。
…ボクは何度も見た。
他の女の子達が彼女にわざと壊れて使えない様な農機具を渡しているのを。
何度も彼女を叩いたり殴ったりしているのを…
家の中では活き活きしている彼女が、始終俯いて涙をこらえているのを。






























もうちょっとしたら女の子達楽しそうにしてるから待っててね^^
僕ここらへんの読んでると泣いちゃうんだよね←