Nicotto Town


文字だけってツライ


『家政婦なら見れるかも』 3 ―小春―

 現れたのは、1人の少年だった。

「えっと、爺ちゃんから手紙を預かってきました」
少年は立ったまま、ぶっきらぼうに言った。

後ろに立っている少年が誰なのかは、少女にも想像できた。
弘徽殿女御の息子だろう。今年で13歳のはずだ。

「来る時は、前もって連絡するように言ってるでしょう。
 私はいつでも会いたいけれど、それが礼儀なの。解かるわね?」
女御は呆れた顔をしながらも、皇子に優しく言った。

二人に遠慮して部屋の隅に寄った少女に、女御が声をかけた。
「そうね。あなたの名前は、春。小春にしましょう。
 小春、今日はもう下がっていいわ。明日からよろしく頼みますね」

――――少年は、少女の後ろ姿を睨むように見つめていた。




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