『家政婦なら見れるかも』 5 ―小春―
- カテゴリ:自作小説
- 2009/07/13 02:35:10
声の主は、先ほどの皇子だ。
「殿下。わざわざ、このような場所においで頂き……」
「挨拶はどうでもいいよ。お前、俺の家に居ただろ?」
『俺の家』とは、皇子が暮らしている右大臣家のことだろう。
「屋敷の者が話してるのを聞いたんだよ。
2ヶ月くらい前から、知らない姫が暮らしてるって」
「わたくしは、殿下に姫などと呼ばれる身では……」
「とぼけるなよ!! とにかく、俺の家に隠れるように住んでた。
無理矢理に連られて来たのか、匿(かくま)って貰ってたのかは知らないけど。
それで俺はこっそり見に行ったんだ。チラっと見ただけど、確かにアンタだった」
小春は、黙って皇子の話を聞いていた。