昨日、お花見小説書いたじゃないですか。
あれに盛り込もうと思っていたネタです。最初は、おまけ程度に書こうと思っていたのですが、気づいたらこんなん書いてました。
書きたいこと書いたあとに、どう締めるかが分からなくなったのはここだけの話。

そして、最初はベルフラにしようとしたのですが、これ多分ベルフラじゃないです。
恋愛要素無い…



フランが紙箱をそっと開けると、桜色のお菓子が行儀良く収まっていた。
「おー…美味しそうですねーさすがクローム姉さんですー」
　米の粒が僅かに残る丸い桜餅は、鮮やかな萌葱色の葉に包まれて、見事なコントラストを成していた。
　春も本番となってきたころ、日本にいる六道骸から包みが届いた。フランが六道骸の元からヴァリアー入りを決めてからも、骸とフランはそこそこの親交があった。なんといっても、まだ小さかったフランを親代わりとして育て上げたのは骸やクロームなのである。親らしいことをそこまでしたかどうかは別として。
　包みをゆるめると、ぴらりと一枚の紙が舞い落ちた。フランが拾って開くと、それが一言をしたためた手紙だと分かる。真っ白な色気のない紙に、細く薄い字で

「美味しいお菓子、ありがとう。　お礼に日本のお菓子を送るね。」

　少なくともこの筆跡は骸の物ではない。フランはそれに気づいた。骸だったらもう少し角張った力強い字を書くからである。フランが察するに、この字は――
「クローム姉さんですかねー？この桜餅のチョイスも姉さんだろうなー」
　何で名義は師匠なのだろう……そんな疑問に首を傾げながらも、フランは餅の一つを口に運ぶ。もちもちとした感触や、なめらかなこしあんの舌触り。桜の葉の塩味が、あんこの甘みを引き立てていた。まだ日本にいる頃を思い出し、フランは少しだけ懐かしく思う。

「何なにー？なんかうめーモン？」

　情緒のかけらもないベルがやって来て、桜餅を見てそう言った。ジャッポーネで寿司を食べて以来、ベルは日本食に興味津々である。送り主がボンゴレ本部の人間であることは気に入らないが、ベルは日本のお菓子の贈り物にかなり喜んでいた。

「うまそーじゃん。なぁフラン、食っていい？」
「ミーあての贈り物なんですけどねー…まあいいですよー」

　ベルはフランの許可をもらうと、手のひらほどの大きな桜餅を、小鳥が餌を啄むようにぱくつき始めた。しばらくして食べ終わると、あらかじめ餅から剥き取っていた桜の葉を、訝しげに見つめる。
「なーフラン。これって本物の葉っぱなんだよな。」
「…普通餅と一緒に食べるものなんですよー？」
「葉っぱ食うのかよ！？」
「葉っぱって…キャベツとかレタスとかも葉っぱですけどー？」
「そういう食べる用の葉っぱと、桜の葉は別じゃね？」
　ベルとのやりとりに飽きたフランは、ベルが摘んでぺらぺら振っている塩漬けの桜の葉に口をもっていく。
「なっ！？」
　突然に、食いついて来たフランに驚き、ベルは手を離す。
「そんなに驚かなくてもー…いらないならミーが食べてやろうかなー…と。」
「べっ…別にいらないとは言ってないんだけど。つーか王子の食いモン取るとかねーわ。」
「もともとミーのですよー？」
　ベルを軽くあしらったフランは、桜の葉をむしゃむしゃとはむ。やはり餅と一緒に食べるもののようで、桜の葉は塩辛く感じ、そこまで美味しい物ではない。
「…なんかフラン、うさぎみてーだな。」
「そんな可愛いもんじゃないとおもいますけどー？」
　たしかにこうやって葉っぱをむしゃついていると、草食動物にでもなった気分である。近頃は、兎もドライフードを食べさせて育てることが多いらしいが、それはともかく。

　そんなこんなで、ヴァリアーの談話室で桜餅を食べていると、任務を終えたルッスーリアが紅茶を人数分入れてやって来た。
「お茶でも飲まない？…あら、桜餅じゃない、アタシも食べていいかしら。」
「…ミーのなんですけどねー…まあいいですよーみんなで食べましょー」
「ふーん。コレ、サクラモチっつーの？うめーよな。」
「あらやだ、ベルちゃんってば知らないで食べてたの？」
　そうベルに突っ込みつつも、ルッスは一口、桜餅をかじる。そして甘くなった口を、熱い紅茶で薄める。
「…変な取り合わせねぇ…」
　そういいつつも、三人とも先日に出かけた日本の桜を思い出した。桜餅よりもずっと薄い、白にごく近い薄紅……
「また行きたいですねー…ジャッポーネ。」
「だな。」
　師匠である骸のこともあり、日本へ行くことは珍しくないフランだったが、思わずそう言っていた。
　自分たちが暗殺者であることが忘れるくらい、平和で穏やかな午後のひとときだった。






ちなみに登場させた桜餅は、米粒の残ったお餅であんこをつつんだまんじゅう型の桜餅。いわゆる関西風の桜餅になります。
小麦粉のクレープっぽいものであんこをつつんだタイプの桜餅食べたこと無いです。

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