BL要素に注意です。



朝早く、大分明るくなるのも遅くなった。
それでも石畳の通りは市で賑わっている。
大通りは色とりどりの野菜や果物が所狭しとならぶ。

そんな光景を、パニエかごを右手で握りしめてふらふら歩く少年が一人。
エメラルドグリーンの希有な髪と瞳は澄んで、見る物を惹きつけるような神秘的な魅力を持っていた。
「じゃがいもとにんじんとタマネギ…全部そろいましたかねー」
野菜がずっしりと詰まったパニエを確認すると、彼には珍しい、優しい微笑みを浮かべた。
３週間の長期出張に行っていた先輩兼恋人が、今夜帰ってくる。
日に日に肌寒くなるこの季節だからこそ、暖かい物を食べて欲しい。
そう思って、普段はほとんど外にも出ない少年――フランは市に足を運んだ。
料理はあんまりしたこと無いけど、簡単な煮込みなら出来るはず…
そんなことを考えていると、目の前を見慣れた人影が通り過ぎた。
絹糸のように、細く長い綺麗な銀髪。
まさしく…

（スクアーロ…隊長…！？）

よく見ると、胸元には真紅のリボンが付いた酒瓶をそれはそれは大事そうに抱えていた。
（そういえばそうでしたねー…）
明日は、我らがボスの誕生日。プレゼント交換などどいう風習はヴァリアーには無いが、毎年
パーティーという名目の宴会が開かれる。
銀髪の彼――スクアーロもまた、ただの上司では済まない大切な人に、贈り物を買ってい最中なのだった。
（意外と仲良しさんなんですねー…）
フランもまた、手料理を食べさせたい相手を思い浮かべる。
（喜んで…くれるでしょーか…？）
多少の不安とドキドキを感じながらも、フランアジトへの帰路を行く。
さっきまで重かったパニエも、不思議と軽く感じる。

全ては、愛しいアナタのために。
あげたい気持ちは誰しも同じ。


おまけ

ここはヴァリアーのアジト。貰った合い鍵を使ってベル先輩の部屋に侵入して、勝手に個室の簡易キッチンを使っている。
目の前でくつくつと音を立てているのはミネストローネというイタリア料理。
カラフルなリボン型のパスタを入れて、長時間煮込んだ物だ。
「そろそろですかねー…」
そう呟きながら赤いチェックのエプロンを後ろ手で外そうとしたとき、ガチャリとドアが開いた。
「ん～？フランいんの…？」
「ベルせんぱいっー！」
「わっ！」
ドアを開けて入るベル先輩に、思わず飛びつくと、バランスを取れなくなったベル先輩を押し倒してしまった。
「……」
唖然とするベル先輩を上から見下げて…
「うわー血だらけじゃないですかーミーにまでべったりですー」
「あーコレ？だいじょーぶ全部敵のだし♪」
「そういう問題じゃないですーはやくシャワー浴びてきてくださーい。」


シャワーから浴びて服を着替えたベル先輩は、めざとくミーが煮ていた鍋を見つける。
「おー何コレ？お前が作ったんだ？」
「はいー食べましょー？」

深めのスープ皿にミネストローネを注ぐと、ほわほわと湯気が立つ。
「フランって…料理できたんだな…」
「意外ですかー？これでも器用なんですよー？…でどうですかー？」
「ふつーに美味い。」
「ふつーってどんなですかー…」

あたたかな料理と、大好きな人。
これ以上幸せで暖かなものが他にあるでしょーか…？
あたたかさに包まれたら、一緒に眠って…

あしたもきっとあなたと一緒の朝を迎えるんですね。


今回、使った資料が莫大です。

まず、ミネストローネのレシピ、イタリアの町並み、バスケットパニエの写真…
その他色々。
フランがミネストローネに入れたパスタは、「ファルファッレ」といいます。
…あんまり煮込みには使わないけど、可愛かったので。

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