Nicotto Town


黒曜のアジト


【フラベルフラ】マドンナ・リリィ

BL、結婚式ネタ注意。
多分10年後。マーモンは生きてます。

森の中の、比較的開けた所にその教会はあった。
煉瓦造りの赤茶色い建物に、純白の雪が化粧をして、暗闇でも青白く光る。
重い木の扉に両手を掛けて押すと、ギギギ…と鈍い音がして開いた。
中を見渡すと、壁ほぼ一面を飾るステンドグラスを月明かりがぼんやりと照らし、色づいた光が床に射し込んでいた。
教会の中は蝋燭の光だけを光源としていて、薄暗い。
だけど、その数本の蝋燭が今はとても明るく、爛々と輝いているように見えた。
視線を祭壇の方に移すと、見慣れた蛙の被り物に、澄んだパライバグリーンを身に纏う少年が立っている。
「おいフラン、いきなり呼び出してどうしたんだ?」
そう声を掛けて振り向いたフランは、自信ありげに微笑んだ。
髪と揃いのパライバグリーンが暗闇の中だというのに輝いて見える。
「センパイー来てくれたんですねー」
「あー…つーかこんな所に呼び出して何の用?」
「…実は、コレを渡したかったんですー」
そう言ってフランが両手の平に掬うようにして持っているのは、小さな箱。
フランがその箱を開け、銀色に光るその環を取り出した。
「指輪…?」
「はいー…ミー達、結婚は出来ませんけど…受け取ってもらえませんか?」
そういってフランはオレの薬指に銀の環をはめた。
サイズはぴったりで、どうしてかずっとはめていたかのようになじむ。
寒さか、それとも他に理由があるのか…ふるえる手で何とか同じようにフランの細い指に指輪を通す。
「…あっ…たりまえだろ…むしろオレが言うつもりだったのに…先越しやが…って…」
とぎれとぎれにでてきた言葉は精一杯の強がりだった。
思っても居なかったフランからのサプライズに僅かに目の前が滲んだ。
「…っく…」
「泣いてるんですかー?」
「泣いて…ねぇし。」
「ねえ…しってますかー? 
『愛は忍耐強い。愛は情け深い。ねたまない。愛は自慢せず、高ぶらない。礼を失せず、自分の利益を求めず、いらだたず、恨みを抱かない。不義を喜ばず、真実を喜ぶ。すべてを忍び、すべてを信じ、すべてを望み、すべてに耐える。』
つまり、愛は何にも負けないんですってー。…ミーは神様なんて信じてないですけど、センパイへの愛なら誓えますー。」
「…当たり前だろ。…オレも誓う。」
目の前にある二つの瞳を見つめると、その瞳もこちらを見つめた。
「…誓いの…キスを…」
そう、フランが言って、オレが誘われるようにフランの唇に唇を寄せた。その瞬間――
「ちょっと待ちなさいー!!」
教会の扉が勢いよく開き、入ってきた甲高い声の主。
「夜中に任務でも無いのに出かけていくからどうしたのかと思ったら、…面白い物がみられたわ。」
「ルッス。」
そういって頬を赤く染めるルッスーリアをよそに、そばで立っていたマーモンが続ける。
「結婚式なら、こうでないとね。」
マーモンが握った両手をぱっと開くと、オレとフランに白い花びらが降り注いだ。
――次に自分の体を見ると、純白のタキシードが着せ着けられている。
隣を見ると、同じようにフランも格好が変わっている。
「おーマーモンセンパイさすがですー。」
「つーかいつから見てたんだよ。」
そう問うと、マーモンはふっと笑って答える。
「僕とルッスは最初っからだよ…その格好はプレゼント。結婚式ならそのくらいちゃんとした格好をしないとね。
…それともどちらかがドレスの方が良かったかい?」
「いやーベルセンパイに着せたらそれはそれで可愛いとおもいますけどー」
「いや、お前が着た方がよくね?」
お互いがお互いのドレスを想像して、そう言っていると、マーモンがため息を付いた。
「収集付かないな。」
そう呟きながら。
「う゛ぉおおおい”!!おまえらぁ!!無断外出はやめろと何回行ったら気がすむんだぁぁあ!!」
教会中に響き渡る轟音。白銀の髪の毛を揺らした彼は、教会でたたずむ二人と、ルッスーリアが抱えたマドンナリリィの花かごを見てきょとんとした。
「…お前ら…聖母のちぎりかぁ?」
聞き慣れない言葉に、その場にいた全員が疑問を浮かべる。
「…ちげぇのか。…じゃあなんだそのマドンナリリィは。」
「あら?綺麗だったから摘んだだけなんだけど…何その聖母の契りって。」
興味津々のルッスーリアに参った様子のスクアーロは一つ一つ話し始めた。
「…この教会のジンクスで、ナターレの夜、祭壇のマリア像の前でマドンナリリィの花をお互いの髪に挿して額にキスすると、ずっと一緒にいられるんだとよぉ…」
微妙朱くなりながらもに目を伏せて、スクアーロはそう言った。
「へぇ…おもしろそーじゃん?」
オレは、ルッスーリアから半ば無理矢理花かごを奪い取り、フランの手を引いて祭壇の前に立つ。
マドンナリリィを一輪取り出すと、フランの流れるような猫っ毛に挿す。そっと髪をなでつけると額にキスを落とした。
「…。」
するとフランが少しうつむき加減に花を取ると、同じようにして花を挿し、めいっぱいの背伸びをしてオレの額に口づけた。
額に触れる柔らかく、暖かい感触にすこし身震いする。
「センパイ…好きです。」
続けて唇同士が重なった。
それは、一番幸せに包まれた口吻だったと思う。
顔を上げると、あきれ顔のマーモンとスクアーロ。
そして何故か満足そうに頷くルッスーリアの顔が目に入った。
ルッスーリアはその後クスリと笑った。そうしてまるで幼い子供に言うかのように続けた。
「さあ、今日は腕をふるってケーキをつくったのよ。二人も帰って食べましょーね?」
「わーい、じゃあ帰りましょーベル先輩。」
フランは抑揚のない声でそう言ってオレの手を引いた。
教会を出ると、ちらちらと粉雪が舞い始めていた。
数センチほど積もった雪を踏みしめる感触や、フランの腕から伝わる暖かいぬくもりが心地良い。
空を見上げると、満月にほど近い十三夜の月が光って、教会の庭先のマリア像を照らしていた。
聖母マリアの契り。それがどれだけ信じられるものかは分からないけど、契りによってオレがフランと一歩踏み出せた気がしたのは確かだった。

*おまけ*
「それで、何であんな乙女チックなジンクス、隊長が知ってたんですー?」
「べ…別に何でもいいだろぉ…」
その理由を、何度聞いてもはぐらかされた上に、赤い顔して目をそらす隊長。
…一体…

#日記広場:日記

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2012/12/25 21:05
スクうううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう(((黙
ヒャッホーイ!!(
2828としか…w
久々のハッピーエンド!(俺の中ではいつもバッドエンドなんだよねー…色々。)




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