Nicotto Town


文字だけってツライ


『家政婦なら見れるかも』 6 ―敦良―

「屋敷の者達は、お前を丁重に扱ってたけど、どこか敬遠してる感じだった。
それで、お前、叔父上の隠し子なんじゃないか……って……」

小春は肯定も否定もせず、こう尋ねた。
「それは誰が言ってたんですか? 殿下の乳母兄弟?」
皇子は「違う!! 俺の考えだ」と怒鳴ったが、どうやら当たりらしい。

「もし、皇子の叔父様が、自分の娘を隠して何をするのでしょう。
娘の母親の家から連れ去って、無理に結婚させるとか?」
「そうなんじゃないの?」
「結婚する相手は? 私は12歳ですけど」
「そりゃ、長男の伯父上に対抗すべく、皇太子と結婚……って、あああ」
皇子は顔を真っ赤にして、あたふたし始めた。

「からかわれたのです」
小春はサラっと言った。
「冗談とはいえ、殿下から結婚のお話が出るとは。身に余るお言葉です。
この幸せ、大切に胸にしまっておきます」
小春そう言ったが、本心は怪しいものである。


弘徽殿女御 第一皇子 敦良(あつなが) 13歳。 小春 12歳。
これが、二人の奇妙な関係の始まりだった。




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