Nicotto Town


文字だけってツライ


『家政婦なら見れるかも』 5 ―小春―

 声の主は、先ほどの皇子だ。

「殿下。わざわざ、このような場所においで頂き……」
「挨拶はどうでもいいよ。お前、俺の家に居ただろ?」

『俺の家』とは、皇子が暮らしている右大臣家のことだろう。

「屋敷の者が話してるのを聞いたんだよ。
2ヶ月くらい前から、知らない姫が暮らしてるって」

「わたくしは、殿下に姫などと呼ばれる身では……」
「とぼけるなよ!! とにかく、俺の家に隠れるように住んでた。
無理矢理に連られて来たのか、匿(かくま)って貰ってたのかは知らないけど。
それで俺はこっそり見に行ったんだ。チラっと見ただけど、確かにアンタだった」

小春は、黙って皇子の話を聞いていた。




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