「死とのすりあわせ」
- カテゴリ:小説/詩
- 2008/10/05 12:16:01
人生というものは、死に身を摺り寄せないと
そのほんとうの力も人間の生のねばり強さも
示すことができないという仕組みになっている。
ちょうど、ダイヤモンドのかたさをためすには
合成された硬いルビーかサファイヤとすりあわさ
なければ、ダイヤモンドであると証明されないように。
生のかたさをためすには、死のかたさにぶつからなければ
証明されないのかもしれない。
死によって、たちまち傷ついて割れてしまうような生は
ただのガラスにすぎないのかもしれない。
ところがわれわれは実に曖昧模糊たる生の時代に住んでいる。
われわれは自動車事故以外にはめったに死ぬことがなく
薬は完備し、かつての病弱な青年を脅かした肺結核と
健康な青年を脅かした兵役とからは完全に免れている。
そして死の危険のないところで、いかにして自分の生を
証明するかという行為は一方では狂おしいようなセックス
の探究となり、一方ではただ暴力のための政治行為に
なってゆくのもやむを得ない。
そしてそこでは芸術さえほとんど意味を持たないほどの
焦燥感が生まれてくる。なぜなら、芸術とはやはり炉辺で
楽しむものだからである。
☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆
三島由紀夫の決起、割腹に至るまでの思想の道程。
白石一文「僕のなかの壊れていない部分」より抜粋。
☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆
自分の命をかけて、何かを証明しようとした三島
その深淵を理解することは難しいけれど
確かにあたしたちは何かを感じることはできる。
重っw
でも さすが文学少女。