『家政婦なら見れるかも』 ４ ―小春―
- カテゴリ：自作小説
- 2009/07/10 23:28:06
（小春、か。安直な名前だ。どうでもいいけど）
少女は自室に戻ると、心の中で呟いた。
自室といっても、大部屋を仕切っただけだ。誰かに聞かれるとも限らない。
小春とは11月頃のこと。暦の上でも冬。
今は7月。この猛暑の中だ。小春日和を思い浮かべる人の方が少ない。
「春恋いし 小春日和を 待ちぬれば 秋風過ぎて 雪ぞ解けるる」
（我ながら適当な歌だ。他人のことを言えたものじゃないな）
あの時、次期皇太子にあたる第一皇子が来た。だから、東宮（春宮）の春。
皇子が成人するのは、2年後の15歳。成人式と同時に、皇太子の即位式。
その時、天皇と弘徽殿女御の関係は？ 梨壷の更衣は。……麗景殿女御は。
「おい、小春。お前、俺の家に居たよね？」
突然話し掛けられ、小春はギョっとして振り向いた。
