Nicotto Town


黒曜のアジト


新月【骸誕生日企画】


急いで書いたので、gdgdクオリティだし、ストーリーもわかりにくし
本当にやりたかったのは犬のパイナップルネタと、100%チョコのくだりだけだったり
多分カプ無しだけど、骸様がクロームに優しかったり








六月の初め、例年よりずいぶんと早い梅雨に入った黒曜は昼間中薄雲が覆い、小雨まで降っていた。
 森の中にある薄暗い廃墟、いつもの住処が、今日はいつもより少しにぎやかであった。
 廃墟の壁という壁には、犬が色紙を切って作った飾りが貼り付けられ、不器用ではあるが、部屋をカラフルに演出している。
「骸様…誕生日おめでとうございます。」
「骸さん、おめでとーびょん」
「骸様、おめでとう…ございます…」
 千種に続いて、犬、クロームと、口々に祝いの言葉を口にする。
「おやおや。ありがとうございます。」
 小気味良い火薬のはじける音と共に、テープのはじけるクラッカー。メンバーの誕生日は、黒曜の皆にとっては一大行事であった。

「あの、骸様、これ…」
 クロームがおずおず自信なげに、プレゼントを差し出した。その包みは生成の布のような色の不織布で、英字の印刷が施されていた。誰かにアドバイスでももらったのだろうか?趣味の良い包装に、少し心を動かされる。
「おや、開けてもいいんですか?」
 そう聞くと、クロームは無言でこくりと頷いた。それを確認して骸が包みのリボンを解く。中から出てきたのは、真っ白なフクロウのキーホルダーだった。かぎ爪には、紫水晶の珠を握っている。
「これは…」
 黒い毛の一本も生えない白く柔らかな体躯。キーホルダーのフクロウは、骸の大事にするボックス兵器に瓜二つであった。
 自分からのプレゼントを見つめているのに気づいたクロームは、僅かに紅潮させた顔で口を開く。
「ムクロウに…似てる…って思って…気に入ってもらえたら嬉しいで…す。」
「ええ。鞄にでも付けることにしましょうか。ありがとうございます。」
 そう言ってからも、自分の革の鞄に愛らしいフクロウのキーホルダーは不似合いでは…と気づく。それでも、大切にキーホルダーを仕舞うと、クロームは一安心したように浅く息を吐いた。

 次に、千種が差し出してきたのは、平べったい箱だった。そっと蓋を開けると、真っ黒に近い色のチョコレートが石畳のように並んでいた。
「カカオ…100%…」
「ほう…存在は知っていましたが、食べてみるのは初めてですね。」
 千種から渡されたプレゼントの内容を知った骸は、ひとかけらを摘んで口に入れた。
 チョコ特有のどろりとした触感と共に、味覚を刺激したのは鋭い苦みであった。甘さや優しい味わいのない、ただただ苦みだけ。
「ゲッ…砂糖無しとか、いかにもまずそーびょん」
「骸様、どうですか?」
 口にする様子を興味津々に見守る3人。
「……インスタントコーヒー。」
 思いがけない単語に、聞いていた3人は、首をひねらせた。
「インスタントコーヒーを、湯に溶かさずにそのまま口に含んだような味がします。」
「すいません。骸様。」
 自体の現況――このプレゼントを考えた人物は、淡々とした感情のない口調で謝罪を述べた。
「いえいえ。いいんですよ千種。前から試してみたかったもので…むしろありがとうございます。」
 そのやりとりの間、背の高い千種の後ろで、こそこそ何かを準備する犬を、少し怪訝に思う。
 千種の後ろに回り込み、犬が一玉のパイナップルに真っ赤なリボンを結びつけるのを見て、骸の眉間に深い傷が刻まれた。
「…犬」
「きゃいん。」
 一瞬の出来事だった。犬からパイナップルを奪い取ると、そのパイナップルを思い切り振りかぶり犬の後頭部に直撃させたのだった。
 パイナップルの果皮は、固くトゲがあって当たるとそこそこ痛い。頭をかばって縮こまる犬を余所に振り向いたくと、
「気を取り直して、ケーキでも頂きますか?」
 と、満面の笑みでクロームと千種に呼びかけた。

 いつもより豪勢な食事とケーキを口にして、落ち着いた3人。施設特有のガラス張りの天井を見上げると、いつの間にか薄雲はながれ、明るい星がぽつりぽつりと輝いていた。
「月は…でていないんですね…」
「今日は新月なんですよ。新月は新しい月齢の始まり、この日に撒いた種はよく育ち、この日に願われた願い事は叶う。……僕の故郷ではそう伝えられていました。」
 小さく呟いたクロームの疑問を聞き取り、過去を懐かしむようにそう話す。彼女に過去のことを話したことはほとんど無い。良い思い出ばかりではない故郷、それでも当然、好きな部分はある。
「素敵ですね…」
 クロームは、いつの間にか3人掛けのソファで寝息を立てている犬を一瞥すると、そう一言の短い感想を述べた。続けて、たどたどしい口調で語る。
「願いは、来年も、千種と、犬と…骸様のお誕生日、祝いたい…です。」
「ええ。…きっと。」


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