Nicotto Town


まぷこのぶろぐ・・・か?


「契約の龍」(88)

 「…じゃあ、彼女が沈んでるのは、かなり深いところなんですね?」
 翌朝。
 不覚にも寝入ってしまったせいで、空腹を訴えるクリスにたたき起こされた――今度は物理的に、だ――俺は、ほとんど条件反射で、クリスに指図されるままに、温かいお茶を入れ、朝食の注文をし、クリスに給仕しながら自分の食事も済ませ、ついでにクリスが薬を飲む手伝いまでしてやった。
 「さすがに病人のわがままには慣れてるなあ」とクリスがしみじみと言うので、
 「どこからがわがまま?」と問いただすと、
 「お腹がすいた、は本当。死にそう、動けない、から先は、わがまま」としれっと答えた。
 まあ、空腹で動けない人間が、枕で人をたたき起したりなんてできるはずはないし。
 食欲があるのは良くなった証拠、と言えなくもない。
 「で、熱は下がったみたいだから、着替えたいんだけど。その間、隣へ行っててくれないかなあ?あ、《ラピスラズリ》が起きてたら、話が聞きたい、って言っといて」
 そう言われて追い出された。…俺の荷物はこっちに置いてあるんだけどなあ。
 それから小一時間。着替えが終わったクリスがやってきて、話を聞きたい、と魔法使いに切り出した。
 あらかじめ準備をしていた魔法使いは、地図――と言うのか、海図、と言うのか――を広げて、灯台周辺の海の様子の説明から話し始めた。
 それによれば、大公の流された灯台の外側は、沖合の方にいくつかの深い裂け目ができており、潮に流されたせいかそこまで運ばれてしまっているらしい。
 「ざっと探ってみたところ、危惧したような損傷はなかったので、軽く防護措置を施しておきました」
 「防護、と言うと?」
 「まあ、私にできる程度ですから、大したものじゃないです。周辺の温度を下げて、彼女の周りを氷で囲った程度で。…あと、場所は判るようになったので、いつでも現在の状況は把握できます」
 クリスが何やら考え込んでいる。
 「蟹、というのは、海底を這う生き物ですよね?その周辺には、蟹はいないのでしょうか?」
 「あの周辺は、蟹の漁場です。だから損傷を危惧したんですが…そういえば氷を張るときに辺りを探ったんですが、周囲に生き物の気配は全くありませんでしたね」
 「では…大公にはお気の毒だが、いましばらくそこで眠っていていただく方が安全かな。ここから力を送って、「防護措置」を強化することは可能でしょうか?」
 「……ここから、ですか?ちょっと私には…」
 「…アレクは?」
 「…今はちょっと。昨夜あまり寝てないし」
 その上、寝起きからこき使われてるし。
 「そうか。悪かったな、たたき起したりして。昨夜からろくに食べてなかったので、そこまで気が回らなくて」
 クリスを空腹にしてはいけない、とメモしておこう。…特に魔法を使った後は。
 「私も…熱は下がったけど、まだ本調子ではないし。補強しておきたい気はするんですけど…今日はやめておきましょう」
 魔法使いが安堵の表情を浮かべたような気がするが、それはほんの一瞬の事だった。

#日記広場:自作小説

アバター
2009/08/05 00:17
今日はここまで j文用の目も出申し訳ない・・・

ラピスラズリがここまでの配役とは思ってなかったww
アバター
2009/08/01 14:23
お邪魔します<(_ _)>

 アレクさん 何気に
 ラピスラズリさんより
 力が強いのですね^^
アバター
2009/07/29 21:08
大公さんて誰なのかな。
海に沈んでる人ですね。
何で沈んだのかな。
流されたのですね。
クレアはその人を助けたいのです。きっと。



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