【黄黒っぽいもの】それはまるで恋する少女のような
- カテゴリ:日記
- 2013/03/29 21:19:17
黄瀬のねぇちゃんが出てきます。
恋愛経験豊富なお姉さまです。
黄瀬姉は女の子にもモテるタイプだといい。それも「女子校の王子様」的な感じじゃなくて、しっかりビアンな女の子に。
「あんた、ちょっとおかしいんじゃない?」
「それじゃあ、バイバイッス!黒子っち、また明日。」
そう言って、電話を切り、かちゃりとスマホの画面を消す弟に、私はぴしゃりと、厳しい言葉を吐いた。
私はというと、ソファにもたれながら、弟が持ち帰った雑誌を見ていた。雑誌の中の弟は、凜とした表情で写真に写っている。もしこの雑誌を欠かさず買うような女の子達が、今私が見ているような弟の姿を見たら、きっと驚愕するだろう。そう思うくらい、弟の顔は表情が緩まりきっている。こういうのをきっと『デレデレ』というのだろう。
私が言った言葉に、少なからず苛立ちを覚えたのか、むくれた弟は、私の隣に座って文句を垂らす。
「……オレのどこがおかしいんスか。」
「黒子っち黒子っち、家の中に居るときまで何回黒子っち黒子っちいってんのよ。さっきの電話も合わせたら96回。ちゃんと数えてたから間違いない。」
「なんでそこまで黒子っちを気にしてるんスか?」
「97回目。」
今の弟は、まともと言えば非常にまともだった。二年になってから、バスケ部に入り、今までの生活が信じられないくらい、熱心に部活に励んでいるみたいだ。友達も結構居て、これぞ青春ってくらい、中学校生活を楽しんでいるように見える。
これまでスポーツの類やモデルの仕事を含め、勉強以外は何をやってもそこそこ以上に出来た弟は、世間を舐めきって荒れているところがあり、心配していたのだった。だからこそ、今に至るまでの弟の変化は目を見張るものがある。
特に『黒子っち』の存在だ。弟が一目を置いて尊敬し、これだけなついている彼は、一体どんな男の子なんだろう。「影が薄い」だとか「無口だ」とか、弟づたいの情報しかしらず、一度も見たことのない彼を想像するも、弟がそこまで慕う人物には想像できないのだった。それに、彼がどれだけ凄い人物だったとしても、一介の親友や、チームメイトのことを話すときに、あんな表情をするのだろうか?
「普通、チームメイトと電話するのにあんな熱にうかされたように、酔ったみたいな顔で話す?口調もどことなく早いし、家で黒子くんのことを話すときもそうじゃん。」
そう、それはまるで恋する少女のような、とろけたような目で、表情で。
弟をこう変えたのは、明らかにその『黒子っち』の存在だった。
「恋しちゃってんなら、ちゃんと告白しちゃうことね。」
これはきっと、弟の一方的な片想いだろう。なんとなく思ったことだけど、両思いにしろ片想いにしろ、弟がその少年に恋をしていることは確かだろうと思った。だから、弟の目をじっと見て、そう続けた。すると、弟は、わずかに目をそらしてじぶんの頬を引っ掻く。図星を指されたり、都合が悪くなったら、そうする癖は未だに直っていないようだった。
「べ…別にねぇちゃんに関係ないッス。黒子っちは、ただのチームメイトで……それに、黒子っちもオレも男ッスよ!?気持ち悪くないんッスか?」
「意外と理屈っぽいじゃん?でも、落ちちゃったんでしょ?恋に。……恋愛は理屈だけじゃ説明付かないの。ともかく同性愛は病気でもないし、私は気持ち悪いとも思わないから。……応援してる。」
同性愛……世間的には差別や侮辱の対象ではある。でも、私にそんな感覚は一切なかった。むしろ、こんなに純粋に思っている弟が、もし差別や侮辱にあったとしたら、それこそ理不尽というものだ。姉としても許せない。
「オレ、頑張るッス。」
頭の金髪と同じ色の太陽のような、ぱあっと明るい弟の笑顔。
それはまるで、恋する少女のような。
お粗末様です。ぐるぐる理屈っぽく考えても、恋に関しては無駄……ですよね?





























