Nicotto Town


黒曜のアジト


【白骸?骸白?】しのぶれど



えー…ちょっと白骸を書く大ネタを頂いてしまったのですが、リハビリ程度に短編を。
…何を書いてるのか分からなくなってしまった。
僕の趣味満載な話ですw

…でも骸は世界の文学に通じてるといい…
そして、槇島さんに(ry



「ねぇ骸クン♪ラブレター頂戴。」
 彼がそう言ったのは数日前のことだった。

 虹の代理戦争は終わり、参加者達にも少しづつ平和が訪れるようになった。それは入院中の白蘭も例外ではなく、逆に彼は平和すぎて退屈だと思うくらいだ。
 ……実際のところは、まだ移植する内臓も見つかっておらず、それどころではないはずなのだが、そこは彼持ち前のタフさと、ヴァリアーの術士、マーモンの協力によって余裕の様子を見せている。
「…何言ってるんですか。こうして毎日会っているでしょう…何の因果か同じ病院など…」
 ぶつぶつと文句を垂れる骸を見て、白蘭はクスリと笑った。
「僕がいろいろ手を回したからね。」
「…今、何か言いましたか?」
「…イや…何でもナイヨ♪」
「くだらないこと言ってないで寝てなさい。僕以上に重傷なんですから君は。」
 骸はそういって、白蘭の部屋にある花瓶の水を換え、白蘭の部屋から去っていった。

 それから数日、白蘭がいつものように病室で目を覚ますと、傍らに封筒が置いてあった。色気のない真っ白な封筒を破ると、やはり中からシンプルな一筆箋が出てくる。

その一筆箋に、くせのない几帳面な字でこうかかれていた。

  しのぶれど 色に出でにけり わが恋(こひ)は
     ものや思ふと 人の問ふまで

訳、ずっと秘密にしていた恋だったのですが、表情や行動で分かってしまうようだ。「何か悩みでもあるのですか?」などど人が問うまで。

 骸は教養深い。世界中の文学や詩集に通じている節がある。この和歌は百人一首に入る有名なもので、白蘭も骸に昔借りた本で見かけたことがあった。意味を考えると、白蘭の口元から次第に笑みが溢れる。

「…ふふっ…骸君らしいなぁ…」

きっと、彼精一杯の恋文なんだろうと推測して、ぼそりとそんな事を呟く。
直接的な愛の言葉は照れくさい。それも自分の言葉でまとめなければいけない。そこで彼は考えたんだろう。言わずともしれた恋の詩を手紙にしたためようと…

「なんか、お返事しないとね♪一生懸命考えてくれたんだろうし。」
 そういって、引き出しから無造作にペンを取り出すも、白蘭は骸のように簡単に引用する言葉が出るほど、文学に親しんではいなかった。
日本の和歌などからっきしだ。悩んだからといって、言葉がぽんと出るわけはない。

「…それで急に、和歌の全集を持ってこいとか言って僕を呼び出したんですか?」
 図書館へ寄ってきたのであろう正一は、沢山の本を詰めてどっさりと重くなったトートバックを白蘭に預けた。中のタイトルは『初めての百人一首』『和歌で伝える愛の言葉』『小野小町集』など、いずれも和歌に関わるものばかりだった。事情を聞いた正一は、少しため息をついている。
「お二人の恋愛事情がどうなっていても僕は知りませんけど、あんまり巻き込まないでください。…というか、僕のこと使いっ走りくらいにしか思ってないでしょう。」
「あれ?バレた?」
「…はぁ…」
 しれっとそう言ってのけた白蘭に、正一のため息は一層深くなる。
「…とにかく僕は帰りますから。今度、ケーキ奢ってくださいよ?絶対。」
「はいはい。」
 正一と白蘭は未来の過去からの友人で、白蘭にとって正一は、骸と白蘭の恋仲を知る唯一の理解者だった。未来でも現在でも、何だかんだと白蘭に世話を焼いて、巻き込まれている所は変わらない。
「…ふふっ、アリガトウ。正チャン。」
 一見あまり良くない態度を取りながらも、白蘭が正一に感謝し、彼を認めていることには変わりない。
 もうドアの向こうの人となった正一に、小さな声で礼を言った白蘭だった。


「骸様…何かお手紙が…」
「おや、返事でしょうか…」
 クロームが差し出した手紙を、骸はぺりぺりと開封し、中身を伺う。差出人はやはり骸が思った通りの人物であった。
「…クローム、少し席を外してもらえますか?」
「…はい。」


 骸の願いに、小さく返事をしたクロームは言われたとおり、部屋から出て行った。クロームは、骸の手紙の相手に察しが付いているから、何も疑問は示さないのであろう。
 クロームが去ったことで、部屋の中は一生静けさを増した。衣擦れの音も、僅かな呼吸音も、半分になれば耳の良い骸は分かってしまう。
 そして、骸はこの静けさを愛していた。信頼の置ける者と一緒に過ごすのも悪くはない。でも骸にとって、静かな時間は自分だけの楽しみだった。たとえば本を読むとき、本だけでなく、文章をこころに刻みたいときには。
 態度にははっきりとは出さないが、骸は大層白蘭からの手紙の返事を待ちわびていた。やっと来た手紙、一人になって読んでいたい。クロームに席を外させたのはそのためだった。
 かさり…と紙を開くと、右下に小さな花があしらわれた便せんに、たった一文だけ文がつづられていた。

  わびぬれば 今はた同じ 難波(なには)なる
   みをつくしても 逢はむとぞ思ふ

訳、こんなに悩んじゃったら、どうなっても同じじゃない?僕は、身を尽くしても、自分がどうなっても君に逢いたいと思ってるよ。

 

 自分と全く同じ手を使ってきたものの、どことなく自分が送った歌への返事になりそうな意味の歌を送ってくる――そんな白蘭のこだわりに、骸は「クフフ…」と独特の笑い声を洩らした。
「……君には叶いませんね。白蘭。……僕も同じですよ。」

骸がそうつぶやくも、それを聴いている者は居ない。





はい。オチが相変わらず弱(ry
文中に出てきた古文は、骸や白蘭の口調に合わせて訳してみました。お粗末様です。
元になった古文は、どちらも百人一首より。「しのぶれど…」は平兼盛の作、「わびぬれば…」は元良親王ですかね。和歌、大好きです。

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2013/03/12 18:41
甘い物に負ける正一可愛い^ω^*
そしてなんだかんだでラブラブな二人w

なんでだろう、パスタ食べたくなってきた。←




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