Nicotto Town



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「ちょ、ちょっと筑前様」 「にゃ、にゃあ、腰が」  と、言いつつ、今度は横に滑った。そのどさくさで右手を背後に回し、たまの尻を一瞬だけ触った。  ははあ。齢は十四、五だ。 「きゃあっ!」 「違う、違うんだぎゃっ。他意はないんだぎゃっ。長旅で。長旅で」 「何事じゃっ!」  奥から飛んできた金切り声にぎょっとして、藤吉郎は体を起こした。素知らぬ振りで足袋の紐を縛り上げる。  たまが襟元をおさえながら、怯えた視線を藤吉郎に震わせる。  梓が現れた。藤吉郎はすぐさま立ち上がり、 「これはこれは梓殿。お久しぶりですぎゃあ」  目尻に皺を集めてにこにこと笑った。梓は薄い眉間に皺を寄せながら、縮こまっているたまを見やり、そうして、藤吉郎を睨みつけた。 「筑前殿。我が家のおなごに余計な気遣いは無用ですぞ」  よもや、おかっぱ頭の髪先がじわじわと逆立っていかんばかりの彼女の怒気に、 「ご、誤解だぎゃ」  藤吉郎は固唾をごくりと飲み込んだ。 http://www.watchsremark.com スイス 腕時計 メーカー レディース 時計 ランキング  広間に通された藤吉郎は、加賀大聖寺救援のために岐阜にやってきたなどとはおくびにも出さずに、牛太郎はどこに行ってしまったのか梓に訊ねた。 「わかりませぬ」  梓は首を横に振って、髪を揺らした。 「文は届きますが、どちらにおられるかわからぬゆえ、わらわから文は送れませぬ」 「なんと書いてあるんだぎゃ」  と、藤吉郎は梓の白く細い首すじをじいっと見つめながら訊ねた。 「何も。歌が詠まれているだけです」 「比叡山に行ってしまったと、おりゃあの女房から聞いたけども、牛殿はまさか出家しようなどというわけじゃないだぎゃあろ」  わからない、と、梓はうつむきがちに答えた。岩村城攻城の揉め事以来、牛太郎は自分の思うところをまったく話さなくなってしまったらしい。かといって、塞ぎ込んでいたわけでもなくて、女たちの戯言に付き合ってやったり、太郎の従兄妹が産んだ赤子をあやしてかわいがったりしていたという。 「太郎の従兄妹?」  藤吉郎は知らない。弥次右衛門親子が転がり込んできた経緯を聞くと、納得した。 「にゃあ。そんなことがあったんかえ。どおりで赤子の泣き声がするかと思ったぎゃ」 「母親が頭の弱い子で、きちんと世話ができないゆえ、あいり殿が面倒を見ているのです」 「にゃあ」  と、頭上を仰いだ。因果なものだと思った。天はあいりから駒を奪い去っていった代わりに、血のつながらない子を与えたのだろうか。それとも、子をなくした彼女の慰めに与えたのだろうか。  藤吉郎と寧々の夫婦に似ていなくもない。  そんなことよりも、牛太郎がほっつき歩いていても怒っていないのかどうか、藤吉郎は不思議になった。この恐妻の気の短さと暴力の凄まじさは藤吉郎も耳にしている。ところが見る限り、梓に激怒のふしはなく、むしろ、しとやかだ。  怒っていないのか、と、藤吉郎は訊ねてみようとしたが、一度、玄関で睨みこんできた眼光の鋭さを思い出し、やめた。  梓にすすめられて、藤吉郎は簗田家の風呂を頂戴した。虎之助も呼んでやった。 「今日はここに泊まっていくだぎゃ。おみゃあは屋敷に戻っていりゃれえ」 「えっ?」  と、藤吉郎の背中を流していた虎之助は、手を止める。 「なんだぎゃ」 「殿をお一人にさせるわけには。もしも、殿の身に何かありましたら」 「それなら心配無用だぎゃ。この家には鬼神が住んでいるからにゃ」  風呂場を上がって浴衣に着替えた藤吉郎は、まったく、この家の住人かのような振る舞いで、やや大きめの着物の裾をからげながら広間に戻ってきた。すると、初老の貞がやって来て、食事を用意したから客




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