Nicotto Town


文字だけってツライ


『家政婦なら見れるかも』 2 ―弘徽殿―

 連れられて来られたのは、12歳くらいの少女だった。

「顔あげて。こちらへいらっしゃいな」
弘徽殿女御は驚いていた。まさか、子供とは。
落ちぶれた宮筋の未亡人、そんなのを想像していた。

自分の息子達と同年齢である。
彼らなら、今ごろ実家の庭を走り回っているはずである。

「はい。御前失礼いたします」
礼儀作法は完璧だ。しっかりとした教育を受けたのだろう。
ほほえんだ顔が愛らしい。何不自由なく育てられたように見える。
ここに居るべき娘ではない。屋敷の奥、多くの使用人に囲まれて……。

「宮筋の姫とだけ聞いているわ。どこの宮家かしら? お屋敷は」
―――パシッ。
急に扉が開いた。入って来た者に誰も驚かなかった。しかし、会話は止まってしまった。




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