Nicotto Town


人生カカト落とし


白貌の伝道師

アニメ『FATE/Zero』を見ていた時、上記作品のCMが流れて愕然とした。
やめたげてよ〜 その作品の宣伝をTVでやったらあかんやろ。

いや、放送しているアニメ原作者の作品を、提供する出版社が再刊するのだから宣伝したくもなるだろう。
けど、この作品については止した方がよかった。
かなりの率で読者がドン引く。

この話の作者の作品は、暗い・キツいといわれることが多い。
確かに、ただひとつの守りたいモノを抱きしめて駆け抜けた登場人物だけが笑って死ねる、つまり偽りやごまかしがある人物はテキメン不幸になる、難儀な作家ではある。
それでも「駆け抜けた」作中の人物たちにとって納得できる、希望のある結末(が存在していること)がほとんどだ。

 ※以下、作品の内容にふれます。見たくない方、回避をお願いします。

だがこの話はある意味、ほとんど唯一、尋常でないくらい救いがない。
いや、ある意味救われた人物もいるが、それも「見方によっては」で、それが救いかもしれないこと自体が酷い(というか、始まった時点で文字通り「終わっている」)。
これは、明らかな例外だ。

そうでなくても、ここしばらくでこの作者は変な先入観を持たれているのだ、微妙にズレている世の評価を補強しなくてもいいだろうに。

裏切りと殺戮の果て、命あふれる森が業火に沈み、破滅をもたらした者の哄笑が響きわたるのだから。

だがこの話は視点を変えれば、敬虔な求道者が、権力争いにうつつを抜かす同族とそのなかでの充分すぎる地位を振り捨て、神のため行動して偽善者たちに鉄槌をくだす、真摯な信仰の話なのだ。
ただ、信仰の対象が暗黒神なんだが(神を称えて「イアイア」言ってるしw)。

さかしまなありようであるにせよ、主人公の勝利に、ある種のカタルシスさえ感じる。
ネット等で主人公の名を挙げるのに、様づけの敬称で呼ぶ読者が多いあたりでその感覚は分かってもらえるだろうか。

キレイはキタナイ。キタナイはキレイ。
悪もそれをなす側からすれば、偽りない正当な行動であり得る。
暗黒神の使徒である主人公の姦計は、しかし、エルフと人間に互いをさげすむ偏見と不和がなければ意味をなさなかった。
異なる存在を否定しさげすみ、保身に汲々として信頼を寄せる者を傷つけあるいは殺すエルフや人間が薄汚く見えるのに対し、純粋な悪である主人公が爽快にさえ感じられる。

けど、さかしまの正義、真摯なまでの悪に想い入れることもある読者でなければ、感情移入の対象がない、胸糞わるい悪意と破壊の話でしかないはずなのだ。
一部の読者にしか受け入れられない、悪のカリスマの話だ。

それ以外は突出してはいないし、好きな人間だけ読んでいればいい、普通の出版社から再刊するにしても派手に宣伝するのはどうなんだ、と思った次第。
叩かれる理由にしかならない気がするんだよね〜

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2012/09/14 01:23
corraさん
……正直おなじ作者なら『アイゼンフリューゲル』あたりがお薦めかと。
救いがないんですよ、本当に。で、作者らしいかというと、らしいけどすこ〜しズレてるんで。
まどマギの後鬱だグロだと言われまくってて、「違う」と主張したいのに、これはさすがに否定しづらいのでw

絵夢さん
一冊で完結で、数が売れる話とも思えないので、後を考えての展開ではないと思うのですが。
悪とされる側にも、そちらから見た正義がある、というのは現実を鑑みても当然のことでしょう。
ほとんどの場合、とんでもないことをしていても人は悪を為していると考えて行動はしていません。
正義のため。必要悪。相手が悪い。……考えると憂鬱になれますね。

ながつきさん。
正直、この作者のお薦めはこれじゃない気がするんですが……
作者(常々書いている物が暗いのなんのと言われている人)が「駄目だ、愛が勝たない」と一旦書くのを止めた、ゲームにできなくなった(救いがないから)という代物ですから。
(『金の瞳と鉄の剣』よりはこっちかな〜、とは思うけど)
とはいえ、どれがと訊かれると、答えにくいのがなんともはや。
(もともと、年齢制限指定のあるゲームのライターさん、というのもありまして)
発想元が割と明確な話を書く人なのに、惹かれるところがあるのが不思議です。
ただこの作品は、それこそダークエルフとか、ゲーム臭のするやや紋切り型の設定になってしまっていて、文字のファンタジィが好きな人間としては喰い足りなさを感じます。
それより何より、普通に見るなら救いがないってのが問題なんですけどね……
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2012/09/11 21:31
いつか読んでみたいです。アマゾンの欲しい物リストに入れてきました^^
何かを絶対的に信じ切るがゆえの純粋な悪。魅力的ですね。
サルバトーレのダークエルフ・トリロジーも連想しました。
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2012/09/10 19:45
以前、悪の正義について話し合ったことがあるんですが、
そもそも悪に正義なぞあるはずもないと言う人が多かったのにはちょっと驚きました。
まあ、酒の席なので、内容は軽いものでしたが・・・。

一部ウケの作品は山とあるし、まあ、とりあえず一巻だけ、少しでも多く売れれば・・・でしょうかね?
二巻以降の刷数調整の目安を知るためとか。

ただ、こういう作品を知らしめる必要性というのはあるのかなぁとは思います。
犯罪性という視点では、他同様難しいですが・・・。
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2012/09/10 05:26
読みたくなってきました(涎(笑



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