【『侵されざる者』(ダイアモンド)】
- カテゴリ:自作小説
- 2008/10/04 04:33:21
その災厄は、最初は些細な病の形で現れた。
全身の倦怠感と、長く続く微熱、が主な症状のその病気は、ありふれた風邪のように思われた。
しばらくして、統計に異変が現れはじめた。
男児の出生数が女児よりも少ない年が連続した。
調べてみると、自然流産の数も、わずかに上がっていた。
異変が現れ始めて三十年後、男児の出生数は、女児の七割にまで落ち込んだ。同時期に、不妊女性の二割に、仮性半陰陽があることがわかったが、その事実が大きく報道されることはなかった。
五十年後。あるウィルスが研究者によって分離された。そのレトロウィルスは、空気中では存在できないほど脆弱な殻しかもっていなかったため、きわめて感染力が弱かったが、致死性がなく、暗黒期が極めて長いために、キャリアは――個人差はあるが――長期間ウィルスをまき散らすことがわかった。
「ヒト胎児女性化ウィルス」と研究者によって命名されたそのウィルスは、女性の体内において、男性ホルモンの生成を阻害する働きを持つ、と発表された。見掛け上の男児の出生数の減少は、このウィルスによるものとされ、ウィルスのキャリアである女性は、妊娠時に胎児の染色体検査を受けるように勧められることとなった。胎児が男性の染色体をもっていた場合、男性ホルモンの補充のため管理入院が必要になるからだ。
追い打ちをかけるように、そのウイルスが、生殖細胞に寄生することが発表された。つまり、このウィルスは、遺伝する虞がある、と。
世界中がパニックになった。
正常な男性の数は、全人口の三割に満たなくなっており、特に、生殖年齢の男性の九割近くがこのウィルスのキャリアだったからだ。
このままほおっておけば、いずれ男児の出生数がゼロになる日がやってくる、と。
それは、遠からず、人類が滅亡することを意味しているのではないか、と。
すでに一夫多妻制が暗黙の了解として容認されていたが、人口の減少は止まらなかった。不妊ではないにもかかわらず、生計を維持するために働かなければならない女性が半数を占めていたためである。
ウィルスの発見から十三年後、ウィルスの働きを阻害する薬が開発された。
その半年後。ある論文が学界誌に発表された。動物実験において、同一個体内に安定的に精巣と卵巣を発生させる手法を開発した、という内容だった。
ウィルスの発見からさらに二十年。人口の減少によって、社会はしだいに停滞していった。
そんな時、ある地域で大地震があった。建造物の倒壊は甚だしかったが、直接の死者は十名に満たなかった。ただし、その死者はすべてとあるバイオ研究所の職員だった。
その研究所では、ウィルスを用いた遺伝子治療を研究しており、施設に倒壊により、ウィルスの拡散が危惧された。が、幸いな事にウィルス研究施設は倒壊を免れ、そのまま施設は封鎖された。しかし、研究所に併設された病院は、倒壊がひどく、治療中と思われる患者が十数名は近くの病院へ移された。搬送された先の病院で、彼女たちの大部分が身元不明である事がわかったが、その後の余震でその病院も倒壊が危惧されたので、ほかの患者たちと一緒にさらに別の病院へ移送されることになり、そのどさくさにまぎれて、彼女たちは姿を消した。
「天使計画」「聖母計画」と記されたファイルが、研究所のがれきの下から発見されたのは、地震から十数年の後だった。発見したのは、研究所から逃げた患者の一人だった。
正確には、妊娠していた患者の胎内にいた、胎児、だった。
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これは、
今妄想中の、
ファンタジー小説の
前置きに当たる部分です。
整合性が取れているかどうか、
人が見て面白そうだと思うか
不安なのでアップしてみました。
足跡からお邪魔させていただきました。
まぷこさんの小説、一目惚れですvというか…レベル高すぎてニコタにこんな人居たんだ!と素直に感動していますッ><
そして今回お気に入りにさせていだだくのと、私のサイトにてまぷこさんのブログをリンクさせていただきたく、ここにコメントさせていただきました^^
ものすごい過去記事にコメントで大変恐縮ですが…リンクOKならお返事お願いいたします(ブログの方にはリンクフリーとか書いてなかったので…;;)
ではでは小説、この先も楽しみにしていますv
突然のコメント失礼しました<(_ _)>
陳腐な言葉で申し訳ないけれどw
タイトルを見ると先が知りたくなりますねぇ。