小説「手紙」東野圭吾
- カテゴリ:小説/詩
- 2008/10/05 00:14:30
原作を読んでいたので、
映画公開されたとき、まっさきに観に行きました。
主人公や周りの人物の背景などは微妙に変えられて
いましたが、とてもいい映画でした。
ただ、文字でしか伝わらない詳細な部分はぜひ活字で
読んでいただきたい。逆に映像でしか表せない部分も
あるんですけどねw
「差別や偏見のない世界。そんなものは想像の産物
でしかない。人間というのは、そういうものとも
付き合っていかなきゃならない生き物なんだ」
兄が強盗殺人を犯して服役している主人公の直貴の
この最後の台詞。あたしはこの小説の意図するところは
直貴にこの台詞を言わせるためにあったんだろうと思う。
主人公の、長い長い葛藤と苦悩に満ちた人生。
罪を犯すということ。罪を償うということ。
加害者と被害者の家族、その逃れられない苦悩。
過ちは悔いても悔いてもどんなに深く謝罪しても
拭えない、消えないってこと。
そして・・・・
赦すということ。
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たくさんの手紙を弟に書き綴った兄剛志が、最後に書いた手紙。
それは弟に向けられたものではなかったけれど、
直貴が剛志に最後に送った手紙と、そして兄が書いた最後の手紙。
その中で分かってしまった、決定的にもう取り返す術のない
尊い時間たちが胸を締め付ける切ない作品でした。
愛すべき家族を選び取ることができない、
捨てることしかできない、
そういうことが起こり得るんだってこと。
罪を犯すというのはそういうことなんだってこと。
本当の意味で償うっていうのが、どんなものかってこと。
正々堂々と生きて行きながら、差別を受けることを
受け入れないといけないっていう過酷な現実。
逃げずに正直に生きて行くことが正しいとは限らないってこと。
だけど、忘れられない、忘れてはいけない人たちのこと。
読み終えた時、涙が止まりませんでした。
あたしたちはこの法治国家で生きていて、普段は犯罪などとは
無関係に生活しているけど、犯罪を犯すということが
どれだけ周りの人間を傷付けてしまうものなのかを
改めて思い知らされたような気がします。
凄く考えさせられる内容でしたね
この本を多くの方が読めば
犯罪も少しは減るのかなと期待しちゃいます
が、本屋で見ると、あまりに多すぎるのと、新刊の出るペースが早いので、手が出ないでおります。
でも、この本、読んでみようかなー。