繊細な細工が施された重厚な扉を、大きく開け放つと、事務机に座ったままで眠るザンザスの姿があった。
性に合わないと嘯いていたデスクワークをほったらかしにしてふねをこいでいる。

「う゛ぉおい…寝てやがるのか…？」
普段ああも戦いの前線に立ち、泣く子も黙ると言われている彼が、こうも無防備に眠っている様子を見てスクアーロは少し暖かい気持ちになる。
気持ちよさそうに寝ているのを邪魔しても悪いと思ったスクアーロはザンザスの部屋を立ち去ろうとした。…そのとき。

「待て…何所に行く…？」
いつの間にか目を覚ましたザンザスの大きな手が、スクアーロの服をしっかりと掴む。



「ザ・スコッチの１７年物か…悪くねぇ。」
クリスタルグラスのリーデルを片手に、ウイスキーを煽るザンザスを見て、スクアーロは安堵した。
一年に一度の行事だけにザンザスへのプレゼント選びを、彼は悩みに悩んでいた。
最良のプレゼントを選べただろうか…と。

「てめぇも…飲め。」
自分が飲んでいたリーデルのウイスキーを２，３㎝残して、スクアーロに差し出す。
「遠慮しとくぜぇ。てめぇの誕生日祝いだろぉ？」
やんわりと断ると、ザンザスは「ふん」と不満そうな声を漏らした。
しゅるり…ウイスキーの瓶に結ばれていた真紅のリボンを外し、スクアーロの右手首に結びつける。
「何だぁ…？」
首を傾げるスクアーロを余所に、ザンザスはスクアーロの唇を奪う。
とろり…いつの間にかウイスキーを口に含んでいたザンザスは、口の中のウイスキーをスクアーロの口へ流し込む。
突然度の強い酒を流し込まれたスクアーロの頬はたちまち紅に染まり、くらぁりと意識も怪しくなる。

「ふっ…いい顔してんじゃねーか…プレゼントは…てめぇ……だろ？…tesoro.」
「なっ…何言ってやがる…」
そう否定するも既に遅く…
すっ…とスクアーロを抱き上げたザンザスは、そのまま執務室から自室へと向かう。

「覚悟してろ…principessa…」



夕日がとっくりと沈み、イタリアが闇に包まれた頃。
ヴァリアーの隊員達は、年甲斐もなくはしゃいでいた。

「結局…ボスの誕生日にかこつけて、皆さん飲んで騒ぎたいだけじゃあないですかー」
ワイングラスを片手に煽りながら翡翠の少年は嘯く。
「まー毎年のことじゃね？…それにしても主役とロン毛がいねーな。」
金髪の少年は、まだ手の付けられていないピッツァをつまみ食いしながら答える。
「まーどーせあれでしょー？よろしくやってんですよー。」
「あー…あり得るな…」
「あれー？ベル先輩知ってたんですかー？あの二人が…」
「知ってるも何も…フランより長くヴァリアーいんだぜ？嫌でも気づくっつの。」
そのとき、アジトの外で、お腹まで響く爆発音が聞こえた。
「敵襲！？」
其れをきいたレヴィは、肩をびくりと跳ねさせて振り向くが…そうでは無いらしい。
「は…花火…！？」
その場にいた全員が、大輪の花火に圧倒されていた。

大食堂の扉が開いて、スクアーロが飛び込む
「う゛ぉおおおおおお　い！今夜は無礼講だぜぇ！！俺の酒がのめねぇってのか！！？？」
「おおおおおおー！！」
普段より２倍高いテンションに圧倒されるも隊員達の歓声が沸く。
後ろから入ってきた、本日の主役、ザンザスも、だるそうに席に着いた。
パーティーの幕開けである。

「…なんなんですかーこのテンション…絶対酔ってるでしょー？…」
「まーだろうな。どうする？このまま酔っぱらいの相手すんのも疲れるし、俺らは部屋もどろーぜ？」
「先輩それが目的じゃないですかー？まあいいですけど。」

ベルはフランを連れて部屋から去る。

暗殺部隊・ヴァリアー達の夜は、久方ぶりに活気づき、過ぎていった。




おまけ。

ベル「お前幾つだっけ？」
フラン「トップシークレットですー。でもまあワインはフランスならちょっとくらい未成年でも普通に飲みますから大丈夫ですー。」

お酒は二十歳になってから。未成年の飲酒は犯罪です。

フラン「いやー一応マフィアなんでもう既に犯罪者ですけどねー。」


おまけ２

フラン「それにしても、花火なんて豪華じゃないですかー」
ザン「花火代金は経費で落とす。領収書はボンゴレ１０代目名義にしろ。」
スク「おい…」



Q．何故ウイスキー？
A．何となく似合いそうだったから。あとは趣味。

というわけで　Bon compleanno!!

話は変わりますが（変わってないってか？）天野月子様の「鮫」という曲をBGMにして書き上げました。

http://www.youtube.com/watch?v=ttuXjqrb39c
名曲です！！

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