Nicotto Town ニコッとタウン

スマホ版あります♪



宇宙ゴミになったクズト 4

クズトは目を開いた。
視界に映しだされたものは無数の星だった。
黒いスクリーンの前に散らばめられた極小のビーズのように薄く輝いていた。
クズトは一人で宇宙を漂っていた。
耳に入る音は、自分の呼吸する息が喉を通り口で共鳴する、吸うときの静かな「ハー」と、吐くときの低く長い「ハー」の繰り返される小さな風の音だけだった。
呼吸をしている音だけが、この宇宙でまだクズトが生きている証となっていた。
目線を足元にやると、黒く大きな丸いものが見えた。夜の地球だ。
球のふちにそって周りが少し薄青白く輝いている。
地球の向こうには、白くまぶしく光る太陽があるのだろう。
クズトは静けさの中に繰り広げられた大宇宙のパノラマを見ながら、何もできない小さな生き物である自分をただの微生物のように感じていた。

クズトの生命維持システムのバッテリーの有効時間は後二時間になっていた。
酸素は二次酸素パックがあり二時間以上はもつ。
いずれにしても、目を閉じて再び眠ればもう目を開ける事はできないだろう。
生物を生み出した宇宙のなかで、ただの物体に返る自分を前に、この状態を抜け出すために何を考えるべきかという自問はクズトには愚かな事に思えた。

クズトの頭に浮かぶものは、自分の肉体がどうなっていくかだった。
これまでにクズトは宇宙事故で死体になった人間を宇宙ゴミとして回収した事が二回ほどあった。
いずれも宇宙服を着た状態だったが、地球を何年も周回しているうちに太陽光線のあたるたるところでは、150℃。あたらないところでは-120℃の温度で蒸されたり冷凍されたりして表面の細胞はゾル化しゾルビになっていた。
今回のミッションでも一遺体を回収していた。
その遺体は宇宙服を着せたまま、宇宙船『ミルキーウエイ』の倉庫に保管されていた。
おそらくクズトの肉体は宇宙服の中で凍ったまま宇宙をさまようことになるだろう。
クズトは冷凍状態になった自分の姿を思い浮かべていた。
そして誰が回収してくれるのだろうと思った。

クズトはリサ大佐の事を思い出した。
無重力での抱擁はいろいろな体位を楽しむことができた。
クズトは思い出しながらニヤリとしたが、肩の痛みにすぐに顔をしかめた。
生命維持システムのバッテリーが切れれば凍死が待っている。
再び宇宙を目にしたクズトはその静けさに叫び声を上げたくなる衝動が心の底からわきあがり叫んでしまった。
「わぁーつ」
その叫びは宇宙服の中では聞こえるが、空気の無い外には響かなった。


宇宙船『ミルキーウエイ』では、アンテナの修理も終え船長リサ大佐は地球との交信を開始していた。
「こちら、宇宙船『ミルキーウエイ』、地球のジェイセンター応答願います」
「・・・・・・」
「こちら、宇宙船『ミルキーウエイ』、地球のジェイセンター応答願います」
「・・・・・・」
船長リサ大佐は無線交信を続けた。
しかし地球の宇宙船の運航を管理しているジェイセンターが応答しない。
宇宙船『ミルキーウエイ』の無線がまだ故障しているのか、地球で何かが起こったのか船長リサ大佐は判断できなかった。
異常は『ミルキーウエイ』の倉庫で起こっていた。

つづく


#日記広場:自作小説

アバター
2009/09/18 11:49
スイーツマンさんコメントどうも。
無機質の宇宙と有機物の人間。
人間は宇宙の中の小さな化学工場のようなものです
物質の供給が止まると停止します。
そして無機物に。
伝説の勇者になるか
無名のゴミになるか
物語しだいですね。
アバター
2009/09/18 08:33
壮大な宇宙に一人とりのこされるということは孤独ですねえ。リサ大佐がなんとかしてくれるのか、題名通りはてるのか続きがきになるところです。
アバター
2009/07/12 23:35
藍姫さまいつもどうも。
壮大な宇宙に比べると、
人間も今の時間も小さな物でしかないですね。
宇宙に行けば人生感かわるかもです。
アバター
2009/07/12 22:12
クズトも心配ですが、リサ達にも危機が迫っているんですね!
うわぁ、次は、どうなるんでしょう。
宇宙って、何があるか分からないから怖いです。
でも、だからこそ、人は魅せられるんでしょねぇ~ (●^ ^●)
アバター
2009/07/12 18:23
なぎさおねえさまコメントありがとう。
宇宙のビデオだいぶ見ましたが想像がつかないので
ゾルビに逃げました。
アバター
2009/07/12 18:12
ゾンビじゃなくて・・ゾルビがなにか やらかすのですね
ちょっと怖いような・・それでいて 一縷の望みを捨てきれないような・・
宇宙で息絶える・・ってことは ひょっとしたらこの世の中で一番素敵な埋葬かも知れない
死後冷凍されたまま 宇宙空間を旅してるなんて・・思っただけでも心が震えてきそう・・
でも クズトは・・助かって欲しいなぁ~
第5話に続きますか・・楽しみにしてます^^



月別アーカイブ

2017

2016

2015

2014

2013

2012

2011

2010

2009


Copyright © 2026 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.