Nicotto Town


ま、お茶でもどうぞ


三代前からマーメイド


NHK朝の連続テレビ小説「あまちゃん」が、きょう最終回を迎えました。

地元にごく近い地域を取り上げており、また、震災にもかかわりのあるテーマであり、何より脚本が喜劇作家の宮藤官九郎氏であるのに興味を引き、第一話目から欠かさず観ておりました。

第一話、暗くて地味なアキが、北三陸のきれいな海を前にぱあっと生まれ変わるお話。
冒頭のじぇじぇじぇのインパクトも絶大ながら、畳み掛けるような東北南部地方の方言、そして謎のソウルフード「まめぶ」。あれを観て笑わなかった人はほとんどいないでしょう。

のっけからパンチの利いた脚本に魅了され、今まで朝ドラを観なかった私も毎日楽しみにするようになりました。

なにしろ、宮藤氏は今までの朝ドラがやったことのない試みを次々としているのです。
めくるめくパロディにコメディ。
地方だけでなく、NHKという制作局も存分に舞台づくりに利用しておりました。
「見つけてこわそう」なんて教育番組を、本場のNHKでやっちゃうのですから。
漁協組合をリフォームして海女カフェを作ったとき、大女優宮本信子のナレーションで「劇的大改造ビフォーアフター」のナレーションをパロったくだりは大笑いしました。
ほかにも、弥生さんの口癖「んだんだんだ」を、スーパーマリオの土管のステージ曲とリズムが似ている点に着目して茶化したのも面白かったです。

ほかにも、スカウトに来た水口を弥生さんが「さではおめぇ、八戸から来たスパイだな!」
これもうけました。町おこしの秘策探りに来たんだべ!って…。笑ったなあ。
だって北東北、とくに青森県はこれでも村おこしや町おこしにものすごく熱意がある県なのですよ。
ねぶた祭りだけじゃなくもっと観光客を呼ぼうと、春から秋にかけて各地でイベントがたくさん行われます。
あのB1グランプリも青森県八戸市が発祥なのですよ。それを知っていると、弥生さんのセリフもさらにおかしみが湧こうというものです(笑)


それでいて、今までの朝ドラストーリーの伝統もやってのけているのがすごいと思います。
物語のキーとなる歌、潮騒のメモリーで、やたら浮いていた歌詞「三途の川のマーメイド」
最終回間際、鈴鹿ひろみが改変してしまうのですが、それがすべてをまとめていました。
「三代前からマーメイド 親譲りのマーメイド」
夏ばっぱ、アキの母の春子、そしてアキ。袖ケ浜から生まれた海女三代は、続く血のつながりのドラマでもありました。


物語は3年前から始まり、やがて2011年3月11日を迎えるのですが、震災の描写はごく短く、要所を抑えつつもあっさりしたものでした。
ある意味、東北県人が待ち望んでいた回。俺らが味わった痛みを全国に知ってもらうのだと、うらみと復讐の気持ちもこめて観ていた人も少なからずいたと察します。
視聴者はまさに、耳なし芳一の歌を聴く平家一門といった心境であったでしょう。

でも、宮藤氏は東京方面も軽く見なかった。地方だけ尊重するのではなく、都会には都会の苦労や痛みもあったのだと、さらりと劇中で伝えています。
そして、娯楽に関わる仕事をする人たちが全員痛感したことも。
「歌や芝居がなくても、人は生きていける。(災害に遭って)今必要なのは食料、ガス、電気なのだ」と。

このナレーションは、宮藤氏の一番言いたかったことだと思いました。
本当にみんな、芸事――マンガや小説に至るまで――に関わる人が、「生活にとくに必要ないものを作って売っている」ことに、傷ついたのです。
いざというとき、何の役にも立たないじゃないかと。そして、それらを買ってもらうにはまず、世の中が平和であること。人々の生活がちゃんとして、心の余裕があって、楽しもうという気力が蓄えられていることなのだ、と。

でも、被災地にいて、少ないけれど惨状を実際に見て、「自粛」の大文字が脳天にのしかかっていた私は、そんな状況から心を救い出せるのは娯楽しかないんだと思い知りました。
本当に、元気づけられるんです。それは、被災地でたびたび催されたチャリティコンサートなどを見た人達の顔を見ればわかります。
避難生活でプライバシーもなく体育館に押し込められ、毎日座っているだけの絶望的な毎日に、歌はそのときだけ現状を忘れさせてくれます。みんな、歌を聴いているときは顔が笑っていました。

まわりを気遣いすぎて、やりたいことも欲しいものも我慢して、笑うことに罪悪感を感じては、人は潰れてしまうのです。

劇中でも、津波の被害に遭って片づけもできず、途方に暮れるみんなに、アキが漁網を使ってミサンガを作ろうと言います。
このとき、東北の視聴者は「何言ってんだこいつは」と思ったでしょう。
まるで遊びを誘うかのような明るい言い方に、悲嘆に暮れている海女仲間たち、漁協夫婦は、最初反対します。「網は漁師の命だど」
でも、夏ばっぱがアキのフォローをします。もう使えないんだから、再利用したほうがいい。なんぼでも儲けて、復興の足しにしたらいい、と。

これって、とても重要な顔の上げ方だと思うんです。
被害に遭ったすべての人に今立ち上がりなさいと言うのは酷です。家や家族を失った方のご心痛は、そう簡単には癒されるものではありません。
しかし、いつかは前を向いて立ち上がらなければならない。
したたかに、強く明るく、えいやっと悲しみを乗り越えて、前に進もう。
最終回でもアキが言います。この線路は明日につながっているんだと。

震災だけじゃなくて、今もいろいろと悩み、苦しんでいるすべての人へ伝えるかのようなメッセージでした。

と、まあ、きれいな最終回でしたが、全話笑わない回はない、楽しいドラマでした。
個性的な俳優陣、ご当地ネタ、80年代アイドル特集にも心騒いだ人も、まわりにたくさんいました。久慈やませ館にしか売ってない「じぇじぇじぇ」Tシャツを誇らしげに見せてくれたおっちゃんもいますw

しかし南部弁はとても難しい方言なのだなと、見ていて思いました。
地元でもちゃんとしゃべれる人は、ナチュラルなお年寄りだけなのです。
まず発声が難しい。あの半音上がるんだか下がるのか音楽に詳しくないのでわかりませんが、黒鍵盤の音でしゃべらねばなんねぇのです。

これを完璧に話せていたのが、種市先輩こと、福士蒼太でした。
大物俳優たちが、どうしても音程がずれたり、栃木や山形方面の発音になっていたのに対し、彼のしゃべりは自然でした。私はこれを見るまで彼を知らなかったので、初登場のときは地元の青年が出たのかと思ったほどです。
第一声は、口を大きく開けずに黒鍵盤音を出すのが南部弁のポイント。彼は非常に音感が良いのですね。

何よりは、ドラマの魅力を支えていたヒロイン、アキちゃんこと能年玲奈ちゃんが可愛かった^^
全身から発するフレッシュ感、感情解放してからは何かとみんなに甘えるけど、いやみじゃない愛らしさ。
ママにはたかれたシーンで「ウワーん!」って泣くのが無邪気で、とても癒されましたww

ああ、もう字数がないので、感想はここまでにします。
千文字以内で収めようと思ったのに、語りたいことが多すぎました(笑)
宮藤氏には、また朝ドラを書いてほしいと、切に希望します^^

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2013/09/30 01:04
ハルさん、コメント感謝です。

もとの歌詞が「三途の川のマーメイド」だったので、初めて聴いたときはなんじゃこりゃと、爆笑していました。
でも今考えたら、わざとその語呂にしていたんだと思います。この歌詞につなげるために。
いろいろな伏線がありましたが、すべてうまく回収されており、歌詞もその一環でしたね。
「地元に帰ろう」の歌詞も、2番が笑えるんですよ。「おすしをおすすと言ってた私」
…こういうはっちゃけかた、大好きです(笑)

宮藤氏のドラマはあまり見たことがなくて、最後に見たのは落語がテーマのタイガー&ドラゴンだったかなぁ、あれも面白かったです。宮藤氏の脚本は三谷幸喜なみにハズレなしかもしれませんね。
吾輩は猫である、レンタル屋で見かけたら見てみようかな^^
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2013/09/29 11:34
わたしも観てなかったんですが、今しがた、最終回をチラ見しました^^

すごく耳に残りますね、『三代前からマーメイド』
マーメイドとは、海女さんを意味する言葉だったんですね、なるほどです。
薬師丸ひろ子が歌うのを聴いて、なんと素敵な歌かと思いました^^

以前、クドカンのドラマは昼ドラの『我輩は猫である』だったかな?観てましたが、これも斉藤由貴と及川光博が主演でおもしろくて、昼ドラで毎日観たのは初めてでした♬
今回も観とけばよかったなあ…
オープニング曲の、にゃー!が好きです(笑)
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2013/09/29 01:07
小鳥遊さん、コメント感謝です。

わ~、観てなかったのですか?それは惜しいことをしました^^;
途中からだと余計に見づらくなるのが連ドラの痛いところで…。私も半沢直樹が非常な人気と知りつつも、家族とビデオ録画が被ったりもし、見るに見れないで終わりました。DVD出たら借りようと思います(笑)

あの軽快なオープニング曲は人気あるみたいですね。私もほとんど飛ばさず聴いてました。
娘さんが演奏しているのですね~。まず勉強前に意識を高めるデモなのかもしれませんよ?
私も音楽は不得手でしたが、ドラクエが流行っていたころ、ピアニカでテーマ曲を弾いて遊んだことがあったなぁ。
余談でしたw
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2013/09/29 01:04
じゅらさん、コメント感謝です。

んだんだ…とは、種市先輩言いませんでしたが、いかにも南部の若者らしくて感心しましたw

でも、イントネーションは長く地元に住んでいる人でもみんな微妙に違うので、俳優さんたちの演技はぜんぜん間違ってもいないのです。
その中でも、種市こと福士蒼太の発音は、まったく自然で驚きました。
彼のしゃべりが良いお手本ですねw
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2013/09/28 18:19
観ればよかった、と後悔した数少ないドラマ。
それが「あまちゃん」でした。
ホント、観ればよかった……><

オープニングのテーマ曲も軽快で良いですよね。
ウチの娘は、あれを耳コピしてピアノで弾いていました。
いや、まず、勉強しようよ……机の上に、教科書とノート広げっぱなしだよ……^^;;
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2013/09/28 15:25
そっかっ!先輩しゃんの 南部弁が 完璧に近かったんだ!?
☆・:゚*オォヾ(o^Θ^o)ノォオ*゚:・☆

半音ずらして鼻にかけて。。。しゃべらねばねぇ♪だったのね・・(๑◕‿◕๑)ぬふっ♪



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