モンスターハンター 騎士の証明~36
- カテゴリ:自作小説
- 2012/10/31 10:04:02
【凍りついた過去】
息も絶え絶えの一匹のアイルーがロックラックハンターズギルド本部前にたどり着いたのは、砂漠の大都市が宵闇に沈みかけたころだった。
「……ふぅむ」
ジンオウガ装備の白いアイルーが携えてきた書状を、腰かけた執務机の上でじっくりと読みながら、ギルドマスターはひとりうなずいた。
「これは少々、厄介なことになってますねぇ」
「どういうことですか?」
尋ねたのは、同室していたブルースだ。ほかにも、今回の事件の協力者である王立古生物書士隊のトゥルーとランファと彼女達のオトモ、ギルドナイツ副長のティオ、それに本件の重要参考人である密猟団首領のギーレルも特別に在室している。もちろんギーレルは仮にも犯罪者なので手錠がかけられていた。
「ロジャーさん達が交渉兼潜入捜査に向かったエルドラ公国の内情が、こちらの予想以上によくなかったんですよ」
ギルドマスターは、かいつまんでブルース達に事情を説明した。
いわく、エルドラ公国が鎖国状態であり、ハンターとモンスターに対して大きな偏見と差別意識があること。そのため、モンスターに領土を荒らされていても、ギルドに救援を求める気がないこと。
「よって、ロジャーさん達は独断でエルドラ領内を徘徊するモンスターの排除に踏み切ったと、手紙にはありますね。幸い、エルドラのジル将軍が正式な依頼主になってくれたとありますし、そこで狩猟に協力してくれる心強いハンターが2人いるそうですが」
「だから……一刻も早く救援を……! そのためにオレは来たんだニャ……!」
「ランマルしゃん! まだ寝てなきゃだめでしゅ!」
長椅子に横になっていた白いアイルーことランマルが、苦しそうに喘いで起き上がろうとした。少しでも彼の熱を冷まそうと、うちわであおいでいたトゥルーのオトモのアンデルセンが、慌てて彼を抱きとめる。
「オレは大丈夫だニャ……それより、一刻も早く支援物資を届けないと、オレの旦那達が苦しい狩猟を強いられるニャ。頼む……っ!」
そう言ったものの、ランマルは力尽きたようにアンデルセンに身をもたせかけた。並のアイルーを超える驚異的な速さで地下の道を駆けてこられたのは、ただユッカ達を助けたい一念によるものだった。
「まあ、お待ちなさい。準備はすぐにさせましょう。でもその前に状況を整理しないとね」
ティオが落ち着いた笑顔で安心させると、ギルドマスターもうなずいた。
「ロジャーさん達には、あくまでエルドラの内情だけ探ってもらえればよかったのですが。独断でモンスターの狩猟に踏み切ったのは、ちょっとまずかったですねぇ」
「異論はありません。彼にしては気が逸りすぎましたね」
ティオが、いつもの表情が読めない淡々とした微笑で同意する。ロジャーのやり方が間違っていると言わんばかりだ。お言葉ですが、とブルースはあえて尋ねた。
「どうしてそう思われるのですか? ロジャー隊長はエルドラ国の窮状に黙っていられなかったのではないですか? 目の前で助けを求められたから早急に手を打とうとしたのでは?」
「その意気込みは大変正しい。でも今回に限っては、その判断は誤りでした」
怒りも責めもせず、ギルドマスターはばっさりとブルースの言を切り捨てた。
「――我々ギルドが今までエルドラ公国に積極的にかかわってこなかったのは、ある理由があるからです」
「理由、ですか……?」
「もう10年も前の出来事ですからね。あなたが知らないのも無理はありません。何より、この事実はギルドでも私とティオ、ほかの要職者数名が知るのみですから」
「――よろしければお教えいただきたいのですが」
ブルースに見つめられ、ギルドマスターはティオと目を合わせた。そしてうなずいた。
「エルドラ公国――いえ、公国成立前に存在していたガル国にはね、大きな借りがあるんですよ。我々ギルドの暗部ともいうべき歴史がね」
ギルドマスターは、珍しく苦い微笑を浮かべた。その時、今までずっと沈黙を守っていたギーレルの顔色が変わった。
「……ずいぶん平然と言ってくれる」
「ギーレルさん?」
トゥルーが驚いてギーレルの顔を覗きこむ。一瞬、息を呑んだ。それほどの怒気と自責がないまぜになった表情だった。
「わかっている、ここでお前達を責めることが理不尽だということは。だが、お前達が見捨てなければ、あのような惨劇は起こらなかったはずだ……!」
「どういうことですか? 見捨てたって、何が?」
ランファも青ざめる。ギルドマスターは形だけの微笑を作り、ギーレルを見た。
「ブルースの調書で知ってましたよ。元ガル国親衛隊長、ガレン・ハドウルフ殿。ここに同席することになったのも、ある意味運命なのかもしれませんね」
ギルドマスターは執務机から飛び降りると、ギーレルの前にとことこと歩み寄った。子供の背丈しかないため、必然ギーレルを見上げる形になる。
「竜人族は年を取ると背が縮むものでね。見上げるご無礼をお許し下され。ですが、ガレン殿。私は決して、十年前の決断を間違ったものとは思っておりません」
「……」
ギーレル――ガレン・ハドウルフはぎりっと歯を噛みしめた。しかし、声を荒げることはしなかった。手錠をつけたまま膝をつき、竜人族と目の高さを同じにする。済みきった青い目がガレンを見ていた。
「ハンターの命を守ることも私の役目です。それでも私はあの時、ギルドの大切なハンターを守れなかった」
「――それが言い訳なのか! 我らはあの時、ハンターに希望を託したのだ。それなのに、彼らは……!」
言葉を吐くと、ガレンはがくりと頭を垂れた。泣いているようだった。薄暗い室内に重い沈黙が降りる。
ギルドマスターはしばらくガレンを見つめていたが、やがて一同を見渡した。
「ブルース。それにみなさん。……少し、昔話を聞いてくださいね」
――どうすれば、僕もあなたになれますか!?
少年が、泣きながら赤い騎士にすがりついていた。
彼の後ろには、血まみれで倒れる3人のハンターがいた。すべて息を引き取っていた。
騎士は無言で少年の手にしている双剣を見た。二つとも刃が折れていた。折ったのは騎士だ。少年が手にした剣で仲間に斬りかかるのを、彼が止めたのである。騎士の装備する片手剣の一振りで。
ハンター達を斬り伏せたのは騎士だった。彼は裁きを行うためにここへ来たのだ。
少年はひたすら、彼になりたいと思った。そうすれば自分の正しいと思うことができるようになるから。
騎士は、しばらく悲しそうに少年を見つめていたが、しばらくして、穏やかな口調で告げた。
――あなたがその気持ちを忘れなかったら、また会えるでしょう。
「……夢か」
ロジャーは重苦しい吐息で目を覚ました。固いベッドに横たえた身体が粘っこい汗に冷えて、ひどくだるい。じわじわと指先に感覚が戻るのを待ちながら、ぼんやりと先ほどの光景を思い返していた。
十年前の自分の夢だった。
ランマルは男らしいネコですから…。むしろ犬に近いネコですww
ミランダと組んでいたころはベタベタ甘えモードがありましたけど、今は性格が変わってハードボイルドになってますね。彼に許可を求めるか、そうですね、寝てる間なら許してくれるでしょう(笑)
続きが気になるとおっしゃってくださって、ありがとうございます^^
いえいえ、1週間に1回アップは必ず守りますよ。でないとサボり癖がついてしまうので。
それに、間違ってるとわかっていても踏み出さないと小説は書けないものですね。
どうぞ、次回もお楽しみにしていただければ幸いです。よろしくお願いします^^
続きが非常に気になりますっ。
しかし、どうかご無理はなさらず筆をお取りください。
続きは大人しく待っています。
ランマル、頑張りましたね。お疲れ様でした!
ユッカ達が心配でしょうけど、まずは休んで体力回復してほしいです。
(眠っている間なら、ちょっとくらい撫でてもいいかしら?笑)
ギルドの歴史も、ロジャーの夢も今後の展開が気になります。
今回は『気になります』ばかり言ってますね(^-^;
あっはははww
ぬこって怖~!ですよwww
ほんとに大変ですねえ。コメント見て噴き出してしまいました(笑)
あ、でも、機嫌がいいときは甘えてきてくれるんですね。よかったよかった。
つまりあれですね、「自分が良いときは触らせてくれるけど、それ以外は許さない」っていう。
長年来の疑問だった、「猫が女性にたとえられる理由」が、よーくわかりましたwww
私が見た資料はこれです。同じくモンハンwikiの
http://wikiwiki.jp/nenaiko/?%C0%A4%B3%A6%B4%D1%2F%A5%AE%A5%EB%A5%C9%A5%CA%A5%A4%A5%C8
この記事の、
>•ギルドを守り、ハンター達を統括するためのギルド直属組織「ギルドナイツ」に任命された
特殊なハンター。表向きはギルド専属のハンター、しかしその実は対ハンター用ハンター。
モンスターではなくハンターを狩ると噂される存在。
その全貌は謎に包まれており、この世界では一種の都市伝説と化している。
ここに、ギルド直属組織って書いてますね。
イカズチさんのご記憶はファミ通の公式小説の設定なのでは?
私は全部それを読んでいないので、そこはわかりませんが。
ともかくは、上の資料をもとに書いてますので、問題はないかと。ご心配ありがとうございます^^
ロジャーもいろいろありますけど、最後はちゃんとハッピーエンドなので大丈夫です。
彼がいつも笑顔を浮かべる様は…誰かに似ていると思いません?
そこが、ロジャーとユッカを繋げる糸でもあります。それはこの先描かれます。
さてこの先が大変で…(どう書くべきか)
どうすれば面白くなるのかなあと。
ロジャーを牢屋から出す手段とかに、もう2か月迷って決断できず。
どう書いても優しいイカズチさんたちは納得してくださるんだろうけど、自分が納得できないという感じです。
面白く書くって難しいものなんだと、先週のルパン3世スペシャルを見てつくづくそう思いました。
(アレの出来がすごく悪かったから、見ていた自分も落ち込んでしまった…)
時には『シャー!』と威嚇もされます。
まぁ……膝に乗ってくるとひっくり返して『お腹くるくる』『肉球プニプニ』『頬すりすり』するので。
『お前が悪い』とよく言われます。
愛猫家に行動の自由を!
モンハンwikiだったと思いますが『ギルドはナイトの存在を公式には認めていない』とあったような?
でもこれは『周知な事実』または『実しやかな噂』はたまた『みんな知ってるけど知らんぷり』と言うやつでしょう。
汚れ仕事もやるナイトを公認しないギルドの態度も頷けるっちゃあ頷けますが。
本作の設定を阻害するものでは無いと思いますよ。
トラウマを抱えたまま表面上は笑みを絶やさないロジャー。
過去が悲惨であればあるだけ悲しいですねぇ。
出来れば克服して自分に納得できる理由を見つけて欲しいものです。
イカズチさんの飼われているにゃんこ君たちって、みんなイカズチさんのこと引っ掻いてしまうんですか?
そ、そんなことないですよね…?^^;
って、引っ掻かれてもめげずに愛するイカズチさんのほうが健気ですよwww
今回はつなぎの回で…ともかくはランマル到着です。
忠義厚い彼を、どうかなでてやってください。
えっ、ナイトってギルド公認じゃなかったんですか!?Σ(゚Д゚)
各ギルドにそれぞれ12名ずつ在籍する始末屋的な存在らしいんですが…辞典によると。
私の作品では、その設定にもとづいて書いてます。ゲームでは正式に顔を出さないし、これは2次作品ですし、そういうことでよろしくお願いします^^;
ロジャーの夢は、その通りトラウマです。
そのトラウマをまだ乗り越えてないんですよ。
この小説は、彼の心の旅路でもありますね。
さて、この次はどう書くべきか…まだ迷っています^^;
うっ、うっ、健気じゃのぅ。
抱っこしてあげたい……。
でも引っ掻かれるんだろうなぁ、ウチの子みたいに。
ギルドの暗部。
元々ナイトはギルド自身も存在を公式には認めていない影の組織ですからね。
こう言う暗黒歴史も多々存在するんでしょう。
にしてもロジャーも関わっているようで。
彼の人格形成に関わる……トラウマにならなければ良いのですが。